【レクサス NX 新型】電動化でも感じられる「レクサスの味」とは…チーフエンジニア[インタビュー]
レクサスは2代目となる新型『NX』を発表した。次世代レクサスの幕開け、第1弾モデルと位置づけているというが「次世代レクサス」とは一体何なのか。新型NXが目指したクルマ作りについて、開発責任者に具体的に話を聞いた。
◆「次世代レクサス」4つのビジョン
まず次世代レクサスとはどう捉えればいいのか。レクサスインターナショナルグローバルPRコミュニケーションの辻典宏氏は、そのビジョンのポイントを4つ挙げる。まずは、「これまでのクルマづくりで大切にしてきたクルマの素性を徹底的に鍛える、いわば体幹を鍛える」。次に、「その鍛えた体幹をベースに、レクサスらしい電動車ラインナップの拡充をしていく」。そして、「時代のスピードとともに変化するお客様のニーズに応える商品ラインナップを提供していく」。最後は、「体験価値の提供に取り組んでいく」というものだ。
24年3月にトヨタテクニカルセンター下山に、新しく出来るレクサスの支援事業拠点では、開発やデザイン、生産技術、企画をはじめとした様々な領域に携わるメンバーが一同に集まり、「さらに良いクルマづくりを推進。世界中の多種多様な厳しい走行環境を再現したテストコースでクルマを走らせては直すということを何回も繰り返すことで、クルマも人も鍛えていく」と述べる。
その第1弾となるNXは、「走らせては直すという事をもちろん繰り返し(テストコースは先に完成)、これからの我々の電動車の走りの基盤ともなる、駆動力コントロールに着目してドライバーとクルマが対応出来る走りを徹底的に作りこんだ」と辻氏。また、「デザインや先進安全技術、コネクテッドサービスなどクルマを構成する多くの要素を刷新。新しいレクサスの礎となるべく、次世代レクサスの幕開け、第1弾モデルと位置づけている」とコメントした。
◆NXとRXでユーザー層をほぼ網羅する
ここからはNXのチーフエンジニアであるレクサスインターナショナル製品企画チーフエンジニアの加藤武明氏(以下敬称略)にさらに具体的に語っていただこう。
----:加藤さんは初代NXの開発から担当されていたと伺いました。
加藤:2009年3月の企画企画開始から携わっています。
----:それ以前はどのようなクルマを担当していたのですか。
加藤:製品企画は2005年からで、ちょうど日本のレクサスが開業した年からです。先代の『IS』を1年間だけ、そこから先代の『RX』です。どちらもチーフエンジニアではなく、サブのような立場でした。その後、RXよりも小型のSUVを作るという話になり、企画を任されたのです。また、RXは2015年に新型に変わりまして、そこからはRXとNXを担当しています。
----:現在レクサスではRXとNX、『UX』とSUVのラインアップが充実してきています。その中でNXはどういうポジショニングと捉えていますか。
加藤:元々はエントリーでスタートしましたが、いまはUXがありますのでエントリーという意味ではちょっと違いますが、それでもどこかでエントリーだと考えています。ですのでユーザーの幅が広いんです。ターゲット層でいうといわば“マクドナルド型(M字)”で、まずは、シングル、カップル、ファミリー、そしてエンプティネスタの方々がちょっと大きなクルマは…ということで選んでいただけています。RXでは、日本の場合はファミリーからそのままご年配までというイメージです。
RXとNXでサイズは違うのですが、これらでほとんどコアなところをすべてカバーしているのですね。あとはキャラ的に、NXはセダンでいうとIS的な、少しスポーティで、元気。RXはもう少しラグジュアリー、そういう位置づけです。
◆「スモールRX」ではない
----:初代NXを加藤さんが担当された時に、最初に何を考えましたか。
加藤:その時はどうしてあのサイズが世界的に売れていないのか、出ていないのかでした。今はいっぱいありますが、当時はBMW『X3』、北米でアキュラの『RDX』があっただけなんですよ。
そこで最初にやったのは、なぜこのサイズ、ちょっと小さなラグジュアリーSUVがあまり存在しないのかを考えました。お金を持っているラグジュアリーな方が、RXがラインアップにあるにもかかわらず、RXより小さいSUVをどうすれば買っていただけるのか。大と小があると、それは価格差だけで、それ以外の魅力はあまりない。とくにアメリカでは小さいと狭いと捉えられますし。
そこでキャラクターを変えないといけない。つまりスモールRXではないということです。キャラの立った、小さくてスポーティという視点では親和性がありますので、“プレミアムアーバンスポーツギア”という名前をつけて、オフではなくオンのスポーツを体験するSUVとして企画しました。それが受けたかどうか分かりませんが、少なくともそれをベースにデザインもかなり尖った、個性的なものにしました。
いまでこそRXのデザインを見て、NXとあまり変わらないじゃないかと思われるかもしれません。実はNXのデザインが、社内でもすごくセンセーショナルで刺激的だったので、RXが近づいたといってもいいでしょう。僕は離したつもりだったんですけどね。
特に内装をRXはゴージャスな感じ、NXは、スポーティでコンパクトな感じに変えたのです。その結果、実際のお客様はあまり被らなかったんですね。ですのでキャラの立った少し個性的なNXに対して、マーケットの反応もすごく良かった。特に日本では、RXとNXは予算で選ばれるのではなく、日本にジャストサイズでスポーティなNXが良いんだという方と、そうはいってもラグジュアリーなところがいいとRXを選ばれる方で、あまり“カニバリ”は起きませんでした。
また上手くいってることとして、NXはレクサスのエントリーモデルという立ち位置もあり、NXを買われた方はISと一緒で、今までレクサスを買われてない方が多いのです。そこからレクサスのブランド全体の、例えば販売店の対応などを含めて、ブランド全体を気に入っていただくことで、NXの次は同じNXも“あれ”だからと、RXの購買につながっている。ブランド内で上流への動きも実際に出来ているのです。
◆大きなネガはなかったが
----:2代目も引き続き担当になったわけですが、2代目を開発するにあたってはユーザーの意見などを含めた初代の振り返りをやられてると思います。そこでNXの強み、弱みがあれば、それを教えてください。
加藤:日本だとそれほど弱みはないなと思ったのですが、グローバルで見ると、ちょうどアウディ『Q5』が出たり、メルセデスは『GLK』から『GLC』になったりしたタイミングでしたので、トレッドなどを含めて、NXが少し華奢に見えるという声はありました。
それからパワートレインについては、海外で多かったのですが動力性能がもうちょっと欲しいと。特にハイブリッドですね。海外では市街地から郊外に出ると、30km/hや50km/hの制限速度から80km/hに上がりますので、そこで一気に踏むんですよね。そうするといわゆる燃費申請値よりもかなり悪くなってしまいます。そういったことを踏まえてもう少し動力性能が欲しいという話はありました。欧州ではサイズ的には良いんですけど。
アメリカは2リットルターボが主流なので、動力性能的にはそれほど言われていませんが、こちらではちょっと華奢に見えるとか、もうちょっと大きくてもいいかなとか、そういう声がありました。
ただし、ポジティブな声の方が非常に多くて、サイズ感や使い勝手、ちょうどRXとのサイズの距離感など、そういう声が多くありましたので。そんなに大きなネガはなかったかなとは思います。
◆どれに乗ってもレクサスと感じさせたい
----:そういったことを踏まえて2代目の開発に取り掛かったわけですが、そこで加藤さんが一番やりたかった事は何ですか。
加藤:“僕が”という文脈は、実は二代目からはあんまり主張しないようにしています。というのは、いままでは確かにチーフエンジニアの思いというのも割と前面に出てやってきましたが、これからはレクサスというブランド自体を進化させて行こうと考えているからです。
ブランドホルダーの豊田章男(トヨタ自動車社長)がレクサスってボーリングだ、つまらないといわれたあたりから、レクサスって何だろうというのは、僕らの中にもありました。個車のキャラは生かしながらもブランドとして強くなっていきたい。ブランドにはそもそも、ブランドホルダーがどんなブランドにもいますよね、ポルシェならポルシェ博士とか。確かにサラリーマンですし、会社組織ですが、レクサスのトップが変わったからといって言っていることが違ってはいけないわけです。そのブランドホルダーの想いに寄り添って、まずブランドがどうあるべきか、その中でNXはどうあるべきか、という思考をもう一度やりました。ですから2代目をやったというよりも、改めてここからレクサスをやったという思いの方が強いのです。
----:それが次世代レクサスの幕開けを象徴する第1弾モデルということですか。
加藤:そうです。それでNXの走りをどうしようではなく、レクサスの走りはどうしようというのがプレジデントの佐藤(レクサスインターナショナルのプレジデントでチーフブランディングオフィサーの佐藤恒治氏)が僕らチーフエンジニアに問いかけて、そのレクサスの走りをセダンであろうがSUVであろうがしっかりやっていこうとなりました。
結果として、NXがもともと初代でもやっていた操安性の良い、走りの良い少しスポーティなSUVというところとあまり離れてはいないのでやりやすかった。ただし、その走りの味は各チーフエンジニアの思いではなく、レクサスの味を皆で実現していくというアプローチに変わっています。
----:その味というのはどういうものでしょう。個々のクルマとしての個性もあるかと思いますが。
加藤:例えば僕らが思うのは、ポルシェのクルマは何に乗ってもやっぱりポルシェという感じがしますよね。それが『911』であっても『マカン』であっても、『タイカン』であってもやっぱりポルシェ。それはBMWもそうですし、メルセデスもそう。ですからレクサスも、どれに乗っても、これレクサスだよねというものにしたいのです。
その根幹にはやっぱり初代『LS』でやった圧倒的なNV性能と、乗り心地です。その上で、『LC』で求めたすっきりとしたシャープで優雅な操舵応答。ステアリングを直進からちょっと動かしたときに、クルマがすっと動くという味。さらにそれを進化させるという意味では、接地感をもっと感じられること、トラクションを感じる走りです。もちろん今までもやってはいるんですが、それをブランドとしてもっと補強していく動きの中で、このNXを開発しました。
----:なぜそうしたのですか。
加藤:それは、今後電動化社会になっていくと、今までのエンジンのサウンドや、トランスミッションのシフトのスケジュールといった僕らが大好きなクルマの味というものが、電気になるとみんなモーターみたいにシューってなるような気がしてしまいますよね。でもそうじゃない、やっぱりそこにもブランドの味はあるべきです。そうすると電動車の良さというのは、四輪の駆動力をモーターならではのレスポンスの良さと大きなトルクでコントロールすることだと我々は思っているのです。
では、電動車がそういう味になった時に、コンベンショナルなクルマはそういう味じゃない、ではだめなのです。ですから、駆動力をしっかりとコントロールすることをやっています。その駆動力をコントロールしようと思うと、屋台骨のボディがしっかりしてないとそもそもダメですよね。それをこのクルマからもう1回基本に立ち返ってやろうと今回開発しました。
もちろん昔からボディ剛性は基本中の基本ですのでこれまでもやって来てはいますが、今回は高みのレベルが違うのです。他社もレベルが上がっていますし、単にボディ剛性といっても上下左右の曲げやねじりなど色々な所で違ってきます。あまり固くしてしまうと、振動系に影響が出てしまいますし、どこの特性値をどうするかが問題なのと、もうひとつは、現在主戦場はSUVですので、ハッチバックタイプというキャビンボリュームが大きいSUVのボディ剛性をどのように上げていくか、これまでのノッチバック系よりも、さらにハードルが上がっているのです。
----:やらなければいけない世界が少し変わってきているということなんでしょうか。
加藤:考え方は一緒なのですがさらに緻密にやっているということです。それからカーボンニュートラルを目指していくと、軽量化をしないといけませんのでそれを忘れずに深化させています。緻密にボディ剛性のどこをどう手を入れるか、また振動との折り合いを考えながらどうやるのか。単に剛性を考えて補強していくとどんどん重くなってしまいますから、軽量化をしながらボディ剛性を上げていくという二律背反のバランスをどうとっていくのか、その辺りが重要ですね。
----:そういった面で今回新たにトライをした事はありますか。
加藤:まず板組の組み合わせで、最もボディ剛性を保ちながら、重さをあまり上げないというところにトライしました。特にリア周りです。材料置換すれば簡単なんです。例えばアルミにしてしまうとか。しかしそれではコストもかかりますし、特に日本のメーカーとしては鉄に強いですから、その鉄をちゃんと使い切るところですね。もちろん一部はアルミ化していますけれども。
◆素性を良くすることは裏切らない
----:さて2代目NXは、初代が出来た時とだいぶ市場状況が変わってきていますし、レクサスの中でもUXが出ました。そういったことを踏まえて先代から変えた事はありますか。
加藤:ないと思います。UXがいるから意識したこともあまりないですね。むしろマーケットがこれだけ熾烈なので、一歩間違えると本当に蹴落とされる。そのプレッシャーの方が大きかった。
初代の時はBMW X3しかいなくて、途中でアウディQ5が出て来てヤバイなと思いながらやっていました。しかしいまはもうそれこそSUVそのものが多くなりました。例えば社内でも『RAV4』や『ハリアー』がいるわけです。これもTNGAプラットフォームで良くなってくるわけですから、その中でレクサスって何?といわれるかもしれないというプレッシャーはありました。それでも基本に立ち返って素性を良くすることは決して裏切らないなと信じて開発を進めました。
◆「次世代レクサス」4つのビジョン
まず次世代レクサスとはどう捉えればいいのか。レクサスインターナショナルグローバルPRコミュニケーションの辻典宏氏は、そのビジョンのポイントを4つ挙げる。まずは、「これまでのクルマづくりで大切にしてきたクルマの素性を徹底的に鍛える、いわば体幹を鍛える」。次に、「その鍛えた体幹をベースに、レクサスらしい電動車ラインナップの拡充をしていく」。そして、「時代のスピードとともに変化するお客様のニーズに応える商品ラインナップを提供していく」。最後は、「体験価値の提供に取り組んでいく」というものだ。
24年3月にトヨタテクニカルセンター下山に、新しく出来るレクサスの支援事業拠点では、開発やデザイン、生産技術、企画をはじめとした様々な領域に携わるメンバーが一同に集まり、「さらに良いクルマづくりを推進。世界中の多種多様な厳しい走行環境を再現したテストコースでクルマを走らせては直すということを何回も繰り返すことで、クルマも人も鍛えていく」と述べる。
その第1弾となるNXは、「走らせては直すという事をもちろん繰り返し(テストコースは先に完成)、これからの我々の電動車の走りの基盤ともなる、駆動力コントロールに着目してドライバーとクルマが対応出来る走りを徹底的に作りこんだ」と辻氏。また、「デザインや先進安全技術、コネクテッドサービスなどクルマを構成する多くの要素を刷新。新しいレクサスの礎となるべく、次世代レクサスの幕開け、第1弾モデルと位置づけている」とコメントした。
◆NXとRXでユーザー層をほぼ網羅する
ここからはNXのチーフエンジニアであるレクサスインターナショナル製品企画チーフエンジニアの加藤武明氏(以下敬称略)にさらに具体的に語っていただこう。
----:加藤さんは初代NXの開発から担当されていたと伺いました。
加藤:2009年3月の企画企画開始から携わっています。
----:それ以前はどのようなクルマを担当していたのですか。
加藤:製品企画は2005年からで、ちょうど日本のレクサスが開業した年からです。先代の『IS』を1年間だけ、そこから先代の『RX』です。どちらもチーフエンジニアではなく、サブのような立場でした。その後、RXよりも小型のSUVを作るという話になり、企画を任されたのです。また、RXは2015年に新型に変わりまして、そこからはRXとNXを担当しています。
----:現在レクサスではRXとNX、『UX』とSUVのラインアップが充実してきています。その中でNXはどういうポジショニングと捉えていますか。
加藤:元々はエントリーでスタートしましたが、いまはUXがありますのでエントリーという意味ではちょっと違いますが、それでもどこかでエントリーだと考えています。ですのでユーザーの幅が広いんです。ターゲット層でいうといわば“マクドナルド型(M字)”で、まずは、シングル、カップル、ファミリー、そしてエンプティネスタの方々がちょっと大きなクルマは…ということで選んでいただけています。RXでは、日本の場合はファミリーからそのままご年配までというイメージです。
RXとNXでサイズは違うのですが、これらでほとんどコアなところをすべてカバーしているのですね。あとはキャラ的に、NXはセダンでいうとIS的な、少しスポーティで、元気。RXはもう少しラグジュアリー、そういう位置づけです。
◆「スモールRX」ではない
----:初代NXを加藤さんが担当された時に、最初に何を考えましたか。
加藤:その時はどうしてあのサイズが世界的に売れていないのか、出ていないのかでした。今はいっぱいありますが、当時はBMW『X3』、北米でアキュラの『RDX』があっただけなんですよ。
そこで最初にやったのは、なぜこのサイズ、ちょっと小さなラグジュアリーSUVがあまり存在しないのかを考えました。お金を持っているラグジュアリーな方が、RXがラインアップにあるにもかかわらず、RXより小さいSUVをどうすれば買っていただけるのか。大と小があると、それは価格差だけで、それ以外の魅力はあまりない。とくにアメリカでは小さいと狭いと捉えられますし。
そこでキャラクターを変えないといけない。つまりスモールRXではないということです。キャラの立った、小さくてスポーティという視点では親和性がありますので、“プレミアムアーバンスポーツギア”という名前をつけて、オフではなくオンのスポーツを体験するSUVとして企画しました。それが受けたかどうか分かりませんが、少なくともそれをベースにデザインもかなり尖った、個性的なものにしました。
いまでこそRXのデザインを見て、NXとあまり変わらないじゃないかと思われるかもしれません。実はNXのデザインが、社内でもすごくセンセーショナルで刺激的だったので、RXが近づいたといってもいいでしょう。僕は離したつもりだったんですけどね。
特に内装をRXはゴージャスな感じ、NXは、スポーティでコンパクトな感じに変えたのです。その結果、実際のお客様はあまり被らなかったんですね。ですのでキャラの立った少し個性的なNXに対して、マーケットの反応もすごく良かった。特に日本では、RXとNXは予算で選ばれるのではなく、日本にジャストサイズでスポーティなNXが良いんだという方と、そうはいってもラグジュアリーなところがいいとRXを選ばれる方で、あまり“カニバリ”は起きませんでした。
また上手くいってることとして、NXはレクサスのエントリーモデルという立ち位置もあり、NXを買われた方はISと一緒で、今までレクサスを買われてない方が多いのです。そこからレクサスのブランド全体の、例えば販売店の対応などを含めて、ブランド全体を気に入っていただくことで、NXの次は同じNXも“あれ”だからと、RXの購買につながっている。ブランド内で上流への動きも実際に出来ているのです。
◆大きなネガはなかったが
----:2代目も引き続き担当になったわけですが、2代目を開発するにあたってはユーザーの意見などを含めた初代の振り返りをやられてると思います。そこでNXの強み、弱みがあれば、それを教えてください。
加藤:日本だとそれほど弱みはないなと思ったのですが、グローバルで見ると、ちょうどアウディ『Q5』が出たり、メルセデスは『GLK』から『GLC』になったりしたタイミングでしたので、トレッドなどを含めて、NXが少し華奢に見えるという声はありました。
それからパワートレインについては、海外で多かったのですが動力性能がもうちょっと欲しいと。特にハイブリッドですね。海外では市街地から郊外に出ると、30km/hや50km/hの制限速度から80km/hに上がりますので、そこで一気に踏むんですよね。そうするといわゆる燃費申請値よりもかなり悪くなってしまいます。そういったことを踏まえてもう少し動力性能が欲しいという話はありました。欧州ではサイズ的には良いんですけど。
アメリカは2リットルターボが主流なので、動力性能的にはそれほど言われていませんが、こちらではちょっと華奢に見えるとか、もうちょっと大きくてもいいかなとか、そういう声がありました。
ただし、ポジティブな声の方が非常に多くて、サイズ感や使い勝手、ちょうどRXとのサイズの距離感など、そういう声が多くありましたので。そんなに大きなネガはなかったかなとは思います。
◆どれに乗ってもレクサスと感じさせたい
----:そういったことを踏まえて2代目の開発に取り掛かったわけですが、そこで加藤さんが一番やりたかった事は何ですか。
加藤:“僕が”という文脈は、実は二代目からはあんまり主張しないようにしています。というのは、いままでは確かにチーフエンジニアの思いというのも割と前面に出てやってきましたが、これからはレクサスというブランド自体を進化させて行こうと考えているからです。
ブランドホルダーの豊田章男(トヨタ自動車社長)がレクサスってボーリングだ、つまらないといわれたあたりから、レクサスって何だろうというのは、僕らの中にもありました。個車のキャラは生かしながらもブランドとして強くなっていきたい。ブランドにはそもそも、ブランドホルダーがどんなブランドにもいますよね、ポルシェならポルシェ博士とか。確かにサラリーマンですし、会社組織ですが、レクサスのトップが変わったからといって言っていることが違ってはいけないわけです。そのブランドホルダーの想いに寄り添って、まずブランドがどうあるべきか、その中でNXはどうあるべきか、という思考をもう一度やりました。ですから2代目をやったというよりも、改めてここからレクサスをやったという思いの方が強いのです。
----:それが次世代レクサスの幕開けを象徴する第1弾モデルということですか。
加藤:そうです。それでNXの走りをどうしようではなく、レクサスの走りはどうしようというのがプレジデントの佐藤(レクサスインターナショナルのプレジデントでチーフブランディングオフィサーの佐藤恒治氏)が僕らチーフエンジニアに問いかけて、そのレクサスの走りをセダンであろうがSUVであろうがしっかりやっていこうとなりました。
結果として、NXがもともと初代でもやっていた操安性の良い、走りの良い少しスポーティなSUVというところとあまり離れてはいないのでやりやすかった。ただし、その走りの味は各チーフエンジニアの思いではなく、レクサスの味を皆で実現していくというアプローチに変わっています。
----:その味というのはどういうものでしょう。個々のクルマとしての個性もあるかと思いますが。
加藤:例えば僕らが思うのは、ポルシェのクルマは何に乗ってもやっぱりポルシェという感じがしますよね。それが『911』であっても『マカン』であっても、『タイカン』であってもやっぱりポルシェ。それはBMWもそうですし、メルセデスもそう。ですからレクサスも、どれに乗っても、これレクサスだよねというものにしたいのです。
その根幹にはやっぱり初代『LS』でやった圧倒的なNV性能と、乗り心地です。その上で、『LC』で求めたすっきりとしたシャープで優雅な操舵応答。ステアリングを直進からちょっと動かしたときに、クルマがすっと動くという味。さらにそれを進化させるという意味では、接地感をもっと感じられること、トラクションを感じる走りです。もちろん今までもやってはいるんですが、それをブランドとしてもっと補強していく動きの中で、このNXを開発しました。
----:なぜそうしたのですか。
加藤:それは、今後電動化社会になっていくと、今までのエンジンのサウンドや、トランスミッションのシフトのスケジュールといった僕らが大好きなクルマの味というものが、電気になるとみんなモーターみたいにシューってなるような気がしてしまいますよね。でもそうじゃない、やっぱりそこにもブランドの味はあるべきです。そうすると電動車の良さというのは、四輪の駆動力をモーターならではのレスポンスの良さと大きなトルクでコントロールすることだと我々は思っているのです。
では、電動車がそういう味になった時に、コンベンショナルなクルマはそういう味じゃない、ではだめなのです。ですから、駆動力をしっかりとコントロールすることをやっています。その駆動力をコントロールしようと思うと、屋台骨のボディがしっかりしてないとそもそもダメですよね。それをこのクルマからもう1回基本に立ち返ってやろうと今回開発しました。
もちろん昔からボディ剛性は基本中の基本ですのでこれまでもやって来てはいますが、今回は高みのレベルが違うのです。他社もレベルが上がっていますし、単にボディ剛性といっても上下左右の曲げやねじりなど色々な所で違ってきます。あまり固くしてしまうと、振動系に影響が出てしまいますし、どこの特性値をどうするかが問題なのと、もうひとつは、現在主戦場はSUVですので、ハッチバックタイプというキャビンボリュームが大きいSUVのボディ剛性をどのように上げていくか、これまでのノッチバック系よりも、さらにハードルが上がっているのです。
----:やらなければいけない世界が少し変わってきているということなんでしょうか。
加藤:考え方は一緒なのですがさらに緻密にやっているということです。それからカーボンニュートラルを目指していくと、軽量化をしないといけませんのでそれを忘れずに深化させています。緻密にボディ剛性のどこをどう手を入れるか、また振動との折り合いを考えながらどうやるのか。単に剛性を考えて補強していくとどんどん重くなってしまいますから、軽量化をしながらボディ剛性を上げていくという二律背反のバランスをどうとっていくのか、その辺りが重要ですね。
----:そういった面で今回新たにトライをした事はありますか。
加藤:まず板組の組み合わせで、最もボディ剛性を保ちながら、重さをあまり上げないというところにトライしました。特にリア周りです。材料置換すれば簡単なんです。例えばアルミにしてしまうとか。しかしそれではコストもかかりますし、特に日本のメーカーとしては鉄に強いですから、その鉄をちゃんと使い切るところですね。もちろん一部はアルミ化していますけれども。
◆素性を良くすることは裏切らない
----:さて2代目NXは、初代が出来た時とだいぶ市場状況が変わってきていますし、レクサスの中でもUXが出ました。そういったことを踏まえて先代から変えた事はありますか。
加藤:ないと思います。UXがいるから意識したこともあまりないですね。むしろマーケットがこれだけ熾烈なので、一歩間違えると本当に蹴落とされる。そのプレッシャーの方が大きかった。
初代の時はBMW X3しかいなくて、途中でアウディQ5が出て来てヤバイなと思いながらやっていました。しかしいまはもうそれこそSUVそのものが多くなりました。例えば社内でも『RAV4』や『ハリアー』がいるわけです。これもTNGAプラットフォームで良くなってくるわけですから、その中でレクサスって何?といわれるかもしれないというプレッシャーはありました。それでも基本に立ち返って素性を良くすることは決して裏切らないなと信じて開発を進めました。
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