トヨタによる電動化技術の無償提供はシステムサプライヤーになるための「おまけ」

電動化技術の無償提供についての説明会で使われたスライド
トヨタ自動車は4月8日、東京本社で電動化技術の無償提供についての説明会を改めて開催した。そのなかで強調したのはトヨタがモーターなどを販売もするシステムサプライヤーになるということだ。

寺師茂樹副社長は冒頭、「先日(4月3日)に発表した反応をいろいろ見ていたら、トヨタは裏で絶対に変なことを考えているに違いないとか、“ガラパゴス・ハイブリッド”とか書かれて、いま心が折れかけている」と集まった報道陣を笑わせ、こう続けた。

「今回、特許を無償でオープンするという話があるんですが、これはやりたいことの本質ではない。電動車をやりたい企業に、部品やシステムを販売し、人のお手伝いもするということで、その一環として、特許をオープンにして自由に使ってもらって結構ですということなんです」

言ってみれば、無償提供はトヨタがシステムサプライヤーになることに対して、おまけというわけだ。その裏には2万3740件もある電動化技術の特許を利用して、モーターやバッテリー、パワーコントロールユニット(PCU)をつくっても、トヨタ以上のものができないという自負があるようだ。

事実、トヨタのもとには「いろいろなお客さまからトヨタのユニットをそのまま使わせてくれないかという声がここ数年かかるようになってきた」(寺師副社長)そうだ。例えば、スズキやSUARU(スバル)などで、その数は年々増えているという。

その背景には各国での環境規制の強化やMaaSなど自動車を取り巻く環境が大きく変わっていることがある。自社で資金をかけて開発するよりも、電動化技術で実績のあるトヨタから手に入れたほうが効率的だというわけだ。

「2030年ぐらいを考えると、自動運転、コネクティッド、シェアリングといろいろとビジネススタイルも変わっていくと思う。その時にソフトウェアのバーチャルな世界からきた人たちは、自分たちで車をつくって擦り合わせをするということをやらずに、トヨタの車を使うほうに行くと見ている。そのためにトヨタはモビリティプラットフォームなど、いろいろなプラットフォームを準備しておく必要がある」と寺師副社長は説明する。

ゆくゆくはそういった企業と一緒にクルマをつくって販売するということも考えられるという。その場合、アフターサービスやメンテナンスはもちろんトヨタが担当する。これからクルマを巡ってさまざまなケースが出てくる可能性が高い。そのためにトヨタは着々と布石を打っているわけだ。

「今回の無償提供は、トヨタがティア2としてビジネスをやっていきたい中で、一つの姿勢の表れで全体の中での1つのオプションなんです。しなくてもいいというのなら、その通りかもしれません」と寺師副社長は説明する。とりあえず何にでも首を突っ込んでみるというトヨタらしい発想だ。そこにはトヨタが常に中心でありたいという思いが強い。

(レスポンス 山田清志)

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