トヨタのBEVへのホンキ度は?『bZ4X』で作り上げたエコシステム【藤井真治のフォーカス・オン】
モノとしての『bZ4X』の評価は上々
遅れていると世界中から言われていたトヨタが初の電気自動車(BEV)専用車を遂に発売した。スバルとの共同開発車である『bZ4X』。EV専用のプラットフォームに乗るボディはSUVタイプのトヨタらしいデザインの美しいフォルムを持っている。
安全装備やコネクティッド機能満載。補助金なども駆使し600万円と、うなずけける価格である。動力源であるバッテリーの不安材料である走行距離、経年変化による劣化、充電時間の長さも不安解消への努力がなされている。また「EVは速いが走りのフィールがつまらない」というモリゾー氏(豊田章男社長)のコメントも考慮し、「走りの味付け」開発陣が頑張ったこともニュースレターから見て取れる。
「モノ」としての自動車ジャーナリスト諸氏の評価も上々である。
世界のBEVは政府と資本家が力づくで普及させた?トヨタは
しかしながらこのクルマに対するトヨタの本気度はむしろ「コト」の部分ではないかと思われる。
このbZ4Xはすべてリース販売であり、個人で使う場合はKINTOという定額利用のサブスクリプション方式に限定される。法人で使う場合もトヨタ傘下の全国販売店が持つトヨタレンタリース店のネットワーク(東京地区はトヨタ直営の(株)トヨタモビリティサービス東京)からのリース提供のみとなる。いわばトヨタが築き上げた流通体制でオーナーシップをしっかりと囲い混んでしまおうと言うものだ。このbZ4Xに惚れ込んだユーザーでも個人では所有することができないのだ。
EVの新車販売台数が世界で約460万台に拡大したとはいえ、現実的には自動車製造業やクルマ社会全体はエンジンを中心に構築され維持されている。その社会に登場するEVという初物商品は、クルマの形をしているものの現在は正直この社会に十分に順応できないと言えるだろう。とりわけ世界における出遅れ感が甚だしい日本ではEVの不自由さに過剰反応する人たちや、「EVはまだまだ先のこと」といってタカをくくる現実派や良識派の方々が多いのもうなずける。
EVは現段階では、充電インフラを始めとしたエコシステム=生態系を作り上げて行かないとモビリティ社会の中ではメジャーになりきれない。周辺の異業種を巻き込んでいきシナジーとともに新しいビジネスモデルを作り上げないと成功モデルとはならない。
その際に考慮すべきはバッテリーを動力源とするEVが未だ高価格かつ発展途上の商品であるという認識に立ち、バッテリーの寿命、中古車価格の下落リスク、インフラの未整備、メンテナンス、事故対応、リサイクルなどなど購入者やユーザーあるいは社会に降りかかる困りごとである。しかもクルマが廃車されるまでの長期に渡ってである。でなければ、ビジネスとしての成立性だけでなくカーボン・フリーとかレジリエンスとかの言葉ですら形骸化してしまう。
実はこうしたポイント、とりわけ中長期的な課題については世界のEV市場ではあまり真剣な対策が取られずに、お金持ち政府の補助金やメディアの力に乗せられた新しもの好きのユーザーや資本家が力づくで普及させてしまった。今後の対応は普及させながら、というのは言い過ぎだろうか?(当方、個人的には流行に乗るのは大好きだし、走りながら考えるというビジネスモデルも大好きなのであるが)
マジメなトヨタの「コト」始め。今後の展開は?
トヨタは初のEV専用車bZ4Xできわめてトヨタらしい真面目な「コト」始めを行った。困りごとを解消するために自前のエコシステムを作ってしまったのである。
このエコシステムのメインプレーヤーは全国のトヨタ系販売店とその傘下のトヨタレンタリース店や自社のファイナンス会社系列のKINTO、技術革新のスピートをアフターサービス面でフォローできるKINTOファクトリーなど自前の周辺事業。ニュースレターには書いていない中古車関連会社やリサイクル会社、物流や補給部品という自社関連プレーヤーも参画してくることは必須であろう。
先ずはすべての車両を一台も逃さずこのエコシステムに乗せるため、クローズド方式が取られそのためにリース方式限定販売としたと思われる。
これができるのは、バリューチェーン政策として、販売、サービス、リース、金融、中古車やリサイクルといったプレイヤーや機能を育ててきた歴代のトヨタの国内販売、マーケティングティームの力の蓄積があってのこと。他のブランドが簡単にかつ完璧にできる話ではないであろう。
そのトヨタも海外では他企業も巻き込んだハイコストのオープンなエコシステムに頼らざるを得ないだろう。また国内も現在の5000台限定という規模から脱却するには、他業種や他ブランドすらも巻き込んだオープン方式の展開の可能性もある。
今後のトヨタのEVをめぐる世界的な「コト」の展開が注目されるところである。
藤井真治
(株)APスターコンサルティング代表。アジア戦略コンサルタント&アセアンビジネス・プロデューサー。自動車メーカーの広報部門、海外部門、ITSなど新規事業部門経験30年。内インドネシアや香港の現地法人トップとして海外の企業マネージメント経験12年。その経験と人脈を生かしインドネシアをはじめとするアセアン&アジアへの進出企業や事業拡大企業をご支援中。自動車の製造、販売、アフター、中古車関係から IT業界まで幅広いお客様のご相談に応える。『現地現物現実』を重視しクライアント様と一緒に汗をかくことがポリシー。
遅れていると世界中から言われていたトヨタが初の電気自動車(BEV)専用車を遂に発売した。スバルとの共同開発車である『bZ4X』。EV専用のプラットフォームに乗るボディはSUVタイプのトヨタらしいデザインの美しいフォルムを持っている。
安全装備やコネクティッド機能満載。補助金なども駆使し600万円と、うなずけける価格である。動力源であるバッテリーの不安材料である走行距離、経年変化による劣化、充電時間の長さも不安解消への努力がなされている。また「EVは速いが走りのフィールがつまらない」というモリゾー氏(豊田章男社長)のコメントも考慮し、「走りの味付け」開発陣が頑張ったこともニュースレターから見て取れる。
「モノ」としての自動車ジャーナリスト諸氏の評価も上々である。
世界のBEVは政府と資本家が力づくで普及させた?トヨタは
しかしながらこのクルマに対するトヨタの本気度はむしろ「コト」の部分ではないかと思われる。
このbZ4Xはすべてリース販売であり、個人で使う場合はKINTOという定額利用のサブスクリプション方式に限定される。法人で使う場合もトヨタ傘下の全国販売店が持つトヨタレンタリース店のネットワーク(東京地区はトヨタ直営の(株)トヨタモビリティサービス東京)からのリース提供のみとなる。いわばトヨタが築き上げた流通体制でオーナーシップをしっかりと囲い混んでしまおうと言うものだ。このbZ4Xに惚れ込んだユーザーでも個人では所有することができないのだ。
EVの新車販売台数が世界で約460万台に拡大したとはいえ、現実的には自動車製造業やクルマ社会全体はエンジンを中心に構築され維持されている。その社会に登場するEVという初物商品は、クルマの形をしているものの現在は正直この社会に十分に順応できないと言えるだろう。とりわけ世界における出遅れ感が甚だしい日本ではEVの不自由さに過剰反応する人たちや、「EVはまだまだ先のこと」といってタカをくくる現実派や良識派の方々が多いのもうなずける。
EVは現段階では、充電インフラを始めとしたエコシステム=生態系を作り上げて行かないとモビリティ社会の中ではメジャーになりきれない。周辺の異業種を巻き込んでいきシナジーとともに新しいビジネスモデルを作り上げないと成功モデルとはならない。
その際に考慮すべきはバッテリーを動力源とするEVが未だ高価格かつ発展途上の商品であるという認識に立ち、バッテリーの寿命、中古車価格の下落リスク、インフラの未整備、メンテナンス、事故対応、リサイクルなどなど購入者やユーザーあるいは社会に降りかかる困りごとである。しかもクルマが廃車されるまでの長期に渡ってである。でなければ、ビジネスとしての成立性だけでなくカーボン・フリーとかレジリエンスとかの言葉ですら形骸化してしまう。
実はこうしたポイント、とりわけ中長期的な課題については世界のEV市場ではあまり真剣な対策が取られずに、お金持ち政府の補助金やメディアの力に乗せられた新しもの好きのユーザーや資本家が力づくで普及させてしまった。今後の対応は普及させながら、というのは言い過ぎだろうか?(当方、個人的には流行に乗るのは大好きだし、走りながら考えるというビジネスモデルも大好きなのであるが)
マジメなトヨタの「コト」始め。今後の展開は?
トヨタは初のEV専用車bZ4Xできわめてトヨタらしい真面目な「コト」始めを行った。困りごとを解消するために自前のエコシステムを作ってしまったのである。
このエコシステムのメインプレーヤーは全国のトヨタ系販売店とその傘下のトヨタレンタリース店や自社のファイナンス会社系列のKINTO、技術革新のスピートをアフターサービス面でフォローできるKINTOファクトリーなど自前の周辺事業。ニュースレターには書いていない中古車関連会社やリサイクル会社、物流や補給部品という自社関連プレーヤーも参画してくることは必須であろう。
先ずはすべての車両を一台も逃さずこのエコシステムに乗せるため、クローズド方式が取られそのためにリース方式限定販売としたと思われる。
これができるのは、バリューチェーン政策として、販売、サービス、リース、金融、中古車やリサイクルといったプレイヤーや機能を育ててきた歴代のトヨタの国内販売、マーケティングティームの力の蓄積があってのこと。他のブランドが簡単にかつ完璧にできる話ではないであろう。
そのトヨタも海外では他企業も巻き込んだハイコストのオープンなエコシステムに頼らざるを得ないだろう。また国内も現在の5000台限定という規模から脱却するには、他業種や他ブランドすらも巻き込んだオープン方式の展開の可能性もある。
今後のトヨタのEVをめぐる世界的な「コト」の展開が注目されるところである。
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