PCUがなければモーターとバッテリーだけでは走れない…トヨタ電動化技術

PHEVのコンポーネントモデル
28日、トヨタは自社の電動化技術に関する記者向けの説明会を開催した。自動車の電動化で重要な技術、モーター、バッテリー、そしてパワーコントロールユニット(PCU)の3つをメインにトヨタの開発技術や取り組みが紹介された。

日本の自動車業界はEV化で世界に後れをとっているようなイメージがあるが、それはEV車両を積極的に展開していないだけで、PHV、EV、FCVなど電動化技術はむしろ最先端にある。電動化に関する前述3つの要素技術がどうなっているのか、トップメーカーの最先端情報からみてみたい。

まずはPCUからみていこう。インバータといえばわかる人もいるだろう。PHVやEVなどバッテリーと電気モーターで走るクルマにはかならず必要だ。というのはバッテリーが発生する電気は直流だが、モーターは通常交流電源が必要となる。インバータは高耐圧大電流容量のパワートランジスタによって直流を交流に変換する。その過程で、周波数や電力を調整することで、モーターの回転やトルクを制御する。

じつはこのトルク制御機構もインバータの重要な役割だ。通電するとすぐに最大トルクを発生できるモーターは、出力制御をしてやらないと用途が限られてしまう。エレベータのモーターがいきなりフルパワーでワイヤーを巻き上げたらどうなるだろうか。自動車の加速・減速も同様に微妙な制御をしてやる必要がある。逆にいえば、インバータが適切なトルク制御を行えば、トランスミッションはいらなくなる。実際、EVには変速機がないものが多い。

トヨタの現在の電動化技術はプリウスのハイブリッドシステム(THS)がベースとなっている。PHEV、EV、FCVもすべてハイブリッドカーに適用している技術の延長で対応できるという考え方だ。そのため、トヨタのPCUは発電用モーターと駆動用モーターの2系統のインバータを搭載する。また、バッテリーの電圧を昇圧する昇圧コンバータも内蔵している。ハイブリッドシステムでは、内燃機関システムとの併用になるため、小型化のニーズも100%EVより強い。モーターやバッテリーの小型化には、電流容量を下げるというアプローチがある。電流を少なくしても同じ仕事量をさせようと思ったら、電圧を上げればよい。プリウスの場合、初代288Vを4代目では600Vまで昇圧させている。

PCUの小型化は、インバータや昇圧コンバータの半導体技術と、ユニットへの実装技術でも行われる。まずは別々となった2つインバータ、昇圧コンバータモジュールの一体化。これは初代プリウスから3代目プリウスで段階的に実現していった。さらに集積度を上げようとすると、放熱対策の見直しも必要となる。3代目まではパワー半導体は、放熱のため平面的に展開され、半導体チップと絶縁基板を介した放熱フィンを工夫していた。4代目プリウスでは、半導体チップを分割して縦に配置するようにした。各チップはラジエータと同様な冷却器(液冷)で挟むようにする、縦実装・両面冷却構造とした。

半導体チップそのものも高耐圧化、低損失化を進め、小型化を実現している。トヨタは、PCUに利用する半導体も自社設計、自社製造にこだわっている。量産車のすべては自社工場ではまかないきれないが、自動車メーカーが自社でパワー半導体の設計、製造ラインを持っているところは少ない。ボッシュやデンソーなど、ECU向けのASIC用のラインを持っているサプライヤーは存在するが、ぱわー半導体まで内製するのはめずらしい。

これらの技術改良の結果、初代プリウスのPCUと4代目プリウスのPCUでは、出力密度が2.5倍、ユニットの容積は17.4リットルから8.4リットル(半分以上小さくなった)になったという。初代ではラゲッジルームに移設された補器類用バッテリーが4代目ではエンジンルームの戻すことができている。

(レスポンス 中尾真二)

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