【レクサス RX 新型】「スピンドルグリルをぶっ壊せ」豊田社長の指令から辿り着いた「スピンドルボディ」誕生秘話
レクサスのデザインといえば、まず思い浮かぶのはフロントに鎮座する「スピンドルグリル」だろう。それが『RZ』以降大きく変化していることにお気づきだろうか。そして6月1日に発表された新型『RX』ではグリルのデザインはさらに一歩進化している。この進化は、豊田章男社長の一声「スピンドルグリルをぶっ壊せ」がきっかけだったという。
せっかく作り上げたアイコンなのに
これまでレクサスにはバッテリーEV(以下BEV)の市販車はなく、『RZ』が第一号。「BEVをデザインする上で1番苦労したのが、フロントだ。その理由はスピンドルグリルにある」と明かすのはレクサスインターナショナル レクサスデザイン部長の須賀厚一氏だ。グリルはラジエーターを冷やすために存在し、そこにブランドアイコンであるスピンドルを用いていたのだが、ラジエーターがなくなってしまったので機能面での必要性がなくなってしまった。しかし、「我々がそこにどうしても固執してしまった時に、社長の豊田から、『スピンドルグリルを壊しなさい』と」。須賀氏たちにとってそれはとても衝撃的なコメントだった。「せっかく作り上げたアイコンなのに、とすごく驚いた」という。
須賀氏をはじめデザイナー達は、新たなグリルを模索した。しかし、結局「“スピンドルは残そうよ”と…」なったところで、ハタと気づいた。「壊せといったのは我々のマインドセットだったのだ。スピンドルは形が特徴的なのでそこにメッキのフレームをつければ、なんとなくそれ風に見える。デザイナーは、自由を好む一方で、留まりやすい種族でもあり、作ったんだからこれでよしみたいになる。だから、中途半端な成功で停滞していることが、物事を幅広く見ている社長からすれば、もどかしかったのだろう。『お前ら守りに入ってるんじゃない』と」いうことに気付かされたのだ。
そこでデザインチームで考えた結果がRZに採用した「スピンドルボディ」だ。「通常ではグリルのところを、あえてボディカラーにすることでボンネットからボディサイドにつながるように仕上げた。その結果EVならではフォルムのデザインにまとめ上げた」と須賀氏は説明する。
『RX』でスピンドルグリルに戻るわけにはいかない
RZに続いてデビューするのが新型『RX』だが、こちらは内燃機関をベースとしたクルマだ。須賀氏は、「RZでスピンドルグリルを壊してスピンドルボディになったのが、ここでまたスピンドルグリルに戻るわけにはいかない。スピンドルボディとスピンドルグリルを融合させたような、スピンドルボディのシームレスグリルに挑戦している」と話す。「いつの間にか開口がボディに変わり、ボディだったところがいつの間にか(グリルの)穴になって…ということができないかというチャレンジ。様々な試行錯誤を含めたデザインだ」と須賀氏はコメントした。
では、担当したチーフデザイナーは“スピンドルグリルを壊せ”をどう感じたのか。「最初に聞いた時は、本当にどうするんだと思った」とそのときを振り返るのは、レクサスインターナショナル レクサスデザインPCD(プロジェクトチーフデザイナー)の草刈穣太氏だ。
「『NX』の時からスピンドルグリルを、ただのグリルのメッキの枠からきちんと立体として見せようということは始まっていた。それでメッキ枠は取ったのだが、それでもダメ。ただしその時から塊として見せるためには、シームレスに感じさせるのが良いのではというアイデアはあった」という。そこで色々なトライをしていたが、「結局グリルの形状を少しぼかしても、やはり遠目で見るとそれはスピンドルグリルだった」。
そしてヒントを得たのがRZのスピンドルボディだった。「スピンドルボディをクレイで作って、最初からグリルに穴をあけるのではなく、まずは塊を作り、そこにどう穴を開ければいいのか、もう1度立ち返った」。それは冷却開口がどれだけ必要なのかという機能を踏まえるものだった。そうすると、「意外と上の方はいらないことがわかった。それであればまず、必要なところはしっかり穴を開け、いらないところは塞ぐ。それが交わるところはその穴が変化していくようにしていけば、塊にも見えるし、必要な冷却開口もできるのではと、様々なパターンや比率をトライしながらいまにたどり着いた」と語る。結果的には、「薄目で見るとなんとなくスピンドルの形は見えるが、グリルの部分が下側に寄っているので、低重心感も出たと思っている」とコメント。
また、「RXのパフォーマンスモデルはFメッシュであることから少し違うパターン。これはもう少しスポーツの感じを出したかったので、グラデーションがもう少しはっきり分かれている」と説明した。
「カイゼン」は終わりが始まり
最後に須賀氏は、「この物語(スピンドルグリルからスピンドルボディ)の挑戦はまだまだ続く」という。なぜならば、「トヨタには『カイゼン(改善)』というものがある。ここでいつも教えられるのが、カイゼンは終わった時が次のスタートだということ。従ってスピンドルグリルを壊すことで進化ができたら、そこが次のカイゼンのスタート」とのこと。
ではそこで何をやるのか。それは、「やはり機能の本質に立ち返るということ。例えばBEVの時はラジエーターがないからグリルではなくボディにした。では、もっと大きな内燃機関ベースのクルマであれば、ラジエーターを大型化しなければいけない。すると結局はまたグリルが必要になるかもしれない。そういったことの繰り返しだ」と語る。ただし、スピンドル自体は守りながらボディと融合させる方向のようだ。
須賀氏は、「(スピンドルは)ブランドのアイコンなので、あまり隠さないようにはするが。そのうちウォーリーを探せみたいになるかも(笑)」。ただし、「皆さんが手ぶりで形を表現できるようなスピンドルのモチーフをどう入れるのか。その時、どの部品とどう絡めるのかはクルマのパッケージにもよる。だから私はいつもボンネットを開けて、ここの部品はこうなっているのかなど、そういうこと考えながら、外観デザインをどうしようかとメンバーたちと一緒にやっている」と常に機能をベースにデザインを考えていることを強調した。
これから市場に投入される『RZ』、そして『RX』を目の当たりにした際は、フロントグリルに注目してみるとレクサスがデザインに込めた哲学や情熱を垣間見ることができるかもしれない。
せっかく作り上げたアイコンなのに
これまでレクサスにはバッテリーEV(以下BEV)の市販車はなく、『RZ』が第一号。「BEVをデザインする上で1番苦労したのが、フロントだ。その理由はスピンドルグリルにある」と明かすのはレクサスインターナショナル レクサスデザイン部長の須賀厚一氏だ。グリルはラジエーターを冷やすために存在し、そこにブランドアイコンであるスピンドルを用いていたのだが、ラジエーターがなくなってしまったので機能面での必要性がなくなってしまった。しかし、「我々がそこにどうしても固執してしまった時に、社長の豊田から、『スピンドルグリルを壊しなさい』と」。須賀氏たちにとってそれはとても衝撃的なコメントだった。「せっかく作り上げたアイコンなのに、とすごく驚いた」という。
須賀氏をはじめデザイナー達は、新たなグリルを模索した。しかし、結局「“スピンドルは残そうよ”と…」なったところで、ハタと気づいた。「壊せといったのは我々のマインドセットだったのだ。スピンドルは形が特徴的なのでそこにメッキのフレームをつければ、なんとなくそれ風に見える。デザイナーは、自由を好む一方で、留まりやすい種族でもあり、作ったんだからこれでよしみたいになる。だから、中途半端な成功で停滞していることが、物事を幅広く見ている社長からすれば、もどかしかったのだろう。『お前ら守りに入ってるんじゃない』と」いうことに気付かされたのだ。
そこでデザインチームで考えた結果がRZに採用した「スピンドルボディ」だ。「通常ではグリルのところを、あえてボディカラーにすることでボンネットからボディサイドにつながるように仕上げた。その結果EVならではフォルムのデザインにまとめ上げた」と須賀氏は説明する。
『RX』でスピンドルグリルに戻るわけにはいかない
RZに続いてデビューするのが新型『RX』だが、こちらは内燃機関をベースとしたクルマだ。須賀氏は、「RZでスピンドルグリルを壊してスピンドルボディになったのが、ここでまたスピンドルグリルに戻るわけにはいかない。スピンドルボディとスピンドルグリルを融合させたような、スピンドルボディのシームレスグリルに挑戦している」と話す。「いつの間にか開口がボディに変わり、ボディだったところがいつの間にか(グリルの)穴になって…ということができないかというチャレンジ。様々な試行錯誤を含めたデザインだ」と須賀氏はコメントした。
では、担当したチーフデザイナーは“スピンドルグリルを壊せ”をどう感じたのか。「最初に聞いた時は、本当にどうするんだと思った」とそのときを振り返るのは、レクサスインターナショナル レクサスデザインPCD(プロジェクトチーフデザイナー)の草刈穣太氏だ。
「『NX』の時からスピンドルグリルを、ただのグリルのメッキの枠からきちんと立体として見せようということは始まっていた。それでメッキ枠は取ったのだが、それでもダメ。ただしその時から塊として見せるためには、シームレスに感じさせるのが良いのではというアイデアはあった」という。そこで色々なトライをしていたが、「結局グリルの形状を少しぼかしても、やはり遠目で見るとそれはスピンドルグリルだった」。
そしてヒントを得たのがRZのスピンドルボディだった。「スピンドルボディをクレイで作って、最初からグリルに穴をあけるのではなく、まずは塊を作り、そこにどう穴を開ければいいのか、もう1度立ち返った」。それは冷却開口がどれだけ必要なのかという機能を踏まえるものだった。そうすると、「意外と上の方はいらないことがわかった。それであればまず、必要なところはしっかり穴を開け、いらないところは塞ぐ。それが交わるところはその穴が変化していくようにしていけば、塊にも見えるし、必要な冷却開口もできるのではと、様々なパターンや比率をトライしながらいまにたどり着いた」と語る。結果的には、「薄目で見るとなんとなくスピンドルの形は見えるが、グリルの部分が下側に寄っているので、低重心感も出たと思っている」とコメント。
また、「RXのパフォーマンスモデルはFメッシュであることから少し違うパターン。これはもう少しスポーツの感じを出したかったので、グラデーションがもう少しはっきり分かれている」と説明した。
「カイゼン」は終わりが始まり
最後に須賀氏は、「この物語(スピンドルグリルからスピンドルボディ)の挑戦はまだまだ続く」という。なぜならば、「トヨタには『カイゼン(改善)』というものがある。ここでいつも教えられるのが、カイゼンは終わった時が次のスタートだということ。従ってスピンドルグリルを壊すことで進化ができたら、そこが次のカイゼンのスタート」とのこと。
ではそこで何をやるのか。それは、「やはり機能の本質に立ち返るということ。例えばBEVの時はラジエーターがないからグリルではなくボディにした。では、もっと大きな内燃機関ベースのクルマであれば、ラジエーターを大型化しなければいけない。すると結局はまたグリルが必要になるかもしれない。そういったことの繰り返しだ」と語る。ただし、スピンドル自体は守りながらボディと融合させる方向のようだ。
須賀氏は、「(スピンドルは)ブランドのアイコンなので、あまり隠さないようにはするが。そのうちウォーリーを探せみたいになるかも(笑)」。ただし、「皆さんが手ぶりで形を表現できるようなスピンドルのモチーフをどう入れるのか。その時、どの部品とどう絡めるのかはクルマのパッケージにもよる。だから私はいつもボンネットを開けて、ここの部品はこうなっているのかなど、そういうこと考えながら、外観デザインをどうしようかとメンバーたちと一緒にやっている」と常に機能をベースにデザインを考えていることを強調した。
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