「クロスオーバー」と何が違う? トヨタ『クラウン・スポーツ』のデザイン、5つの見所とは
トヨタ『クラウン・スポーツ』はその名の通り、スポーティなスタイルが売りのSUVだ。『クラウン・クロスオーバー』よりホイールベースを縮め、全幅は広げて力感あふれるフォルムを創り上げた。その見所を、デザイナーたちの証言を引用しながら、クロスオーバーとの比較も交えてチェックしていこう。
◆見所1:リヤコーナーの丸み
「クラウン・スポーツのデザイン開発はリヤビューのスケッチから始まりました」と語るのは、エクステリアを担当した小出幸弘デザイナー。クロスオーバーの後ろ姿とは一味違う、ムッチリとした丸みを持ちながら、それでいて切れ味のよい後ろ姿がそこに描き出されている。
クラウン・シリーズ全体のチーフデザイナーを務めてきた宮崎満則氏は、「このスケッチを当時の社長(豊田章男・現会長)に見せて、『これで行こう!』となった」と振り返る。しかしスケッチを見ると、リヤコーナーがどんな丸みを持つのか、よくわからないのだが…。
「面がつながっているような、いないような…」と宮崎チーフは笑う。それだけにクレイモデル制作にはベテランのモデラーを起用したとのこと。「スケッチを解釈してもらいながら開発を進めた」(小出氏)という。
一般論としてリヤコーナーが丸いと空気抵抗が増えてしまう。トヨタが”最終イメージスケッチ”として公表しているスケッチには、リヤコーナーにシャープな折れ線が見える。この折れ線で気流を剥離させ、空力性能を改善する意図だったのだろう。しかし結果的に折れ線は入れなかった。
宮崎チーフによれば、「ルーフの頂点から最後端までに落差があるので、そこで空力性能を稼いでいる。リヤコーナーで少し悪化しても、ルーフでそれを相殺することができた」。かくして初志貫徹。当初のスケッチそのままのリヤビューが完成した。
◆見所2:ボディサイドは「オロイド」がテーマ
ボディサイドはクロスオーバーと同じく、“オロイド”のテーマを採用している。オロイドとは1929年にドイツの数学者が発見した幾何立体だ。
直径が同じ二つの円を90度の位置関係で円周が中心に接するように組み合わせ、互いの円周を直線で結んで出来る立体がオロイド。シャープエッジと円断面で構成されているが、転がすと、円断面が地面に沿ってボールのように滑らかに転がるという不思議な立体である。
宮崎チーフは前作の現行『ハリアー』でオロイドに着目し、丸い断面がシャープエッジへと連続的に変化するボディサイドを創り上げた。そこで手応えを得て、クラウンのクロスオーバーにそれを応用。さらにスポーツにも展開した。
「フロントの”ハンマーヘッド”と違って、オロイドはクラウン・シリーズの共通テーマではない。『セダン』と『エステート』のボディサイドは違うテーマでデザインしています」と宮崎チーフ。
ただ、ここで大事なのは、同じオロイドのテーマを使いながらも、クロスオーバーとスポーツではボディサイドの表情が大きく異なることだろう。
◆見所3:抑揚の強いリヤフェンダー
丸い断面からシャープエッジが延びたその先でリヤフェンダーの立体を嵌合させる、というボディサイドの基本構成もクロスオーバーと同じ。しかしスポーツのほうがリヤフェンダーの張り出し量が大きい。
スポーツはクロスオーバーより全幅が40mm広く、なおかつホイールベースが80mm短い。それを活かして、「ボディサイドの面の抑揚を強くした」と小出氏。クロスオーバーではオロイドのボディサイドとリヤフェンダーの立体とを滑らかにつないでいたが、スポーツはそこにクッキリとした凹面を挟んで、凸→凹→凸の抑揚を強調している。ダイナミズムを醸し出す抑揚だ。
リヤフェンダーの立体はサイドシルに向けて斜め下に延びる一方、斜め上にも延びてベルトラインを押し上げている。これも基本的にはクロスオーバーと同じなのだが、ベルトラインの押し上げはスポーツのほうが強い。そこに込めた想いを、宮崎チーフがこう語る。
「FRでもFFでもなく、e-Fourなので…」。そう、スポーツはHEVもPHEVも後輪をモーター駆動する4WDだ。「4つのタイヤにしっかりと力を込めたい。そのためにはやはり凝縮感のある力強いリヤフェンダーが必要で、だからリヤフェンダーを少し盛り上げています」
◆見所4:大胆なハンマーヘッド
フロントはクラウン・クロスオーバーや新型『プリウス』でお馴染みの“ハンマーヘッド”のテーマを踏襲する。ボンネットのバルジを前方に延ばし、その前端でシュモクザメのヒレのように左右に広げて、そこにランプ機能を組み込むのがハンマーヘッドのテーマだが、スポーツはヒレ部分をライン発光のDRL(デイタイムランニングライト)で挟んだのがひとつの特徴だ。そしてもうひとつスポーツならではの工夫がある。
クロスオーバーではハンマーヘッド形状とその外側のフロントフェンダーに小さな段差を設けて、ハンマーヘッドがフェンダーに包まれているようなイメージを表現した。連続面を基本に面を少しズラして段差を作ったわけだ。
それに対してスポーツはハンマーヘッドのヒレ部分の傾斜を起こしている。あえて連続面にしないことで、ヒレの存在感を強調したのだ。「CADデータを作成する担当者から、『これはなに?』と問われた」と宮崎チーフは苦笑する。
連続面ではなく傾斜を変えるのは、さまざまなデザインを手掛けてきたデータ担当者にとっても常識外だったのだろう。なんと大胆な! しかしそれがクラウン・スポーツのハンマーヘッドに新鮮な、そしてよりスポーティでアグレッシブな表情を与えていることに注目したい。
◆見所5:インテリアの非対称な配色
インテリアは後席空間が少し狭いことを除けば、形状的にはクロスオーバーと同じデザイン。だが、配色が大きく異なる。
クロスオーバーのツートーン内装は“アイランド=島”をテーマに、背景とアイランドで色を違えていた。例えばフロマージュ内装では明るいフロマージュ色で乗員を包みながら、インパネアッパーやコンソール、ドアのスイッチパネルなどのアイランドを黒くする。RS専用のブラック/イエローブラウン内装では逆にブラックを背景色とし、そこにイエローブラウンのインパネアッパーやドア・アームレストを浮かび上がらせた。
一方のスポーツは運転席側と助手席側でドアトリムの色が非対称。「アシンメトリーの配色で、よりスポーティにした」と宮崎チーフは語る。HEVのツートーン内装はサンドブラウンとブラックの組み合わせで、センターから助手席側にかけてはサンドブラウンを背景色にしながら、運転席側はブラックを背景にサンドブラウンのアームレストを置いている。助手席をサンドブラウンで優しく包み込む一方、ドライバー空間は機能感のあるブラックの面積を広げているわけだ。
PHEVのRSグレードはさらに運転席側ドアのアームレストもブラックにすることで、アシンメトリー感を強めた。それに組み合わせるのはセンシュアルレッドという鮮やかな赤。ハイコントラストな赤黒ツートーンがアシンメトリーの配色を際立たせる。
「強烈なアシンメトリーでスポーティさを強調しながら、質感にはクラウンらしい品格を表現した」と宮崎チーフ。赤い合皮に光輝材を混ぜた塗装を施し、シルキーな光沢感を持たせている。正絹の和服のような光沢と言えるかもしれない。
なお、合皮は裏側に発泡ウレタンを挟んで張り込んでいるのだが、クロスオーバーではインパネやセンターコンソールに張った合皮の触感が硬く、コストの安い射出成形品ではないかと誤解されることがあった。そこでクーペとセダンはウレタンの厚みを増やしている。
「クロスオーバーでは乗員スペースを1mmでも広げたいし、高級車といえども柔らかさばかりが大事な世界ではないだろうと考えた。質感の高い合皮を開発できたので、クロスオーバーはモダンに仕上げたのですが…」と宮崎チーフ。合皮は強いテンションをかけて張っていくので、ウレタンが圧縮される。クロスオーバーはその状態でウレタンの厚さが部位により1~2mmになるようにしたのだが、そこまでつぶれたウレタンには弾力性が残っていなかった。
スポーツとセダンで圧縮状態のウレタンの厚みを何mmに設定したのかは聞きそびれたが、事前情報なしに触って「クロスオーバーよりソフトになった」と気付いたので、厚みアップの効果は歴然だ。クロスオーバーにも早くこの改良が反映されることを期待したい。
◆見所1:リヤコーナーの丸み
「クラウン・スポーツのデザイン開発はリヤビューのスケッチから始まりました」と語るのは、エクステリアを担当した小出幸弘デザイナー。クロスオーバーの後ろ姿とは一味違う、ムッチリとした丸みを持ちながら、それでいて切れ味のよい後ろ姿がそこに描き出されている。
クラウン・シリーズ全体のチーフデザイナーを務めてきた宮崎満則氏は、「このスケッチを当時の社長(豊田章男・現会長)に見せて、『これで行こう!』となった」と振り返る。しかしスケッチを見ると、リヤコーナーがどんな丸みを持つのか、よくわからないのだが…。
「面がつながっているような、いないような…」と宮崎チーフは笑う。それだけにクレイモデル制作にはベテランのモデラーを起用したとのこと。「スケッチを解釈してもらいながら開発を進めた」(小出氏)という。
一般論としてリヤコーナーが丸いと空気抵抗が増えてしまう。トヨタが”最終イメージスケッチ”として公表しているスケッチには、リヤコーナーにシャープな折れ線が見える。この折れ線で気流を剥離させ、空力性能を改善する意図だったのだろう。しかし結果的に折れ線は入れなかった。
宮崎チーフによれば、「ルーフの頂点から最後端までに落差があるので、そこで空力性能を稼いでいる。リヤコーナーで少し悪化しても、ルーフでそれを相殺することができた」。かくして初志貫徹。当初のスケッチそのままのリヤビューが完成した。
◆見所2:ボディサイドは「オロイド」がテーマ
ボディサイドはクロスオーバーと同じく、“オロイド”のテーマを採用している。オロイドとは1929年にドイツの数学者が発見した幾何立体だ。
直径が同じ二つの円を90度の位置関係で円周が中心に接するように組み合わせ、互いの円周を直線で結んで出来る立体がオロイド。シャープエッジと円断面で構成されているが、転がすと、円断面が地面に沿ってボールのように滑らかに転がるという不思議な立体である。
宮崎チーフは前作の現行『ハリアー』でオロイドに着目し、丸い断面がシャープエッジへと連続的に変化するボディサイドを創り上げた。そこで手応えを得て、クラウンのクロスオーバーにそれを応用。さらにスポーツにも展開した。
「フロントの”ハンマーヘッド”と違って、オロイドはクラウン・シリーズの共通テーマではない。『セダン』と『エステート』のボディサイドは違うテーマでデザインしています」と宮崎チーフ。
ただ、ここで大事なのは、同じオロイドのテーマを使いながらも、クロスオーバーとスポーツではボディサイドの表情が大きく異なることだろう。
◆見所3:抑揚の強いリヤフェンダー
丸い断面からシャープエッジが延びたその先でリヤフェンダーの立体を嵌合させる、というボディサイドの基本構成もクロスオーバーと同じ。しかしスポーツのほうがリヤフェンダーの張り出し量が大きい。
スポーツはクロスオーバーより全幅が40mm広く、なおかつホイールベースが80mm短い。それを活かして、「ボディサイドの面の抑揚を強くした」と小出氏。クロスオーバーではオロイドのボディサイドとリヤフェンダーの立体とを滑らかにつないでいたが、スポーツはそこにクッキリとした凹面を挟んで、凸→凹→凸の抑揚を強調している。ダイナミズムを醸し出す抑揚だ。
リヤフェンダーの立体はサイドシルに向けて斜め下に延びる一方、斜め上にも延びてベルトラインを押し上げている。これも基本的にはクロスオーバーと同じなのだが、ベルトラインの押し上げはスポーツのほうが強い。そこに込めた想いを、宮崎チーフがこう語る。
「FRでもFFでもなく、e-Fourなので…」。そう、スポーツはHEVもPHEVも後輪をモーター駆動する4WDだ。「4つのタイヤにしっかりと力を込めたい。そのためにはやはり凝縮感のある力強いリヤフェンダーが必要で、だからリヤフェンダーを少し盛り上げています」
◆見所4:大胆なハンマーヘッド
フロントはクラウン・クロスオーバーや新型『プリウス』でお馴染みの“ハンマーヘッド”のテーマを踏襲する。ボンネットのバルジを前方に延ばし、その前端でシュモクザメのヒレのように左右に広げて、そこにランプ機能を組み込むのがハンマーヘッドのテーマだが、スポーツはヒレ部分をライン発光のDRL(デイタイムランニングライト)で挟んだのがひとつの特徴だ。そしてもうひとつスポーツならではの工夫がある。
クロスオーバーではハンマーヘッド形状とその外側のフロントフェンダーに小さな段差を設けて、ハンマーヘッドがフェンダーに包まれているようなイメージを表現した。連続面を基本に面を少しズラして段差を作ったわけだ。
それに対してスポーツはハンマーヘッドのヒレ部分の傾斜を起こしている。あえて連続面にしないことで、ヒレの存在感を強調したのだ。「CADデータを作成する担当者から、『これはなに?』と問われた」と宮崎チーフは苦笑する。
連続面ではなく傾斜を変えるのは、さまざまなデザインを手掛けてきたデータ担当者にとっても常識外だったのだろう。なんと大胆な! しかしそれがクラウン・スポーツのハンマーヘッドに新鮮な、そしてよりスポーティでアグレッシブな表情を与えていることに注目したい。
◆見所5:インテリアの非対称な配色
インテリアは後席空間が少し狭いことを除けば、形状的にはクロスオーバーと同じデザイン。だが、配色が大きく異なる。
クロスオーバーのツートーン内装は“アイランド=島”をテーマに、背景とアイランドで色を違えていた。例えばフロマージュ内装では明るいフロマージュ色で乗員を包みながら、インパネアッパーやコンソール、ドアのスイッチパネルなどのアイランドを黒くする。RS専用のブラック/イエローブラウン内装では逆にブラックを背景色とし、そこにイエローブラウンのインパネアッパーやドア・アームレストを浮かび上がらせた。
一方のスポーツは運転席側と助手席側でドアトリムの色が非対称。「アシンメトリーの配色で、よりスポーティにした」と宮崎チーフは語る。HEVのツートーン内装はサンドブラウンとブラックの組み合わせで、センターから助手席側にかけてはサンドブラウンを背景色にしながら、運転席側はブラックを背景にサンドブラウンのアームレストを置いている。助手席をサンドブラウンで優しく包み込む一方、ドライバー空間は機能感のあるブラックの面積を広げているわけだ。
PHEVのRSグレードはさらに運転席側ドアのアームレストもブラックにすることで、アシンメトリー感を強めた。それに組み合わせるのはセンシュアルレッドという鮮やかな赤。ハイコントラストな赤黒ツートーンがアシンメトリーの配色を際立たせる。
「強烈なアシンメトリーでスポーティさを強調しながら、質感にはクラウンらしい品格を表現した」と宮崎チーフ。赤い合皮に光輝材を混ぜた塗装を施し、シルキーな光沢感を持たせている。正絹の和服のような光沢と言えるかもしれない。
なお、合皮は裏側に発泡ウレタンを挟んで張り込んでいるのだが、クロスオーバーではインパネやセンターコンソールに張った合皮の触感が硬く、コストの安い射出成形品ではないかと誤解されることがあった。そこでクーペとセダンはウレタンの厚みを増やしている。
「クロスオーバーでは乗員スペースを1mmでも広げたいし、高級車といえども柔らかさばかりが大事な世界ではないだろうと考えた。質感の高い合皮を開発できたので、クロスオーバーはモダンに仕上げたのですが…」と宮崎チーフ。合皮は強いテンションをかけて張っていくので、ウレタンが圧縮される。クロスオーバーはその状態でウレタンの厚さが部位により1~2mmになるようにしたのだが、そこまでつぶれたウレタンには弾力性が残っていなかった。
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