【トヨタ ノア/ヴォクシー 新型】もはや走る忍者屋敷?“からくり”の知恵の数々に「手を尽くした」
「新型『ノア』『ヴォクシー』は、社運を賭けたプロジェクトなんです」
と、トヨタ車体の取締役執行役員、開発本部長にしてZH1チーフエンジニアの水澗英紀氏は述べる。先代モデル以前から開発も手がけてきたものの、それはトヨタ自動車から委託され受注する、グループ内ホーム&アウェイ方式だった。しかし今回は違う。3年ほど前に小型バス・バン・ミニバン事業がトヨタ自動車からトヨタ車体へ移管された今や、開発予算ごとトヨタ車体が拠出し完成品質まで責任をもつという、一貫したプロジェクトとして、初めて世に問うミニバンなのだ。
野心的なからくり仕掛けの数々
「トヨタ車体が一貫して手がけたからこそ、しつこく追求できた部分もあると思います」
そう水澗氏が胸を張るのは、例えば低コストで実現され、ノア/ヴォクシー全グレードにオプション設定されるユニバーサルステップ。作動用モーターや油圧アクチュエーターを使うことなく、パワースライドドアが開くとロッカーアームに引かれて、高さ20cmのステップが乗降口の前に自動的に現れる。もちろんスライドドアが閉まると、今度は押し込む動きでステップは自動的に格納される。まさしく“からくり仕掛け”だが、車体下に張り出して地上最低高を損なうこともなく、氷雪路で付着した雪や氷が詰まりにくい構造とするなど、完成度も高そうだ。
そもそもステップの出し入れのためだけにモーターやアクチュエーターを使うと20万円以上のコスト増だが、この純粋な機械仕掛けはわずか数万円で実現されたとか。より少ないコストで、子供や年配者が乗ることの多い後席へのアクセス性を高めたことは、ファミリーカーとして模範的といえる。
からくり仕掛けによる進化は、車内にも見られる。従来、2列目シートのロングスライド機構は、ホイールハウスの張り出しを避けるため、スライド途中で横に一度ずらす必要があった。だが新型ノア/ヴォクシーは、2列目シートバックの骨格を変更。具体的にはリクライニング機構を脚の内側に収めることによって真っ直ぐな前後スライドを実現した。
8名乗り仕様の6:4分割ベンチシートなら705mm、7名乗車仕様のキャプテンシートなら745mmも前後させることができる。キャプテンシート仕様には、このクラスでは珍しいオットマンにシートヒーター、折り畳み式サイドテーブルが備わり、快適性の面でも大幅なレベルアップが図られた。
3列目シートにも野心的なからくり仕掛けとして、ワンタッチホールド化が施された。従来は跳ね上げたシートを片側づつストラップで固定する造りで、どうしても両手操作が必要だったが、今回はストライカロック固定を採用。例えば片手に荷物を提げたままでも、もう一方の手でレバーを引いて跳ね上げたシートを押し込めば、固定が完了する。しかもシートを下ろす際にもレバーをアンロックするだけと、同じく片手操作が可能だ。3列目シート自体が薄型・軽量化されており、畳んだ時によりコンパクトに収まる。シートアレンジの質の進化は、開発コンセプト「イージー&エナジームーバー」の、まさに面目躍如といえる。
使い勝手の進化には終わりがない
こうしたメカニカルな部分以外にも、からくりの知恵と気配りは及んでいる。「トヨタセーフティセンス」として最新鋭の予防安全パッケージには、数々のプリクラッシュセーフティ機能や、リスクを先読みする操作サポートが備わる。だが後席乗員にも実効性の高い先進装備として、「安心降車アシスト」が挙げられる。
これはブラインドスポットモニターを応用した機能で、駐停車してパワースライドドアを開けようとする際、後方から接近する車両や自転車を検知し続ける。開くドアや乗員にそれらが衝突する可能性が高ければ、車内の注意アラートに加え、スライドドアの開く動作を途中停止、もしくはキャンセルするのだ。「被害者・加害者になりたくない」想いはすべての交通参加者に共通するからこそ、後席乗員の不注意をもカバーする機能といえる。
「2001年の登場以来、ノア/ヴォクシーは日本の家族の皆さまに育てられてきました。使い勝手というのはいつの時代にも、進化させるところがあります」
と、水澗氏は説明する。
他にもADAS(高度運転支援技術)として、トヨタ初採用となる機能がふたつ。運転状況に応じてリスクを先読みし、ステアリングやブレーキ操作のサポートを行う「プロアクティブドライビングアシスト」と、自動車専用道路で渋滞時など40km/hの速度域で使える実質的なハンズオフ機能、「アドバンストドライブ」だ。後者はノアのXグレードを除く全車でオプションとして用意される。
車外からスマホで入庫・出庫できる「アドバンスト パーク」も
またハイブリッド仕様のみ選べるオプションの「アドバンスト パーク」がアップデートされ、前向き駐車にも対応するようになった。専用アプリをインストールしたスマートフォンから、駐車と出庫を車外から操作できるリモート機能もある。この機能で操作するには、車外でスマートキーを携帯していることが前提だ。もちろん前後いずれの向きの駐車と出庫に対応しており、今回は実際に試すことができた。
まず車内から、駐車スペース見つけたらシフトコンソール奥のボタンを押し、アドバンスパーク機能をONにする。後はタッチスクリーン上のウィザードに従って、ステアリング操作はクルマに任せ、ドライバーは周囲状況と緊急ブレーキにだけ集中する、そんな一連のプロセスは、通常の駐車アシスト機能と同じだが、狙ったスペースに車体を収める操舵の鮮やかさが、十分に実戦(?)レベルになっている。誤解を恐れずいえば、熟練ドライバーが躊躇なく車庫入れするのと同じか少し早いぐらいで、週末のショッピングモールの駐車場などでも頼れそうだ。
リモート機能は当然、狭い駐車枠や隣との距離が近い際に便利だが、アプリを開く度に「同意」をタップさせることで、車外にいるとはいえドライバーの責任を明確にするUIとなっている。先ほど車庫入れしたノアから車外に出て、出庫方向の空きと安全を確認した後、指で画面上の円をなぞる。するとデモ車両のノアは、両脇を挟まれた並列駐車の列から進み出した。子供や高齢者を広い場所で乗り降りさせたり、荷物の出し入れスペースを確保したい時など、日常的に使えるシーンは少なくないだろう。
「あらゆることに手を尽くした」自信作
さらに荷物の積み下ろしの使い勝手を向上させるからくり仕掛けとして、バックドアに施された工夫を挙げない訳にいかない。大容量ラゲッジスペースと広い開口部を実現している分、上ヒンジで大きなバックドアを開け放つにはスペースが要る。逆にいえば、狭いところではドアを押さえる必要があり、小柄な人にはひと苦労でもある。
そのため上位グレードのパワーバックドア装着車には、車体の左側後端にパワー開閉ボタンが設けられ、指一本で開閉角度をコントロールできる。しかも、もう一方の非装着グレード車両には、「フリーストップバックドア」が備わるのだ。これは電動仕掛けではないが、バックドアをワンプッシュすればコードで繋がっている開度調整機構のロックが働いて、任意のちょうどいい角度でバックドアを保持できる。狭い場所で小物だけとり出したり、小柄な人なら閉めやすく手の届く角度までしか開けない、といった使い方ができる。
あと今回はあえて深入りしないが、10.5インチのタッチスクリーンに収められたインフォテイメントシステムには、オーバージエアによるソフトウェアアップデート機能が組み込まれている。月々1100円で契約できるe-SIMによる常時接続も併用すれば、食情報やガソリン価格など、街の様々なダイナミックデータと連携・活用の幅が広がる。
「あらゆることに手を尽くして開発を終えたばかりの今、次をどうするのかは正直、思い浮かびません」
と、開発本部長兼チーフエンジニアを務めた水澗氏は苦笑する。謙遜ではあるが、それは新型ノア/ヴォクシーの完成度の高さ、ひいては氏にとって自信作であることを、暗に物語っている。
と、トヨタ車体の取締役執行役員、開発本部長にしてZH1チーフエンジニアの水澗英紀氏は述べる。先代モデル以前から開発も手がけてきたものの、それはトヨタ自動車から委託され受注する、グループ内ホーム&アウェイ方式だった。しかし今回は違う。3年ほど前に小型バス・バン・ミニバン事業がトヨタ自動車からトヨタ車体へ移管された今や、開発予算ごとトヨタ車体が拠出し完成品質まで責任をもつという、一貫したプロジェクトとして、初めて世に問うミニバンなのだ。
野心的なからくり仕掛けの数々
「トヨタ車体が一貫して手がけたからこそ、しつこく追求できた部分もあると思います」
そう水澗氏が胸を張るのは、例えば低コストで実現され、ノア/ヴォクシー全グレードにオプション設定されるユニバーサルステップ。作動用モーターや油圧アクチュエーターを使うことなく、パワースライドドアが開くとロッカーアームに引かれて、高さ20cmのステップが乗降口の前に自動的に現れる。もちろんスライドドアが閉まると、今度は押し込む動きでステップは自動的に格納される。まさしく“からくり仕掛け”だが、車体下に張り出して地上最低高を損なうこともなく、氷雪路で付着した雪や氷が詰まりにくい構造とするなど、完成度も高そうだ。
そもそもステップの出し入れのためだけにモーターやアクチュエーターを使うと20万円以上のコスト増だが、この純粋な機械仕掛けはわずか数万円で実現されたとか。より少ないコストで、子供や年配者が乗ることの多い後席へのアクセス性を高めたことは、ファミリーカーとして模範的といえる。
からくり仕掛けによる進化は、車内にも見られる。従来、2列目シートのロングスライド機構は、ホイールハウスの張り出しを避けるため、スライド途中で横に一度ずらす必要があった。だが新型ノア/ヴォクシーは、2列目シートバックの骨格を変更。具体的にはリクライニング機構を脚の内側に収めることによって真っ直ぐな前後スライドを実現した。
8名乗り仕様の6:4分割ベンチシートなら705mm、7名乗車仕様のキャプテンシートなら745mmも前後させることができる。キャプテンシート仕様には、このクラスでは珍しいオットマンにシートヒーター、折り畳み式サイドテーブルが備わり、快適性の面でも大幅なレベルアップが図られた。
3列目シートにも野心的なからくり仕掛けとして、ワンタッチホールド化が施された。従来は跳ね上げたシートを片側づつストラップで固定する造りで、どうしても両手操作が必要だったが、今回はストライカロック固定を採用。例えば片手に荷物を提げたままでも、もう一方の手でレバーを引いて跳ね上げたシートを押し込めば、固定が完了する。しかもシートを下ろす際にもレバーをアンロックするだけと、同じく片手操作が可能だ。3列目シート自体が薄型・軽量化されており、畳んだ時によりコンパクトに収まる。シートアレンジの質の進化は、開発コンセプト「イージー&エナジームーバー」の、まさに面目躍如といえる。
使い勝手の進化には終わりがない
こうしたメカニカルな部分以外にも、からくりの知恵と気配りは及んでいる。「トヨタセーフティセンス」として最新鋭の予防安全パッケージには、数々のプリクラッシュセーフティ機能や、リスクを先読みする操作サポートが備わる。だが後席乗員にも実効性の高い先進装備として、「安心降車アシスト」が挙げられる。
これはブラインドスポットモニターを応用した機能で、駐停車してパワースライドドアを開けようとする際、後方から接近する車両や自転車を検知し続ける。開くドアや乗員にそれらが衝突する可能性が高ければ、車内の注意アラートに加え、スライドドアの開く動作を途中停止、もしくはキャンセルするのだ。「被害者・加害者になりたくない」想いはすべての交通参加者に共通するからこそ、後席乗員の不注意をもカバーする機能といえる。
「2001年の登場以来、ノア/ヴォクシーは日本の家族の皆さまに育てられてきました。使い勝手というのはいつの時代にも、進化させるところがあります」
と、水澗氏は説明する。
他にもADAS(高度運転支援技術)として、トヨタ初採用となる機能がふたつ。運転状況に応じてリスクを先読みし、ステアリングやブレーキ操作のサポートを行う「プロアクティブドライビングアシスト」と、自動車専用道路で渋滞時など40km/hの速度域で使える実質的なハンズオフ機能、「アドバンストドライブ」だ。後者はノアのXグレードを除く全車でオプションとして用意される。
車外からスマホで入庫・出庫できる「アドバンスト パーク」も
またハイブリッド仕様のみ選べるオプションの「アドバンスト パーク」がアップデートされ、前向き駐車にも対応するようになった。専用アプリをインストールしたスマートフォンから、駐車と出庫を車外から操作できるリモート機能もある。この機能で操作するには、車外でスマートキーを携帯していることが前提だ。もちろん前後いずれの向きの駐車と出庫に対応しており、今回は実際に試すことができた。
まず車内から、駐車スペース見つけたらシフトコンソール奥のボタンを押し、アドバンスパーク機能をONにする。後はタッチスクリーン上のウィザードに従って、ステアリング操作はクルマに任せ、ドライバーは周囲状況と緊急ブレーキにだけ集中する、そんな一連のプロセスは、通常の駐車アシスト機能と同じだが、狙ったスペースに車体を収める操舵の鮮やかさが、十分に実戦(?)レベルになっている。誤解を恐れずいえば、熟練ドライバーが躊躇なく車庫入れするのと同じか少し早いぐらいで、週末のショッピングモールの駐車場などでも頼れそうだ。
リモート機能は当然、狭い駐車枠や隣との距離が近い際に便利だが、アプリを開く度に「同意」をタップさせることで、車外にいるとはいえドライバーの責任を明確にするUIとなっている。先ほど車庫入れしたノアから車外に出て、出庫方向の空きと安全を確認した後、指で画面上の円をなぞる。するとデモ車両のノアは、両脇を挟まれた並列駐車の列から進み出した。子供や高齢者を広い場所で乗り降りさせたり、荷物の出し入れスペースを確保したい時など、日常的に使えるシーンは少なくないだろう。
「あらゆることに手を尽くした」自信作
さらに荷物の積み下ろしの使い勝手を向上させるからくり仕掛けとして、バックドアに施された工夫を挙げない訳にいかない。大容量ラゲッジスペースと広い開口部を実現している分、上ヒンジで大きなバックドアを開け放つにはスペースが要る。逆にいえば、狭いところではドアを押さえる必要があり、小柄な人にはひと苦労でもある。
そのため上位グレードのパワーバックドア装着車には、車体の左側後端にパワー開閉ボタンが設けられ、指一本で開閉角度をコントロールできる。しかも、もう一方の非装着グレード車両には、「フリーストップバックドア」が備わるのだ。これは電動仕掛けではないが、バックドアをワンプッシュすればコードで繋がっている開度調整機構のロックが働いて、任意のちょうどいい角度でバックドアを保持できる。狭い場所で小物だけとり出したり、小柄な人なら閉めやすく手の届く角度までしか開けない、といった使い方ができる。
あと今回はあえて深入りしないが、10.5インチのタッチスクリーンに収められたインフォテイメントシステムには、オーバージエアによるソフトウェアアップデート機能が組み込まれている。月々1100円で契約できるe-SIMによる常時接続も併用すれば、食情報やガソリン価格など、街の様々なダイナミックデータと連携・活用の幅が広がる。
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