「RVブーム」の草分け、タウンエース&ライトエースが“輸入車”になって10年…どうなるトヨタの商用車【藤井真治のフォーカス・オン】
トヨタのカローラ店で販売されている『タウンエース』とネッツ店販売の『ライトエース』の双子車。毎月1000台規模で堅調な販売が推移して10年が経過した。このモデル、実はインドネシアのダイハツで生産され輸入車としてカウントされているのだ。
◆RVブームの草分けだったタウン/ライトエース
トヨタのタウン/ライトエースと言えば、商用バンやトラックとしてビジネス用車両として使われる一方、RV(リクレーショナル・ビークル)の草分けとして80年代から90年代にかけて一世を風びした。トラックはキャンピングカーの改造ベースとしても定評があった。『ハイエース』の弟分のような存在で商用/乗用用途ともに根強いファンが多く、日産の『バネット』やマツダの『ボンゴ』とともに小型キャブオーバー市場を形成していた。
しかしながらタウン/ライトエースはその後、乗用用途車としてのワゴンタイプは販売不振のため打ち切られ。商用用途としても軽自動車の台頭によって2007年の打ち切りが決定していた。
ところが、慌てたのはカローラ店とネッツ店。乗用用途のユーザーはほかのモデルに代替可能としても、商用用途のユーザーはそうはいかない。販売店が脈々と関係を維持してきたユーザーの中には軽自動車のスペックでは飽き足らないユーザーも多かったのである。すなわち、当時の工務店、ガラス屋さん、酒屋さん、花屋さん、畳屋さんといった町の自営業者の中には「黄色いナンバーの軽自動車に乗るのはちょっと抵抗が…」という声が上がっていたのである。
◆ダイハツ・インドネシアの商用車に白羽の矢
そこで白羽の矢が当たったのがインドネシアのダイハツで生産していた商用車。もともとダイハツやスズキはインドネシアで日本の軽自動車をベースにした幅広の1.5リッタークラスを昔からラインアップに揃えていた。そのサイズとエンジン、少し小さいがタウン/ライトエースの代替として日本市場にもマッチしたのである。
折しもインドネシアで同じ企画の『グランマックス』というダイハツの新モデルが発売される。日本に輸入しタウン/ライトエースの後継モデルにしよう、との話がトントン拍子で進んだのである。
しかしながら、気になったのは「インドネシアのダイハツ製」という先入観からくる悪いイメージ。トヨタは販売第一線に対し品質への自信を持ってもらうため、急きょ国内の主要ディーラートップをジャカルタに集め、発売前の車両を見せ最終承諾を取ったという経緯がある。
日本の法規対応上の必要スペックが追加されたあと、数か月のブランクを経てインドネシアのダイハツ製のタウン/ライトエースが2008年、日本で復活したのである。
◆トヨタがめざすMaaSの顧客となるのは誰か
それにしてもトヨタは、大きな商用車は日野、小さくて安い車は乗商ともにダイハツに完全に開発を任せてしまった。「商用車カンパニー」という開発組織があるものの、傘下で開発しているモデルはほとんどMPVやSUVで、本当に商用車と言えるものはハイエースや『コースター』(バス)のみ。また、販売面においても、極めて幅広い物流をカバーしている2トントラックの『ダイナ』は海外で「自らの販売」することをすでにあきらめていると思える。
グループの力を決して市場に当たる、重複部門をなくすという趣旨は理解できるが、安い実用車の開発や商用車の販売にトヨタ自身が触れていないとビジネスユーザーの特性や物流の世界が見えなくならないだろうか?
トヨタが目指すMaaSの当面の対象はお金持ちの個人ユーザーではなく、物や人を運ぶビジネス用途のユーザーなのだが。
<藤井真治 プロフィール>
(株)APスターコンサルティング代表。アジア戦略コンサルタント&アセアンビジネス・プロデューサー。自動車メーカーの広報部門、海外部門、ITSなど新規事業部門経験30年。内インドネシアや香港の現地法人トップとして海外の企業マネージメント経験12年。その経験と人脈を生かしインドネシアをはじめとするアセアン&アジアへの進出企業や事業拡大企業をご支援中。自動車の製造、販売、アフター、中古車関係から IT業界まで幅広いお客様のご相談に応える。『現地現物現実』を重視しクライアント様と一緒に汗をかくことがポリシー。
(レスポンス 藤井真治のフォーカスオン)
◆RVブームの草分けだったタウン/ライトエース
トヨタのタウン/ライトエースと言えば、商用バンやトラックとしてビジネス用車両として使われる一方、RV(リクレーショナル・ビークル)の草分けとして80年代から90年代にかけて一世を風びした。トラックはキャンピングカーの改造ベースとしても定評があった。『ハイエース』の弟分のような存在で商用/乗用用途ともに根強いファンが多く、日産の『バネット』やマツダの『ボンゴ』とともに小型キャブオーバー市場を形成していた。
しかしながらタウン/ライトエースはその後、乗用用途車としてのワゴンタイプは販売不振のため打ち切られ。商用用途としても軽自動車の台頭によって2007年の打ち切りが決定していた。
ところが、慌てたのはカローラ店とネッツ店。乗用用途のユーザーはほかのモデルに代替可能としても、商用用途のユーザーはそうはいかない。販売店が脈々と関係を維持してきたユーザーの中には軽自動車のスペックでは飽き足らないユーザーも多かったのである。すなわち、当時の工務店、ガラス屋さん、酒屋さん、花屋さん、畳屋さんといった町の自営業者の中には「黄色いナンバーの軽自動車に乗るのはちょっと抵抗が…」という声が上がっていたのである。
◆ダイハツ・インドネシアの商用車に白羽の矢
そこで白羽の矢が当たったのがインドネシアのダイハツで生産していた商用車。もともとダイハツやスズキはインドネシアで日本の軽自動車をベースにした幅広の1.5リッタークラスを昔からラインアップに揃えていた。そのサイズとエンジン、少し小さいがタウン/ライトエースの代替として日本市場にもマッチしたのである。
折しもインドネシアで同じ企画の『グランマックス』というダイハツの新モデルが発売される。日本に輸入しタウン/ライトエースの後継モデルにしよう、との話がトントン拍子で進んだのである。
しかしながら、気になったのは「インドネシアのダイハツ製」という先入観からくる悪いイメージ。トヨタは販売第一線に対し品質への自信を持ってもらうため、急きょ国内の主要ディーラートップをジャカルタに集め、発売前の車両を見せ最終承諾を取ったという経緯がある。
日本の法規対応上の必要スペックが追加されたあと、数か月のブランクを経てインドネシアのダイハツ製のタウン/ライトエースが2008年、日本で復活したのである。
◆トヨタがめざすMaaSの顧客となるのは誰か
それにしてもトヨタは、大きな商用車は日野、小さくて安い車は乗商ともにダイハツに完全に開発を任せてしまった。「商用車カンパニー」という開発組織があるものの、傘下で開発しているモデルはほとんどMPVやSUVで、本当に商用車と言えるものはハイエースや『コースター』(バス)のみ。また、販売面においても、極めて幅広い物流をカバーしている2トントラックの『ダイナ』は海外で「自らの販売」することをすでにあきらめていると思える。
グループの力を決して市場に当たる、重複部門をなくすという趣旨は理解できるが、安い実用車の開発や商用車の販売にトヨタ自身が触れていないとビジネスユーザーの特性や物流の世界が見えなくならないだろうか?
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