【モータースポーツ大百科】SUPER GT(前編)
トヨタ、日産、ホンダの3大メーカーがしのぎを削り、日本でもっとも人気の高いレースとされるSUPER GT。その前身である全日本GT選手権(JGTC)が始まったのは1993年のことだ。くしくも、前年の1992年には一時グループCカーで隆盛を誇った全日本スポーツプロトタイプカー選手権(JSPC)が終えんを迎えている。したがって、事の経緯はともかくとして、JSPCに代わる新たなシリーズを創設する機運が国内レース界で高まっていたのは事実だろう。
もっとも、JSPCが終わったからといって新たなシリーズを立ち上げるのは容易なことではない。事実、1993年3月に富士スピードウェイで開催されたJGTCの初戦には25台が参戦したものの、うち16台は富士で開催されていたJSSというレースシリーズにエントリーしていた車両で、8台はアメリカのIMSAというスポーツカーレースシリーズのレギュレーションに準じたマシン(イベント名も「IMSA GTチャレンジ」だった)。JGTC用に開発されたのは影山正彦の乗るスカイラインGT-R 1台だけというありさまだった。
しかも、この年はシリーズを通じてもGTマシンは3台しか出場しなかったばかりか、予定された9戦のうち6戦は何らかの理由により中止されるという、惨たんたる状況だった。
翌年からは、フェラーリF40やポルシェ962CをJGTC用に改造したマシンなどが出場。シリーズは徐々ににぎわい始めていく。それでも、1995年くらいまでは「さまざまなカテゴリーのマシンの寄せ集め」といった印象が拭えなかった。当然、マシンの戦闘力はさまざまで、それらが拮抗(きっこう)したレースを繰り広げるようにするためには何らかの措置が必要だった。これが、JGTCひいてはSUPER GTの特徴のひとつとされる“性能調整”と呼ばれるものが導入されるきっかけとなった。すなわち、車両が持つ本来のパフォーマンスを勘案して、車重やエンジンのエアリストリクターなどを主催者が個々に設定することで、特定のマシンだけが突出して速い状況となるのを防いだのである。
このシリーズでもうひとつ特徴的だったのは、ウェイトハンデ制の導入だろう。これは過去の成績に応じて追加のバラストを搭載させるもので、特定の車両が勝ち続けるのを防ぐ役割があった。
性能調整もウェイトハンデ制も、いまではSUPER GTを特徴付ける規則として幅広く知られているが、同様の考え方がほかのレースシリーズになかったわけではない。例えば、ウェイトハンデ制はJGTCよりも早くにドイツ・ツーリングカー選手権で導入されていた。もっとも、性能調整とウェイトハンデを組み合わせることで、シリーズを盛り上げようと積極的に努力したという面では、日本のGTシリーズに大きな功績があったといえる。
JGTCならびにSUPER GTで特徴的なもうひとつのポイントは2クラス制を導入していることにある。こちらもルマン24時間などの耐久レースでは採用例があったが、わが国のGTシリーズでは「とにかく多くのエントリーをかき集めるため」に実施されたという側面も否定できない。もっとも、これが後のGT500とGT300という2クラス制に発展。エントリー台数の増加と、「レース中にGT500車両がGT300車両をかき分けながら走る」というSUPER GTならではの魅力を生み出すことにつながっていったのは興味深い事実である。
IMSAを始めとする海外レースで活躍するマシンを集めてスタートしたJGTCは、1995年にトヨタ・スープラが、そして96年にホンダNSXが本格参戦。日産を含めた国内3メーカーによってGT500クラスは占められるようになり、現在のSUPER GTに近い構図が誕生することとなった。
(文=大谷達也)
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[ガズ―編集部]
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