TOYOTA GAZOO RacingがハースF1と業務提携を発表。「日本のモータースポーツ界に夢を与る」ために

2024年10月11日、富士スピードウェイにある富士モータースポーツフォレストにてTOYOTA GAZOO Racingが記者会見を開き、トヨタ自動車がMoneyGram Haas F1 Teamと業務提携をすることが発表され、次戦のアメリカGPからTOYOTA GAZOO Racingのロゴがマシンに掲示される。

トヨタは、2002年からF1世界選手権に参戦、2009年のシーズンをもって参戦を終了している。今回はその2009年以来のF1へ復帰ではなく、日本のモータースポーツ界、さらには自動車産業の未来を見据えた業務提携になるという。

今回業務提携することになったMoneyGram Haas F1 Team（以下、ハース）は、2016年からF1に参戦するアメリカ国籍のチームだ。チーム名にもある「Haas」は、アメリカの世界的な工作機器メーカーの「ハース・オートメーション」で、その経営者でチームオーナーを務めるジーン・ハースはNASCARなどで名門チームを運営してきた経験を持っている。

フェラーリからパワーユニットとともに技術的な提供も受けているハースだが、2020年 9位/10チーム、2021年 10位/10チーム、2022年 8位/10チーム、2023年 10位/10チームとコンストラクターズで下位を争うチームとなっている。
しかし、2024年シーズンには成績が向上してきており、その一つの要因として今季からチームの代表に小松礼雄氏が就任したことも大きい。チーム発足当初からエンジニアとしてチームに加入し、エンジニアの視点から小規模のチームで最大限の効果を生むような体制を築き、現在は7位/10チームで、6位も狙える位置につけている。

今回の提携は今年の2月頃からTOYOTA GAZOO Racingの加地雅哉モータースポーツ担当部長と小松チーム代表がコミュニケーションを重ねてきたことで実現したという。
その加地部長とのコミュニケーションの中で小松チーム代表は「共通の目的に向かって一緒にやっていく必要がありますが、それは尊敬と信頼関係の上に成り立つものであり、それを感じることができたことで提携してもうまく行くのではないか」と感じたという。

そこからトヨタ自動車の豊田章男会長とも会談し、「初対面と思えないといいますか、もう想いが本当一緒なんですね。日本の若い人たち、モータースポーツ界に夢を与えたいということがすごくにじみ出ていて、僕がハースを通してこれからやっていきたいことにすごい共感するものがありました」 という印象から今回の提携はさらに前進することになったようだ。

さらに「最新のF1のノウハウはありますが、ハースは小規模チームでなんと言っても人数が足りていないですし、設備も少ないですし、パワーも足りないんですね。そうしたいろいろな面で一緒に協力して、これからチームを良くしていくなか中で人を育てていきたい」と提携への期待を語る。 

そして最後に登壇した豊田章男会長は、2009年にF1からの撤退を決めたことを、経営判断としては間違っていなかったが、心のどこかにわだかまりがあったという。しかし今回の提携を通じて、スーパーフォーミュラドライバーだけでなく、それに憧れる子供たちにも夢を追う機会を提供したいという想いを語っている。

「日本の若者が一番速いクルマに乗る道筋を閉ざしてしまったことを、心のどこかでずっと悔やんでいたのだと思います。スーパーフォーミュラのドライバーたちは、トヨタ勢もホンダ勢も、みんな子供の頃からカートに乗って育ってまいりました。さらに彼ら、彼女らに憧れてカートに乗っている子どもたちも全国にたくさんいると思います。そんな子供たちを小松さんたちと一緒にもっと増やしていければと思っております。その前に、 スーパーフォーミュラドライバーの誰かが世界一速いクルマに乗る日も実現していきたいと思っております。小松さん、ハースの皆さん、日本のモータースポーツ界のために、ぜひ一緒によろしくお願いいたします」

今回の提携によりすぐに大きな変化があるわけではない豊田会長はいうが、モータースポーツに憧れる子供たちはもちろん、往年のモータースポーツファンの方々にもそれぞれの夢や楽しみを抱く大きな一歩になるのは間違いないだろう。

2024年のF1も残り6戦、筆者もモータースポーツファン、F1ファンの一人として、さっそく夢の第一歩を噛みしめたい。

（GAZOO編集部 山崎）