86を超えるAE86(ハチロク)を作れ!! 第1回

― 36年の時を経てGAZOOが本気でハチロクを仕上げる

トヨタ86が誕生したのはもちろんAE86があったからに他ならない。AE86は1983年(昭和58年)に発売されたFRクーペ&ハッチバックモデル。そんな今となっては伝説的なAE86を最新技術で仕上げれば86をも超えるクルマに仕上がる!?

そんな欲張りな企みをGAZOO編集部が連載レポートする。

ハチロクで86を超えるプロジェクト始動

今から36年前。神奈川県に生を受けたのが私、加茂 新。普段はクルマ記事の編集者を生業とし、愛車はAE86と86後期というプロのクルマ好きであり、新旧86好きであります。そんな私と同じ年の1983年5月に発売されたのがAE86こと、カローラ・レビン&スプリンター・トレノである。

1600ccの元気なエンジンとFRレイアウトという設計で、瞬く間に人気に。競技では富士フレッシュマンレースなどのワンメイクレースやジムカーナ、ラリーなどで活躍。その素直な特性と軽量ボディによるハンドリングの良さもあり、サーキット走行好きにも愛され、現在でもドリフトでは第一線で活躍する個体もあるほど。
「速さ」自体よりも「走る楽しさ」にあふれた素材だった。わからない方には申し訳ありませんが、バイクで言うとカワサキの「ゼファー」的な存在なわけです。

そんなAE86も販売終了から30年以上も経過。それでもアフターパーツはリリースされ続けており、純正パーツも重要なところは欠品になっておらず、現在でも普通に乗れるというのが魅力でもある。もちろん、あちこち買うことができない純正パーツもあるけれども……。

そんな中に飛び込んできたのが、そのAE86を美しく再生するレストアと、チューニングの技術を使って、現行の86をも超える「楽しい」クルマを目指そうというビッグプロジェクト!そして車両製作の旗を振るのはなんと「GAZOO」!クルマのカスタマイズを専門に扱うショップと一緒に「楽しい一台」を作るという。もちろん、サーキット専用車ではなく、公道が走れる仕様だとか。なんて楽しそうな企画…これを聞きつけて取材しない手はないと、AE86と同い年・36歳加茂が見届けようと現場に向かったのでした。

30年の時を埋めるKMS

とはいえ、いきなりAE86をガチャガチャいじっても86を超えられるわけもない。86はボディとサスペンションまわりの設計によるハンドリングは、ハッキリ言って「傑作」と言えるレベルにあると、オーナーだからという贔屓目なしでも加茂は思っている(中古の86から86後期の新車に乗り換えたほどである)。

そこで登場するのがKMS(コシミズ・モータースポーツ)だ。AE86乗りなら知らない人はいないんじゃないかと言うほどのAE86専門店である。輿水好則代表はAE86を愛し、今でも通勤もAE86。レースもAE86。いつもAE86というホンモノのAE86好きである。

コシミズ・モータースポーツ 代表の輿水好則氏 まさにAE86の“神様”
コシミズ・モータースポーツ 代表の輿水好則氏 まさにAE86の“神様”

輿水さんには、加茂もかれこれ15年近くお世話になっている。
自分のAE86のエンジンも今や希少なKMS AE92後期コンプリート仕様だ。輿水さんの凄さは満足しないこと。もうこれ以上のAE86はないでしょ、という領域までオリジナルサスペンションを煮詰めても、しばらくするとまた違う仕様を開発している。その歩みを止めないことで、AE86はいつの日も進化し続けている。進化を止めないから、老いるどころかAE86は新たなステップへと突入していっている。

つまりは30年の月日を埋めて、86を超えるようなAE86も可能かもしれない。まさに今回のプロジェクトにうってつけのプロショップだ!ここが開発の現場となり、夢のAE86開発が進められる。

まずはボディのレストアと補強から

今回の壮大なプロジェクト、ベース車両は昭和61年式のレビン3ドア。
これもグッドコンディションの車体だったが、究極のAE86を目指すにあたり、まずはボディから徹底的に手を入れなければ始まらない。

すべての部品を外し、サビを落とし、サビ止め処理をする。
今回のベースは程度が良く大きな板金はなさそうだが、AE86の時代は防錆鋼板でなく錆びやすいので、入念な処理が必要。全バラにしたボディを専用の治具に固定し、徹底的なレストレーションが行われた。

  • まずは全てのパーツは外し、ボディだけに
    まずは全てのパーツは外し、ボディだけに
  • ベース車両の昭和61年式レビン、程度は上々
    ベース車両の昭和61年式レビン、程度は上々

そして「楽しい」クルマにするためには、やはり補強も必要。下処理がされたボディ全体にスポット溶接を追加して剛性強化を目指すようだ。
手法はボディチューニングではよく知られた、ノーマルボディのスポット溶接の間に溶接箇所を追加していく、というもの。ただし、その跡も綺麗に処理してから、サビ止めして塗装をしていくのがKMSのこだわりだ。言葉にしてしまうと簡単だが、一つ一つの作業は全て職人によるこだわりの手作業。とてつもない手間がかけられている。作業後は追加したスポットの跡がわからないくらいのツルツル美ボディ。新車のホワイトボディを超えるような仕上がりはため息が出るほど。まさに『逸品』だ。

こうした「良いものが作りたい」という想いのこもった仕事は、人の手による仕上げを超えるものはないのだろう。積み重なった想いが、徹底的に品質を追い求めた「作品」といえるレベルで形になっていく。

  • スポット跡が目立たない、まさに職人の仕事
    スポット跡が目立たない、まさに職人の仕事
  • 下回りも美しい仕上げ
    下回りも美しい仕上げ

しかし、こうした「職人」はクルマをカスタマイズする文化が途絶えてしまうと、共に途絶えてしまう。クルマと共に成長した日本。こうした文化・職人さんは何としても残さなければならない…取材をしていてそんな事を考えてしまうのは、自身がクルマ文化にどっぷりな人生を送り、かつ、クルマを所有する人が減っている事実をひしひしと感じているからかもしれない。
今回、中古車を仕上げるというプロジェクトの背景にはそんな想いもあるのだろうか…。

輿水さんによると走りを楽しむ事を見据えて、外装はオーバーフェンダーを作成し多少ワイドトレッドにするという。また、組み合わせるタイヤもある程度太くなる予定。他の外装パーツも今回のプロジェクトに合わせたスペシャル品が組み合わされる予定だという(各種パーツについては次回お届けします!)。

目指すは究極の公道仕様AE86

これから足回り、エンジンと進行していくプロジェクト。現時点でざっとわかっているだけでも、進化し続けるKMSオリジナルサスペンションキットを組み合わせつつ、純正品が欠品しているブレーキはHONDA CIVIC系の片押しキャリパー(ムダに大きなキャリパーはバネ下重量の増加にもなるし、前後バランス適正化の問題もあるので)でノーマルを超える制動力を持たせた足回り。

エンジンもハイカム+ハイコンプ仕様で、これまでに多数制作してきたKMSならではのグループA+(プラス)仕様。しかもあえてのキャブ仕様!普段KMSではキャブレターを使用しないが、あえて官能的なレーシングキャブレターを合わせ、86を超える気持ちよさを加えようという狙いとの事。そして何よりもエアコンも効いて、ナンバーも取得。公道を普通に走る事ができる一台になるという。

楽しく走れて、フィーリングもバッチリ、しかも快適に走れる?なんて贅沢なクルマなんだ…。これもカスタマイズカーだからたどり着ける境地なのか。

  • ブレーキはシビックから流用される
    ブレーキはシビックから流用される
  • 燃料タンクすらもこの仕上がり!
    燃料タンクすらもこの仕上がり!

本当に面白いクルマとは?GAZOOと輿水さんによる妥協なき一台。
開発を追いかける自分自身が、どんなクルマが出来上がるのか?ワクワクしながらも取材を続けたいと思います。
今後も定期的に情報をお伝えします、次回もお楽しみに!

執筆:加茂 新

[ガズー編集部]

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