トヨタ センチュリー 新型のインテリアに「モダン」と「歴史」を感じる…デザイナーにインタビュー
【トヨタ センチュリー 新型】トヨタはショーファーカーの『センチュリー』に新たなボディタイプを追加した。そのインテリアは日本の伝統技法を取り入れ、仕立て上げられている。そこでインテリアデザイナーにそのこだわりについて話を聞いた。
◆継承は水平と垂直
---:センチュリーの内装デザインの担当が決まった時に沼本さんはどう思いましたか。
トヨタデザイン部の沼本伸さん:最初は自分でいいのかなとちょっとびっくりした部分もありました。でもその後、このクルマをやれるんだという喜びに変わってきましたね。なかなか経験できないことなので、ぜひやりたいという気持ちになっていきました。
---:相当プレッシャーがあったのではないですか。
沼本:最初はありましたけれど、このクルマを熟知していくに従って徐々にそれはなくなっていきました。こういう歴史があるから、それを継承して進化させるんだという明確な目標が決まっていきましたので。最初は本当にどうしようという、気持ちがモヤモヤとしていたんですが、それはなくなっていきました。
---:いま、継承と進化という言葉が出ましたけれども、まず、継承しなければいけないインテリアのデザインといはどういうものでしょう。
沼本:歴代の車両を見ていただくとわかると思うんですが、水平と垂直ですごくシンプルな、ミニマリズムな世界・空間で、日本の美意識を感じるような匠の技をさりげなく使っている。そういう考え方が継承です。
また、本杢パネルはヤマハで作っていただいた金属のパネルの上に本杢を貼って、レーザーで焼き切ってラインを作る手法ですとか、ピアノブラックの手法もヤマハにお願いしています。シートに織り込んだ刺繍の手法は伝統技法の絓縫いを採用しています。これは毛羽立たせないように糸をきつく縫い込んでいる手法で、そこに菱形で縫っています。この菱形にも意味があって、長寿とか厄除けなど縁起のいい形なんです。これは他にもいろいろなところにあしらっています。
それからタワーコンソールにある時計の部分ですね。この盤面はただフラットではなくて、加飾引きというこれも日本の伝統技法を用いています。段差のある削り跡をつける手法で、お椀とか木のお皿とかにろくろを引きながら削り込む手法なんです。そういった作り込みで質感を高めて、日本の伝統技法を参考に織り込んでいきました。
その例ではリアドアのスポーカーグリル(スピーカーグリル)ですね。これは切り金という手法があって、京都の迎賓館の柱の部分や屏風に施されている装飾です。金箔を薄くスライスして貼っていくことで光の変化をつけて、パッと見にはよくわからないんですけど、近づいてみると、そういう処理がしてあることに気付かせる。その処理をグリルの部分の穴の大きさをちょっと変えたりして、それもひし形の形状にすることで、ドアを開けて光をあてると陰影で形が浮かび上がったり消えたりすることで質感を高く見せているのです。
この多くの日本の室内のおもてなしの考え方は、京都の迎賓館の桐の間を参考にしています。そこにはフラットな木の長方形のテーブルがあって、畳が敷いてあって、本当に水平水直の空間なんです。まさしくこの車両に同じ考え方につながる空間が広がっています。徹底的なミニマリズムに徹していて、この車両も同じようなことがいえるのです。
あるいは、皇居の天皇陛下が海外の国賓の方をお迎えしてお話をするお部屋があるのですが、そこは何もなくてもカーペットが敷いてあって、花瓶がひとつ置いてあり一輪花が挿してある。障子で囲まれていて、そこもすごくシンプルな空間で、ミニマリズム。海外の方だけでなく日本の方も含めてそれがエレガンスに感じるんです。そういう日本の室内空間のおもてなしの考え方をヒントにしました。
これらは過去の車両を見ていて、そういう考え方なんだなとわかったこともたくさんありましたし、ホテルに伺ってホテルマンの方におもてなしの話やお部屋を飾ったりとか調度品をどのように置くのか、また高級ボートの室内を見たり。そういう調査しながら、少しずつ考えながらデザインに落とし込んでいきました。
一方の進化は新しい技術がありますので、そういった技術を取り込んで、それをデザインに落とし込んでいくことになります。
例えばリア席に取り外しができる2つコントローラーはいままでにはない機能です。これは、独立してそれぞれ左右席用のコントローラーが並んでいるのですが、それは新しい機能です。
◆人中心で、くつろぎと利便性、使い勝手を考えた空間
---:細かい技法はもちろんですが、室内の第一印象はクラシックなイメージでした。
沼本:完全なクラシックではなくて、モダンには見せようとはしています。もちろん超モダンではなくて心地よいモダンさと歴史を感じるような、日本の匠の技が感じるような、そういうものをうまく組み合わせて、落ち着きがある空間を考えています。
---:インテリアのデザインコンセプトはどういうものでしょう。
沼本:人中心で、くつろぎと利便性、使い勝手を考えた空間です。特にリア周りでは、タワーコンソールがあって、時計があって空調がついています。リアのコンソールにはシートで操作するコントローラーがついていて、その後ろに携帯ホルダーがあって斜めに立てられるんですね、扉を開けるとテーブルが格納されていて、折り畳みのテーブルが出てきます。カップホルダーも前についている。そういう使い勝手の要素があります。電源の操作パネルが下についていて、HDMIとかUSB-Aを含めてついています。そういう機能的なコンソールになっているのです。
またくつろげる静かなプライベートラウンジという考え方で、タワーコンソールによって、フロント席とも完全な遮蔽ではなく、リア席の空間を作るようにしています。このタワーコンソールも歴代の車両もあって、おかかえのドライバーがいた場合には、ドライバーが各種スイッチ類を操作する手元を後席から見えないように、なるべく低い位置にヒーターコントロールパネルの下のところに集中してスイッチ類を置いています。何か操作しているという手を動かしているのがチラチラと見えるなどのわずらわしさは一切ないという考え方でレイアウトしています。
---:最後にこのクルマで一番のこだわりを教えていただけますか。
沼本:最初にもお話ししたとおり、シンプルに作る。日本の伝統工芸を入れながら、日本の美意識を感じさせるような、シンプルでミニマリズムな空間を作るという、他の車両とは違う、他の競合車とは違う唯一無二の室内空間を作ったということが一番のところだと思います。
◆継承は水平と垂直
---:センチュリーの内装デザインの担当が決まった時に沼本さんはどう思いましたか。
トヨタデザイン部の沼本伸さん:最初は自分でいいのかなとちょっとびっくりした部分もありました。でもその後、このクルマをやれるんだという喜びに変わってきましたね。なかなか経験できないことなので、ぜひやりたいという気持ちになっていきました。
---:相当プレッシャーがあったのではないですか。
沼本:最初はありましたけれど、このクルマを熟知していくに従って徐々にそれはなくなっていきました。こういう歴史があるから、それを継承して進化させるんだという明確な目標が決まっていきましたので。最初は本当にどうしようという、気持ちがモヤモヤとしていたんですが、それはなくなっていきました。
---:いま、継承と進化という言葉が出ましたけれども、まず、継承しなければいけないインテリアのデザインといはどういうものでしょう。
沼本:歴代の車両を見ていただくとわかると思うんですが、水平と垂直ですごくシンプルな、ミニマリズムな世界・空間で、日本の美意識を感じるような匠の技をさりげなく使っている。そういう考え方が継承です。
また、本杢パネルはヤマハで作っていただいた金属のパネルの上に本杢を貼って、レーザーで焼き切ってラインを作る手法ですとか、ピアノブラックの手法もヤマハにお願いしています。シートに織り込んだ刺繍の手法は伝統技法の絓縫いを採用しています。これは毛羽立たせないように糸をきつく縫い込んでいる手法で、そこに菱形で縫っています。この菱形にも意味があって、長寿とか厄除けなど縁起のいい形なんです。これは他にもいろいろなところにあしらっています。
それからタワーコンソールにある時計の部分ですね。この盤面はただフラットではなくて、加飾引きというこれも日本の伝統技法を用いています。段差のある削り跡をつける手法で、お椀とか木のお皿とかにろくろを引きながら削り込む手法なんです。そういった作り込みで質感を高めて、日本の伝統技法を参考に織り込んでいきました。
その例ではリアドアのスポーカーグリル(スピーカーグリル)ですね。これは切り金という手法があって、京都の迎賓館の柱の部分や屏風に施されている装飾です。金箔を薄くスライスして貼っていくことで光の変化をつけて、パッと見にはよくわからないんですけど、近づいてみると、そういう処理がしてあることに気付かせる。その処理をグリルの部分の穴の大きさをちょっと変えたりして、それもひし形の形状にすることで、ドアを開けて光をあてると陰影で形が浮かび上がったり消えたりすることで質感を高く見せているのです。
この多くの日本の室内のおもてなしの考え方は、京都の迎賓館の桐の間を参考にしています。そこにはフラットな木の長方形のテーブルがあって、畳が敷いてあって、本当に水平水直の空間なんです。まさしくこの車両に同じ考え方につながる空間が広がっています。徹底的なミニマリズムに徹していて、この車両も同じようなことがいえるのです。
あるいは、皇居の天皇陛下が海外の国賓の方をお迎えしてお話をするお部屋があるのですが、そこは何もなくてもカーペットが敷いてあって、花瓶がひとつ置いてあり一輪花が挿してある。障子で囲まれていて、そこもすごくシンプルな空間で、ミニマリズム。海外の方だけでなく日本の方も含めてそれがエレガンスに感じるんです。そういう日本の室内空間のおもてなしの考え方をヒントにしました。
これらは過去の車両を見ていて、そういう考え方なんだなとわかったこともたくさんありましたし、ホテルに伺ってホテルマンの方におもてなしの話やお部屋を飾ったりとか調度品をどのように置くのか、また高級ボートの室内を見たり。そういう調査しながら、少しずつ考えながらデザインに落とし込んでいきました。
一方の進化は新しい技術がありますので、そういった技術を取り込んで、それをデザインに落とし込んでいくことになります。
例えばリア席に取り外しができる2つコントローラーはいままでにはない機能です。これは、独立してそれぞれ左右席用のコントローラーが並んでいるのですが、それは新しい機能です。
◆人中心で、くつろぎと利便性、使い勝手を考えた空間
---:細かい技法はもちろんですが、室内の第一印象はクラシックなイメージでした。
沼本:完全なクラシックではなくて、モダンには見せようとはしています。もちろん超モダンではなくて心地よいモダンさと歴史を感じるような、日本の匠の技が感じるような、そういうものをうまく組み合わせて、落ち着きがある空間を考えています。
---:インテリアのデザインコンセプトはどういうものでしょう。
沼本:人中心で、くつろぎと利便性、使い勝手を考えた空間です。特にリア周りでは、タワーコンソールがあって、時計があって空調がついています。リアのコンソールにはシートで操作するコントローラーがついていて、その後ろに携帯ホルダーがあって斜めに立てられるんですね、扉を開けるとテーブルが格納されていて、折り畳みのテーブルが出てきます。カップホルダーも前についている。そういう使い勝手の要素があります。電源の操作パネルが下についていて、HDMIとかUSB-Aを含めてついています。そういう機能的なコンソールになっているのです。
またくつろげる静かなプライベートラウンジという考え方で、タワーコンソールによって、フロント席とも完全な遮蔽ではなく、リア席の空間を作るようにしています。このタワーコンソールも歴代の車両もあって、おかかえのドライバーがいた場合には、ドライバーが各種スイッチ類を操作する手元を後席から見えないように、なるべく低い位置にヒーターコントロールパネルの下のところに集中してスイッチ類を置いています。何か操作しているという手を動かしているのがチラチラと見えるなどのわずらわしさは一切ないという考え方でレイアウトしています。
---:最後にこのクルマで一番のこだわりを教えていただけますか。
沼本:最初にもお話ししたとおり、シンプルに作る。日本の伝統工芸を入れながら、日本の美意識を感じさせるような、シンプルでミニマリズムな空間を作るという、他の車両とは違う、他の競合車とは違う唯一無二の室内空間を作ったということが一番のところだと思います。
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