サブスクの「KINTO」がモータースポーツイベントを開催! 春頃にはサブスクの新サービスのスタートも検討
-
KINTOがシティサーキット東京ベイでモータースポーツ体験イベントを開催
トヨタやレクサス、SUBARUのクルマのサブスクリプションサービスを行う「KINTO」が、2024年12月にシティサーキット東京ベイと袖ヶ浦フォレストレースウェイで、初となるモータースポーツのスペシャルイベントを開催した。
2019年3月に東京でサブスクリプションサービスのトライアルを開始、同7月に全国展開を開始したKINTO。設立5年を迎えた2024年1月にはサブスクリプションサービス「KINTO ONE」が申込み件数10万件を突破。最初は6車種だったラインナップも30車種以上に増え、契約期間も5年、7年が加わるなどサービスの拡充が進められている。
そんなKINTOだが、みなさんはサブスク以外のさまざまなコンテンツやサービスも企画運営しているのはご存じだろうか?
- お出かけ先の提案や、カーライフを楽しむためのグッズのレンタルや購入が可能な「モビリティマーケット」
- 今乗っているクルマの機能やアイテムを最新に"進化"させる「KINTO FACTORY」
- 旧車を楽しむコミュニティや旧車のレンタカーも用意されている「Vintage Club」
など
KINTOがサブスク以外のサービスを手掛ける理由は、KINTOが掲げる「モビリティプラットフォーマーのトップランナーとして、一人ひとりの『移動』に『感動』を」というビジョンに根差している。
KINTOにとってクルマのサブスクは「移動を楽しんでもらう」ための手段の一つであり、移動、そしてクルマをより楽しんでもらうためのサービスも一緒に提供していくことを目指しているのだ。
KINTOのサービスでモータースポーツの間口を広げたい
そして次なるサービスとしてKINTOが目を付けたのが「モータースポーツ」。一見するとサブスクとはあまり親和性がないように感じるが、なぜモータースポーツの体験イベントを行ったのか、そしてKINTOならではのサブスクとモータースポーツをどのように関連させていくのか、株式会社KINTO 総合企画部の布川康之部長に現地で伺った。
-
株式会社KINTO 総合企画部 布川康之部長
「KINTOのモットーは移動を楽しみましょうということなんですね。そのため、新車のサブスクが中核ではありますが、クルマや移動を楽しむためのサービスを企画しています。移動にまつわるさまざまなサービスを購入いただける『モビリティマーケット』や、すでにお乗りいただいているクルマをアップグレードする『KINTO FACTORY』、クルマファン向けの軸でいうとトヨタ車を中心に旧車のレンタルやコミュニティとして運営する『Vintage Club』などがあります。
そのVintage Clubと同じようにクルマを楽しむための企画として、今回モータースポーツに注目しました。そこにはトヨタがモータースポーツの普及を一生懸命やられているので、僕たちも得意のサブスクを生かしてその一端を担えたらという思いもあります」
モータースポーツの新サービスの導入に向けて昨年末頃から情報収集を始め、1年かけて準備を進めてきているというが、今回のイベントはサービスのメニューを作り込んでいくことを目的に、参加した方とコミュニケーションをとるための機会でもあるようだ。
「KINTOとしては、モータースポーツを気軽に楽しんでいただくために、敷居を下げる、間口を広げるという立ち位置が適していると考えています。とはいえ、間口を広げるにしてもいろいろな程度の差があると思っています。カートを割と本格的にやられている方や普段からサーキットを走っている方もいれば、カートに乗ったことないけどやってみたいという方、クルマがあるならサーキットを走ってみたいという方もいます。
今回のイベントではそうした程度の差を大きく4メニューに分けて、どういうお客様がどのサービスに来てくれるのか、来てくれたお客様がどういう思いで来てくれているのかなど、いろいろとお話しさせてもらい教えてほしいなと思い開催しました」
-
KINTOモータースポーツ体験イベントとインストラクター
モータースポーツの新サービスに向けた情報収集のために違うタイプのイベントを開催
今回のモータースポーツ体験イベントは2か所で違うタイプの内容で行われ、袖ヶ浦フォレストレースウェイでは、GRヤリスやGRカローラ、GRスープラなどをレンタルしてサーキットを走行できるメニューと自分のクルマで参加するメニューが用意された。
参加費は98,000円で車両レンタル代が別途38,000円~55,000円という価格設定ながら、車両をレンタルして走行する枠は「すぐ売れちゃったんですよ」という人気ぶり。クルマの持ち込みの方も含めて11人が参加したという。
-
袖ヶ浦フォレストレースウェイで行われたイベントには11名が参加(c)KINTO
-
GRヤリス、GRカローラ、GRスープラがレンタル車両として用意された(c)KINTO
-
レンタル車両で走行する参加者(c)KINTO
-
インストラクターを務めたレーサー鹿島選手(左)、猪爪杏奈選手(中)、いとうりな選手(右)のトークショーも行われた(c)KINTO
そして、取材に訪れたのはシティサーキット東京ベイで行われたEVカートの体験イベント。
ここは、東京都江東区にあったクルマのテーマパーク「MEGA WEB」の跡地を活用し、2024年シーズンのスーパーフォーミュラとSUPER GTで2冠を達成したレーシングチームであり、トヨタ車のカスタムブランドでもあるトムスが企画運営するEVカートをメインとするサーキットだ。
このイベントでは初級(19,800円)と中級(アドバンスレッスン:39,800円、国内Aライセンスチャレンジ:88,000円)のコースに別れ、EVカートの体験走行やレース形式での走行などが行われ、あわせて25人が参加。中級(国内Aライセンスチャレンジ)は、EVカートでは初となる国内A、国内Bライセンスを取得できるメニューだ。
このイベントの参加者が口を揃えて良かった点として挙げていたのは、1グループ4人~6人という少人数での走行とインストラクターによるドライビングテクニックのレクチャーだ。
各グループの走行時にインストラクターが一緒に走行、前を走ってライン取りを教えたり、後ろを走って参加者それぞれの走りを確認、走行後に個別にレクチャーを行っていた。
特に中級では走行後にインストラクターを囲んで、身振り手振りやコース図を活用しての本格的なドライビングレッスンも行われ、参加者のみなさんからも積極的に質問がぶつけられていたことが印象的だ。
MEGAWEB跡地にできたシティサーキット東京ベイ 4~6人のグループ毎にインストラクターがついてくれる
初級ではインストラクターが先導し安全に走行開始 中級では前後から参加者の走りをチェックしレクチャー
-
グループ毎にレース形式の走行も行われた
-
走行後はインストラクターを囲んで質問攻め!?
-
インストラクター同士の抜きつ抜かれつのガチンコバトルに大興奮!
-
2人乗りのカートでの同乗走行では、プロドライバーのライン取りも伝授
雰囲気づくりを大切にするKINTOならではのインストラクターの人選
このEVカート体験を担当したインストラクターは、猪爪杏奈選手、翁長実希選手、斎藤愛未選手、レーサー鹿島選手という4名のプロドライバー。
猪爪選手は2023年にTCRジャパンシリーズのチャンピオン(TCRシリーズで女性の戴冠は全世界で初の快挙!)をはじめ、フォーミュラリージョナルやスーパー耐久など数々のカテゴリーに参戦。
翁長選手は2022年のKYOJO CUPのシリーズチャンピオンに続き、2023年は全日本EVカート選手権で女性初のチャンピオンを獲得。
斎藤選手は5歳から始めたカートで実績を積み、2024年のKYOJO CUPではポイントリーダーに立ち翁長選手とタイトルを争うライバルだ。
レーサー鹿島選手は、カートチャンピオン獲得後、フォーミュラトヨタ、全日本F3を経て米国インディライツに参戦、キャリア30年のベテランドライバーと、どのドライバーも実績は十分。
-
シティサーキット東京ベイでインストラクターを務めた猪爪杏奈選手(左)、斎藤愛未選手(中)、翁長実希選手(右)
-
猪爪杏奈選手
-
翁長実希選手
-
斎藤愛未選手
-
チーフインストラクター兼総合司会のレーサー鹿島選手と、進行役も務めた梅本まどか選手
-
インストラクターのトークショーも実施。猪爪選手は目標としていたお父さんに勝ってしまい次の目標を模索中というエピソードや、翁長選手と斎藤選手はタイトル争いをするKYOJO CUPでのバチバチのライバルトークなどで盛り上げてくれた。
しかし、その実績以上にこのイベントのインストラクターとして選ばれたのは、このイベントのプロデュースを務めたレーサー鹿島氏によると、その「人柄」と「教えることの上手さ」だという。
参加者が気軽に話しかけやすく、ドライビングのテクニックを分かりやすい言葉で伝えてくれること、そして一緒に頑張りましょうという雰囲気をづくりをしてくれることは、KINTOが考える間口を広げるということにとっては大切な要素だ。
布川部長も「旦那さんに付き合って一緒に来た奥さんに『私もやってみたい』と思ってもらえるようになったらいい企画なんだろうなと思っています」という話があったが、そうした雰囲気作りも大切にするところにKINTOらしさが表れているように感じられた。
「これまでにないお得なイベント」という参加者も
実際に参加者の声も伺ったのでお届けしていこう。
こちらの初級に参加した方は、モータースポーツは未経験でゴーカートも子供の頃に乗って以来とのこと。このイベントはKINTO ONEの契約者向けのメールマガジンを見てすぐにやってみたいと感じたそうだ。
「もともとモータースポーツに興味があってイベントがあったらやってみたいと思っていました。ずっとペーパードライバーだったんですが、9月にKINTOを契約したら運転することが楽しいなと思うようになったこともイベントに参加しようと思った理由ですね。実際に走ってみると最初は怖くてみなさんについていくだけで精一杯でした。でも同乗走行ではレースはこんな感じなんだということも経験できましたし、また誰かと一緒に来たいなと思います」
もうお一方、中級に申し込んだこちらの男性は、普段からサーキットで走行していたり、「自転車で来られる範囲」というシティサーキットにも走りにきているという。そんな経験者の方でもこのイベントは大満足だったようだ。
「GR Garage深川でこのイベントがあることを教えてもらいました。10年くらい独学でサーキット走行を楽しんでいたのですが、そろそろ限界が見えてきてしまって、最近はドライビングレッスンに参加するようになっていたんですが、今回インストラクターさんに教えていただき全然違いましたね! このサーキットではこれまで34秒台だったんですが教えてらもったらポンと1秒上がりました。シティサーキットでは33秒台に入るとシルバーライセンスになるんですけど、33秒2が出たのでもうこれは安かったなと思っていますね(笑)。
同乗走行でライン取りとか後ろについて見ていただいてコーナーの攻め方などを教えていただいて、その通りに走ってみたらタイムが上がったのでやっぱりプロは違うなと思いましたね。いろいろな動画を見ていてもそれが自分に合うかは分からないですから、自分の走りを見てもらって教えてもらえると効果的ですよね。これまで参加したイベントの中で一番たくさん走ることができましたし、少人数のグループ毎にインストラクターの方がついているので、何度も話を聞くことができたのでお得なイベントだったなと思います。次回開催されたら抽選の倍率がかなり上がりそうだなと思います」
-
斎藤愛未選手
また、今回インストラクターとして参加した斎藤選手にもお話を伺った。
「まず、カートで国内Aライセンスが取れるということに感動しました。初心者の方や女性も参加しやすいイベントになっていて、初級のみなさんは和気あいあいとして、毎回タイムが上がっていくことも楽しんでもらえたと思います。このイベントのようにマンツーマンというか近い距離感でレクチャーできるようなイベントは、私はこれまで体験したことがなかったので私も楽しむことができましたし、自分の走りを見つめ直すことができて自分のスキルアップにもつながったと思います。
中級になるとみなさんの目が全然違いました。走りにも気合が入っていて、もっと上を目指したいという強い気持ちに触れることができて、自分のレースに向けてもいい刺激をもらえました。
今回KINTOさんからは、女性ドライバーを増やしたいし、モータースポーツをもっと広げたいという試みだと聞いています。私も同じ気持ちでずっとレースを続けていますし、5歳から続けているカートの楽しさをもっとたくさんの人に伝えたいと思っているので、とてもいい機会になりました」
-
レース形式の走行ではそれぞれに表彰式も実施
-
こんなに大きなトロフィーももらえてこの笑顔!
-
レースを戦ったグループ毎に記念撮影
-
最後にはプリントされた走行写真と記念品も手渡された
-
初級コースにはKINTOの小寺信也 代表取締役社長も一般の参加者として参加していた
-
布川康之部長も自ら参加して、参加者の方といろいろとコミュニケーションをとっていた
では、KINTOとして今後どのようなサービスを展開していくのか。そのプランについては2025年の春頃に発表できることを目指して準備を進めているという。まだ決まってはいないものの、いくつか伺ったやりたいことについてお届けしていこう。
まずは、サブスクの契約が終わり戻ってきた中古車を活用した、コンプリートカーのサブスクだ。サーキットも走れるようにカスタムし、そこに車両のメンテンナンスやサーキット走行中の事故もカバーできる保険などを、お客様のニーズに応じてトッピングできるようなサービスを検討しているという。
中古車となるため次の車検までの2年間のサブスクが基本になるかもしれないが、それよりも短い期間でのサブスクもニーズがあるのではないかと考えているようだ。
短い期間というと、1日単位のレンタカーもやりたいという。例えば、サーキットにクルマを常設しておくことで、その場で借りてサーキットを走ることができれば、サーキット走行をするハードルは下がるし、たまには違うクルマでサーキットを走ってみたいという要望も叶えることができそうだ。
さらには、ワンメイクレースやTGRラリーチャレンジといった参加型レースの参戦をフルサポートするようなサブスクも、今後検討していきたいという。
お話を聞く中で、モータースポーツとサブスクの相性の良さや、サブスクだからこそ叶えやすいニーズがありそうだということが感じられた。
新たなサブスクサービスの根底は「仲間を大切にし、一緒に楽しむこと」
-
布川康之部長
このイベントの締めには、アフターバーティーとしてバーベキューが用意されていた(希望制、有料)。参加者同士はもちろん、インストラクターやKINTOの社員の方も混ざり盛り上がっていたが、実はこれにも布川部長の強い思い入れがあるのだ。
「カートに乗るのも楽しいですけど、一緒に乗った人たちとおしゃべりするのも楽しみですしすごく大事にしたいんですよね。次の走行会に参加していただいたときに、また会いましたねみたいなのが何回かあると、一つのコミュニティとして参加するのが楽しくなりますよね。サービスというカタチで入り口を作るけど、そこに入ってきてくれた人たちとは密にやっていきたいと思っています」
こうした、人、そして仲間を大切にしたいという布川部長の想いがこのイベントの根底にあることで、とても満足度の高いイベントが行われているように感じられた。そして、レンタカーとは違いある程度の長い期間で関係が続き、お客様の声を反映させたサービスも一緒に提供できるサブスクだからこそ可能な企画があるに違いない。
まだ冬は始まったばかりだが、草木が芽吹き花を咲かせ始める春に、KINTOがどんな彩りある企画を用意してくれるのか、今から楽しみにしたい。
-
今回のモータースポーツ体験イベントの企画運営を担当した、株式会社KINTOの崎岡遥さん(左)、近藤啓介主任(左中)、富田充朗主幹(右中)、松野力樹主任(右)。「やりたかったが機会がなかったので開催してくれてよかった」「インストラクターが細かくレクチャーしてくれるのは他のイベントにはない」「値段以上の経験をさせてもらった」などといういい意見があり、サービスローンチに向けて参考になるデータやお話がいただけたという。今後もモータースポーツへの最初の一歩を踏み出すための企画は大切にしながら、お客様の困りごとやニーズとKINTOらしさを上手く合わせたサービスを検討していきたいと語ってくれた
(GAZOO編集部 山崎 写真:KINTO、GAZOO編集部)