【レクサス RX 新型】「遠くからRXに見えなくてもいい」チーフデザイナーの挑戦とは
レクサスは基幹車種の1台であるSUV、『RX』をフルモデルチェンジした。新ハイブリッドシステムの搭載と並び新型RXの目玉ともいえるのが「スピンドルボディ」を採用したフロントマスクをはじめとする新たなレクサスデザインだ。
レクサスインターナショナル レクサスデザインPCD(プロジェクトチーフデザイナー)の草刈穣太さんに、新型RXのデザインの特徴や意気込みについて聞いた。
チャレンジしないという選択肢はない
草刈さんは、RXのチーフデザイナーに決まった時、「責任の重さ」を感じたという。それはレクサスの中でRXが屋台骨の1台であるため。「やはり失敗は出来ませんよね。ただチャレンジしないという意選択肢はないんです。レクサスというブランドは歴史が浅いので、挑戦していくことがレクサスの存在意義。そうでないと存在意義がなくなってしまいます」と草刈さんはその理由を話す。
先々代のRXがデビューした際、草刈さんはアメリカ勤務で、RXを実際に使用していたそうだ。「すごく使いやすくて、どこに行くのにも楽でした。ただ、アメリカで見ていると年齢層の高い女性が乗っていることが多いんです。それはちょっと残念な感じでしたね」とのこと。また、先代RXが出た時には中国での上海勤務だった。「(RXは)現地でも力強く見えて良いなと思ったのですが、ジャーマン3のクルマやポルシェがいっぱい走っているんです。それらと比べた時に、もうちょっとこうだったらなという思いが自分の中にありました。そして日本に帰ってきて、RXの担当になったのでその辺りの思いを入れながらみんなで作っていきました」と話す。
上海で感じた「もうちょっとこうだったら」は、具体的には「重さを感じたい」ということだった。同時に先代RXのデザインについて、「低重心や、タイヤがしっかりと接地している感じがありました。これはボウリング(つまらない)といわれてデザイン面でチャレンジしなければならなかったから。ただ、デザイン先行的なところもありました」とのこと。つまり、デザインと走りが伴っていなかったのだ。
「そこから『LC』をはじめとして走りを変えて、ネクストチャプターとして、点(1台)から面(全体)に変化して、デザインに走りが追いついてきたわけです。そしてそれを表現する骨格や、強さ、低重心感を改めて表現できるようになりました」
デザインと走りが一致してきたことについて、「デザインはしやすくなった」と話す。「(レクサスの)ネクストチャプターとして機能的本質と動的性能に根差したプロポーションと独自性と言っています。やはりその基本的な性能がないことには、ただのスタイルになってしまいます。今回は最初からリアにしっかり駆動力を与えるユニットがありますので、デザインとしてはそこを頼りにしてデザイン開発ができるようになったからです」と語る。
デザインコンセプトは“ALLURING(アルアリング)×VERVE(ヴァーブ)”
新型RXのデザインコンセプトは、“ALLURING(アルアリング)×VERVE(ヴァーブ)”だ。
「アルアリングは、釣りのルアーと同じ語源で、惹き付けるという意味です。つまり、人の心を惹き付けるような魅惑的な面質と、ヴァーブは美術品などに対する情熱を感じさせるような力強さ。つまり、美しさと力強さです」
「初代RXではジェントルアンドワイルドというCMのキャッチコピーがありました。言葉は変わっていますが、実は歴代RXが言い続けている強さと美しさ、そしてラグジュアリーですがしっかりとSUVの強さを持っているところを言葉にして、それをさらに進化させたワードです」
このコンセプトを踏まえ歴代受け継がれて来たRXらしさとは、サイドビューで見た時に、「SUVだけど部骨ではなく流麗さとしっかりと実用性が備わっていること」だと草刈さんはいう。
また、しっかりとタイヤが路面を捉えているスタンスの良さもポイントだ。草刈さんは、「全長は変わらずにホイールベースを伸ばしてトレッドも広がっています。サイドから見ると、Aピラーの付け根の位置を後ろに引いている。そうすることでフードをできるだけ伸びやかに見せています。『LS』でも採用しているワイパーを使うことでフロントガラスとフードの隙間を詰めてフードを長く見せるな工夫をしながら、キャビンの重心がしっかりとリアタイヤに乗っているようなイメージにしています」と説明する。
ただし、「あまりAピラーの位置を後ろ(車体側)に引きすぎると、乗降性が悪くなります。そこで乗降性(の向上)に効くAピラーの上端あたりの断面を工夫して、その部分をできるだけ薄くしました。実は先代より80mmぐらいAピラーを引いているのですが、その部分は3mmぐらいしか下に下がってないのでほぼ影響はありません」と機能面で悪影響は出ないように手を入れた。また、Aピラーの角度はそのままに、位置を後ろに引いたことで、「左右で2度ずつ、上方も2度視界が広がっています」と視界も向上していることを強調した。
遠くからRXに見えなくてもいい
先代RXのデザイン上の特徴のひとつにフローティングルーフがあり、それは新型でも踏襲された。草刈さんは、「クオーターピラー(Cピラー)に特徴を持たせています。これはセダンライクや、流麗に見せたいためです。実際はCピラーの黒い部分は(ガラスではなく)ふさがっているのですが、外から見た時にそこにある室内空間を感じることが出来、それで実用性を感じさせているのです」とその効果を説明。
また、ルーフからCピラーに向けて「折れ」が見て取れる。これによってフロントクォーターから見ると、「上の面が見えなくなり、クーペのように見せることができます」とデザイン上での工夫を明かす。また、リア周りでも、「Cピラーの付け根あたりで絞っていることで、さらにスタンスがよく見えるようにしています」とコメントした。
草刈さんは、スタンスの良さに関してもうひとつサイドの大きな特徴を明かす。「実はサイドビューで一番いいたいことは、リアドアからリアフェンダーに向かっての面で、これは後輪のスタンスの良さを感じさせる肝なんです」。また、光の加減でフロントからリアに向けて流れてきた面が後席のドアハンドル手前で弧を描きフロントに戻っている。これは「リアフェンダーの後輪の接地感を表しています。これによってリアフェンダーがより強調され、リアのトラクションの強さを見せるために追求していった結果の表現です」と説明した。
最後に草刈さんに新型RXのデザインの一番のこだわりを聞いてみた。
「最初にイメージしたのは、遠くで見た時には、RXではない別のクルマに見えてほしいと思ったのです。(先代とは)プロポーションが違っていますが、ちょっと近づいてグラフィックやフローティングルーフなどが見えてくると、やっぱりRXだなと実感する。さらに近づいていくと、シームレスグリルや色々なディティールが見えてきて、先代とは違うということに気付いてもらえる。そして、例えば自分で洗車をした時に、あ、こんな風になってるんだ、と新たな気づきがあって、それが愛着につながればいいなと思っています」
レクサスインターナショナル レクサスデザインPCD(プロジェクトチーフデザイナー)の草刈穣太さんに、新型RXのデザインの特徴や意気込みについて聞いた。
チャレンジしないという選択肢はない
草刈さんは、RXのチーフデザイナーに決まった時、「責任の重さ」を感じたという。それはレクサスの中でRXが屋台骨の1台であるため。「やはり失敗は出来ませんよね。ただチャレンジしないという意選択肢はないんです。レクサスというブランドは歴史が浅いので、挑戦していくことがレクサスの存在意義。そうでないと存在意義がなくなってしまいます」と草刈さんはその理由を話す。
先々代のRXがデビューした際、草刈さんはアメリカ勤務で、RXを実際に使用していたそうだ。「すごく使いやすくて、どこに行くのにも楽でした。ただ、アメリカで見ていると年齢層の高い女性が乗っていることが多いんです。それはちょっと残念な感じでしたね」とのこと。また、先代RXが出た時には中国での上海勤務だった。「(RXは)現地でも力強く見えて良いなと思ったのですが、ジャーマン3のクルマやポルシェがいっぱい走っているんです。それらと比べた時に、もうちょっとこうだったらなという思いが自分の中にありました。そして日本に帰ってきて、RXの担当になったのでその辺りの思いを入れながらみんなで作っていきました」と話す。
上海で感じた「もうちょっとこうだったら」は、具体的には「重さを感じたい」ということだった。同時に先代RXのデザインについて、「低重心や、タイヤがしっかりと接地している感じがありました。これはボウリング(つまらない)といわれてデザイン面でチャレンジしなければならなかったから。ただ、デザイン先行的なところもありました」とのこと。つまり、デザインと走りが伴っていなかったのだ。
「そこから『LC』をはじめとして走りを変えて、ネクストチャプターとして、点(1台)から面(全体)に変化して、デザインに走りが追いついてきたわけです。そしてそれを表現する骨格や、強さ、低重心感を改めて表現できるようになりました」
デザインと走りが一致してきたことについて、「デザインはしやすくなった」と話す。「(レクサスの)ネクストチャプターとして機能的本質と動的性能に根差したプロポーションと独自性と言っています。やはりその基本的な性能がないことには、ただのスタイルになってしまいます。今回は最初からリアにしっかり駆動力を与えるユニットがありますので、デザインとしてはそこを頼りにしてデザイン開発ができるようになったからです」と語る。
デザインコンセプトは“ALLURING(アルアリング)×VERVE(ヴァーブ)”
新型RXのデザインコンセプトは、“ALLURING(アルアリング)×VERVE(ヴァーブ)”だ。
「アルアリングは、釣りのルアーと同じ語源で、惹き付けるという意味です。つまり、人の心を惹き付けるような魅惑的な面質と、ヴァーブは美術品などに対する情熱を感じさせるような力強さ。つまり、美しさと力強さです」
「初代RXではジェントルアンドワイルドというCMのキャッチコピーがありました。言葉は変わっていますが、実は歴代RXが言い続けている強さと美しさ、そしてラグジュアリーですがしっかりとSUVの強さを持っているところを言葉にして、それをさらに進化させたワードです」
このコンセプトを踏まえ歴代受け継がれて来たRXらしさとは、サイドビューで見た時に、「SUVだけど部骨ではなく流麗さとしっかりと実用性が備わっていること」だと草刈さんはいう。
また、しっかりとタイヤが路面を捉えているスタンスの良さもポイントだ。草刈さんは、「全長は変わらずにホイールベースを伸ばしてトレッドも広がっています。サイドから見ると、Aピラーの付け根の位置を後ろに引いている。そうすることでフードをできるだけ伸びやかに見せています。『LS』でも採用しているワイパーを使うことでフロントガラスとフードの隙間を詰めてフードを長く見せるな工夫をしながら、キャビンの重心がしっかりとリアタイヤに乗っているようなイメージにしています」と説明する。
ただし、「あまりAピラーの位置を後ろ(車体側)に引きすぎると、乗降性が悪くなります。そこで乗降性(の向上)に効くAピラーの上端あたりの断面を工夫して、その部分をできるだけ薄くしました。実は先代より80mmぐらいAピラーを引いているのですが、その部分は3mmぐらいしか下に下がってないのでほぼ影響はありません」と機能面で悪影響は出ないように手を入れた。また、Aピラーの角度はそのままに、位置を後ろに引いたことで、「左右で2度ずつ、上方も2度視界が広がっています」と視界も向上していることを強調した。
遠くからRXに見えなくてもいい
先代RXのデザイン上の特徴のひとつにフローティングルーフがあり、それは新型でも踏襲された。草刈さんは、「クオーターピラー(Cピラー)に特徴を持たせています。これはセダンライクや、流麗に見せたいためです。実際はCピラーの黒い部分は(ガラスではなく)ふさがっているのですが、外から見た時にそこにある室内空間を感じることが出来、それで実用性を感じさせているのです」とその効果を説明。
また、ルーフからCピラーに向けて「折れ」が見て取れる。これによってフロントクォーターから見ると、「上の面が見えなくなり、クーペのように見せることができます」とデザイン上での工夫を明かす。また、リア周りでも、「Cピラーの付け根あたりで絞っていることで、さらにスタンスがよく見えるようにしています」とコメントした。
草刈さんは、スタンスの良さに関してもうひとつサイドの大きな特徴を明かす。「実はサイドビューで一番いいたいことは、リアドアからリアフェンダーに向かっての面で、これは後輪のスタンスの良さを感じさせる肝なんです」。また、光の加減でフロントからリアに向けて流れてきた面が後席のドアハンドル手前で弧を描きフロントに戻っている。これは「リアフェンダーの後輪の接地感を表しています。これによってリアフェンダーがより強調され、リアのトラクションの強さを見せるために追求していった結果の表現です」と説明した。
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