【体験取材】サブスクのKINTOが新サービス「MOSKIN」をスタート。初心者でもレンタル車両でモータースポーツを楽しめるぞ!

  • MOSKINのオープニングイベントでの走行待ちの車両

みなさんは「モータースポーツ」と聞くと、「観るもの」と「走るもの」、どちらを思い浮かべるだろうか。
多くの方は「観るもの」と答えるかもしれない。そこには、サーキットを走ることができるクルマに乗っていない、運転に自信がない、そもそもどうやって始めたらいいのか分からないなど、いろいろな理由があるだろう。
そう、モータースポーツは自ら走るには超えなければいけないハードルが多いのだ。

だが、実はそのハードルは超えられないわけではない。
JAFが主催する「オートテスト」は、コンパクトカーやファミリーカーでも参加できる簡易的なジムカーナのような競技であったり、ミニバンやSUVでも参加できるドライビングレッスンも各地で行われている。

もちろんそうした自分のクルマの限界を知り、タイムを縮めるというスポーツに参加するのは楽しかったり、安全運転につながるだろう。
ただ、クルマ好きの方であれば、一度は「サーキット走行に適したクルマで思う存分走ってみたい」と考えたことがあるだろう。

実はそんな夢を実現してくれるサービスもあるのだ。
それは、先日GAZOO.comでもお届けしているが、クルマのサブスクリプションサービスを提供するKINTOによる、自社の強みを生かしたモータースポーツ向けのサービス、その名も「MOTORSPORT by KINTO」、略して「MOSKIN(モスキン)」だ。

これは、4つのサービスが提供されている。KINTOでリースアップした高品質な中古車にトムスがチューンアップを施したコンプリートカーを最長2年利用することができる「サブスク」、そのサブスクと同じスペックの車両を8時間から借りることができる「レンタル」、レンタル車両で手軽にサーキット走行を楽しむことができる「サーキットレンタル」、そして初心者も大歓迎なプロドライバーによるレッスン付き走行イベントもある「走行・体験イベント」と、さまざまな要望を取り入れたものとなっている。

各サービスの内容については、下記の記事をご覧いただきたい。

この新サービスの開始を記念したオープニングイベントが富士スピードウェイで開催され、筆者も取材、そして参加することができたので、その様子をお届けしていこう。

「サブスク」「レンタル」用のトムス謹製のコンプリートカーを試乗して、気分もアゲアゲ!

  • 「MOSKIN」の「サブスク」「レンタル」で提供されるGRヤリス、GR86、GRスープラ

    「MOSKIN」の「サブスク」「レンタル」で提供されるGRヤリス、GR86、GRスープラ

今回取材したイベントでは、「サブスク」「レンタル」で提供される、GRスープラ、GRヤリス、GR86を試乗することができた。
この車両は、モータースポーツファンならもちろんご存じ、トムスが全面的にプロデュースしているコンプリートカーだ。トムスのパーツを中心に、普段の走行での快適さを考慮していながらも、サーキット走行が可能なようにしっかりとまとめられた各車両は、見た目からもやる気を感じさせ、「これは乗ってみたい」と思わせるオーラを纏っている。

その中でも筆者が一番好印象だったのがGRヤリスだ。足回りにはAdvox Sportsを採用、常に細かく路面の凹凸を吸収していることが感じられ、カーブでのハンドルを切った際の回頭性の良さを素直に体感することができる。
専用のECUセッティングやタービンのハイフロー化、さらにラジエーターやインタークーラーを大容量化することで、272PSを340PSにまで引き上げたハイパワーマシンは、実際にちょっと砂利のあるところで簡単にホイールスピンしたりゼロからの加速感など、短い試乗でもそのパフォーマンスの片鱗を感じることができた。

一方でGR86は硬めの足回りの設定となっており、路面の凹凸を感じ取ることができ「チューニングカーに乗っている」というのをしっかりと感じさせてくる。
そしてGRスープラはまさに走るエンターテインメント! 信頼性の面などからエンジン内部には手を加えず、専用のECUセッティングやハイフロータービンなどにより純正の340PSから460PSに高出力化! 踏み込んだ際の加速力には、誰しも思わず笑顔になるだろう。

  • GRヤリス by TOM'S × KINTO

    GRヤリス by TOM'S × KINTO

  • GRヤリス by TOM'S × KINTOの右サイド
  • GRヤリス by TOM'S × KINTOのリヤ
  • GR86 by TOM'S × KINTO

    GR86 by TOM'S × KINTO

  • GR86 by TOM'S × KINTOのリヤ
  • GR86 by TOM'S × KINTOのスタートスイッチ
  • GRスープラ by TOM'S × KINTO

    GRスープラ by TOM'S × KINTO

  • GRスープラ by TOM'S × KINTOの特徴的なリヤウイング
  • GRスープラ by TOM'S × KINTOのリヤ

この3車種は最長2年の「サブスク」で利用すればサーキット走行も可能だという。これだけのチューニングカーを自ら製作するには多くの時間と費用が必要であるが、クルマが手元に届いた瞬間からこの興奮が味わえるのは、まさにMOSKINならではだろう。

また、同じ車両を「レンタル」で8時間から借りることも可能だ。しかもその貸出場所が東京お台場に新しくオープンした「TOM'S TOKYO SHOWROOM」ということで、まずは借りるところから楽しみが始まる。ぜひとも関東近郊のワインディングまでドライブしてその走りを確かめてほしい。なおこのレンタルではサーキット走行は不可となっている。

車両の詳しい情報については、「MOSKIN」の公式サイトをチェックしてほしい。

MOSKIN公式サイト「サブスク」(外部サイト)
https://motorsport.kinto-jp.com/subscription/

まさに手ぶらでサーキット走行体験! サーキット常設のチューニングカーがレンタルできる「サーキットレンタル」

  • 「MOSKIN」の「サーキットレンタル」車両

そして今回は一般の方とメディア向けに「サーキットレンタル」の車両の貸し出しが行われ、その車両を利用した「走行・体験イベント」が行われた。

まず「サーキットレンタル」とは、KINTOによりサーキット走行用にカスタムされた車両がサーキットに常設されており、その車両をレンタルしてサーキット走行ができるサービスだ。ガソリンはもちろん、タイヤやブレーキパッド、油脂類などの交換も行う必要がないため、普段自分のクルマでサーキット走行を行っている方も、気軽に違うクルマでの走行を楽しむことができる。

ただ、この「サーキットレンタル」は単なる車両の貸し出しに終わらないのがKINTOならではなのだ。
今回KINTOが「MOSKIN」を開始した理由について、このサービス導入に尽力するKINTOの布川康之部長は「モータースポーツの発展に寄与することはできないかと考えていて、どういうことができるのかを必死にスタディしました。そうした中で、僕らができることって本業のサブスクを生かしたクルマの提供がまず1つ軸にあるよねと。あとはハイエンド向けというよりはモータースポーツの間口を広げるという2つを軸にしようと決めて、今回の4つのメニューを考えました」と語る。

  • KINTOの布川康之部長

    「MOSKIN」などサブスク以外のさまざまな企画を手掛けるKINTOの布川康之部長

その2つの軸のうち、「サーキットレンタル」は後者の「間口を広げる」という軸に根差している。布川部長が「サブスクは料金的にも少しハイエンドと感じる方も多いかもしれないですが、それに対して間口を広げる目的で、手をつけやすい価格帯でのサービスとして作りました」というように、初めての方でも利用しやすいようなさまざまな工夫が盛り込まれている。

まず、車両の予約をするとサーキットの予約も一緒に行われる。一部のサーキットでは当日現地に行ってから走行枠を確保しなくてはならないが、事前に走行枠を予約できていれば、予約の時間にサーキットに行けばいいというのはうれしいところだ。

現地では車両はもちろんヘルメットやグローブなどのレンタル(別途費用)も用意されているため、あらかじめ装備を整える必要がない。また、初めてのサーキット走行の場合でも、サーキットのスタッフより車両の説明や走行時の注意事項、装備や5点式シートベルトの締め方なども教えてくれるよう手配されている。

さらに、セッションの途中でのピットイン時にもコミュニケーションを取ることが可能で、タイヤの空気圧調整なども行ってくれるというから、時間いっぱい走行を楽しむことができる。これはサーキット走行経験者にとってもうれしいサービスだ。

  • 袖ヶ浦(AT)と幸田(6MT)でレンタルできる86

    袖ヶ浦(AT)と幸田(6MT)でレンタルできる86

  • 袖ヶ浦でレンタルできるGRヤリス(6MT)

    袖ヶ浦でレンタルできるGRヤリス(6MT)

  • 幸田でレンタルできるヴィッツ(5MT)

    幸田でレンタルできるヴィッツ(5MT)

  • BRIDEのセミバケットシートと5点式のシートベルトが装着されたヴィッツの車内

    BRIDEのセミバケットシートと5点式のシートベルトが装着されたヴィッツの車内

そんな車両とサービスが用意されているのは、千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイと愛知県の幸田サーキット yrp桐山だ。

袖ヶ浦は6MTのGRヤリスと6ATの86の2台、幸田は6MTの86と5MTのヴィッツの2台が用意されている。MTの運転に慣れない方向けにATがあったり、テクニカルなショートサーキットである幸田には速度域が高くないヴィッツがあるなど、初心者に向けた配慮もされている。
なお、袖ヶ浦で走行するには、袖ヶ浦専用のサーキットライセンスの取得が必要となるが、その講習会は月1回しか行われていない。そこでKINTOは独自にサーキットライセンスの講習会を開催、イベントなども絡めより利用しやすい環境の構築も進めている。

定期的にキャンペーン企画なども検討していくとのことで、興味のある方は「サーキットレンタル」に会員登録することでお知らせを受信できるのでオススメだ。

MOSKIN公式サイト「サーキットレンタル」(外部サイト)
https://motorsport.kinto-jp.com/circuit-rental/

「サーキットレンタル」の86とヴィッツでスポーツ走行を体験

  • 「サーキットレンタル」の86

そして今回のイベントで、筆者は6ATの86と5MTのヴィッツをお借りして走行体験をさせていただいた。
富士スピードウェイのP2駐車場にパイロンで設定されたコースは、直線からの高速の大きなターンを経て3つのミドルコーナーと1つのヘアピンコーナーをつなぐ、減速と加速をしっかりと行いながらハンドリングとのタイミングを合わせるのが難しいコース。

まずは6ATの86でフル加速からのフルブレーキングのレッスンを経て、実際にコースを走行。今回のイベントでは25分の走行枠が4枠(それが、午前、昼、午後と3グループ)用意され、8台前後の車両が順番に走行するが、かなりの回数を走ることができた印象だ。
特に最初の走行枠では、プロドライバーの猪爪杏奈選手が走行の様子を見ながら無線で「もっと強くブレーキを踏んでください」などと具体的なアドバイスをしてくれるので、そのアドバイスを基に、コーナー進入のブレーキングやアクセルオンのタイミングをいろいろ試すことができた。

そしてもう1台5MTのヴィッツも乗ることができた。ヴィッツと言っても侮るなかれ!フル加速から3速に上げ、90kmオーバーから大きな右カーブに進入、86の乗り味とは違うロール感でよりクルマをコントロールする楽しみを感じる。最初のミドルコーナーで2速に落としてからはそのまま2速で走り抜けるが、やはりフロントと左右への荷重を感じつつ、クルマがよりスムーズに旋回していくポイントをいろいろと試しながら走行。タイヤのスキール音や「転倒しちゃうかも」なんていうのを感じるのも非日常の楽しみだ。

筆者は他の取材の都合上、2.5枠分の走行となったが、それでもかなりの満足感があったが、4枠フルに走り切った参加者の表情からも、充実の走行コンテンツであったことが伺えた。

「こんなに強いブレーキングは初めて。やってみないと分からないことがたくさんあった」

  • MOSKINオープニングイベントの参加者と86

このイベントにはご自身のクルマで参加した方もいらっしゃったが、サーキットレンタルの車両を借りて参加した方にお話を伺ってみた。

まずはこちらの方は、KINTOのイベントに2回目の参加だという。前回は袖ヶ浦で行われたイベントでGRヤリスを、今回のイベントでは86をレンタルして走行している。
サーキット走行に興味があったそうだが、普段乗っているのはヴォクシーのため「2台持ちとかできないんで、なかなか機会がなかったんですよね」とモヤモヤしていたそうだ。
そこでKINTOで車両をレンタルしてサーキットを走ることができると知り、いい機会だと申し込んだという。

前回は本格的なサーキット、今回はパイロンコースだったが、どちらも「本当に楽しいですよね」と笑顔が弾ける。
「確かにコースは違いますが、クルマの挙動を感じながら運転の技術を磨くという意味では、どちらも面白いですよね。特に今回のコースはハンドリングとかブレーキングとかの技術がすごい必要になってくるので、いい経験になりました。加速もそうですが、特にこんなに強くブレーキングすることはないので、やってみないと分からないことがたくさんあるなと感じます。う~ん、でもまだまだですね(笑)」

KINTOがこの「サーキットレンタル」のサービスを始めたことで、やってみたかったスポーツ走行デビューを果たすことができた、まさに好例ともいえる参加者の方だろう。

「楽しかったけど、悔しい気持ちの方が多い」

  • MOSKINオープニングイベントの参加者とヴィッツ

そしてもうお一方は、普段KINTOのサブスクサービスを利用し現行型のプリウスに乗っており、KINTOのメールマガジンで今回のイベントを知ったそうだ。
こうしたスポーツ走行は初めてで「上級者の方ばかりだったら、初めてなのは恥ずかしい」と感じていたというが、若いころにハマっていたバイクの趣味も最近復活され、乗り物の遊びへの興味が湧いてきていた中で、ちょうどいいタイミングだったそうだ。

「普段はカーブであんなに速いスピードは出せないので、そこでクルマのバランスをコントロールするというか、こんな風に動くのねっていうのが体感できました。本当は86を希望していましたが、すでに予約が埋まってしまっていたとのことでヴィッツになったんですけど、最初にはちょうど良かったかもしれないですね」

ただ、今回の体験では「悔しい気持ちが多いです」という。
「パイロンのコースでブレーキのポイントがよく分からなかったり、自分のクルマではないのでブレーキの加減がつかめなくて、もうちょっとうまくできたかなと思うと悔しいんですよね。でも、こうしたイベントを開催してもらえるのはスポーツ走行に慣れるのに助かりますし、いずれは袖ヶ浦に行って走ってみたいですね」

こうした実際に利用したユーザーやイベントの参加者からの「生の声」を聞くことができるのもリアルのイベントを開催する意義であり、KINTOのサービスはこうした「生の声」でよりブラッシュアップされていくのだ。

  • MOSKINオープニングイベントの集合写真

少しはKINTOが目指すモータースポーツの裾野を広げたいという想いが伝わっただろうか。現状ではまだどのサービスも台数が限定だったり、サーキットレンタルも2カ所と、広くサービスを提供する状況は整っていない。

だが、KINTOの方々にお話を伺うと、みなさん「もっとたくさんの方に楽しんでほしい」という強い想いを持って取り組んでいることが伝わってくる。ただし、ただ単にサービスを拡大したいわけではないとも考えており、お客様の「生の声」を聴き、お客様が望むカタチに常にブラッシュアップしながらサービスを拡充していくことを目指しているのだ。

会社の事業として考えると“回り道”なのかもしれない。それでも多様なユーザーがモータースポーツを楽しめるさまざまなサービスを期待したい。

最後に猪爪選手がブリーフィングで語った素敵なお話をお届けしたい。

「モータースポーツはスポーツの中で一番、社会貢献ができるスポーツなのではないかと思っています。1/1000秒を争うレースをしなくてもクルマの限界を知ることで、公道でも余裕が生まれて運転が上手くなると思っています。そうすれば事故や渋滞も減りますし、モータースポーツが国民的なスポーツになれば、日本がもっとハッピーな国になるんじゃないかなと思います」

さあ、みなさん、ご自身でもモータースポーツを楽しみながら、日本のハッピーにも貢献してみてはいかがだろうか。

(文:GAZOO編集部 山崎 写真:KINTO、GAZOO編集部)