【車のエンブレムに込められた思いをたどる】切り抜き文字 ~古くから用いられるベーシックな手法~
自動車の黎明(れいめい)期に多く見られたのが、切り抜き文字で構成されたエンブレムである。例えば、自動車の大衆化に貢献した1908年に販売されたベストセラーモデルT型フォードでは、フォードの切り抜き文字(表面研磨)エンブレムがオプション販売されていた。
こうした加工がしやすい黄銅板の切り抜き文字だけでなく、ローヤルスター(ベルギー)などのように、鋳造により製作されたものもある。鋳造のエンブレムは、より立体的なデザインとなり、質感も高い。
今ではその名残が、各モデルの車名やグレードを示すものとして見られる。現代の車名などを示すエンブレムは、ボディーに直接取り付けられ、メッキ加工などが施されているほか、ステッカー式のものも数多く採用されている。
- FORD
- フォード(年代不詳・アメリカ)
ブルーオーバルと呼ばれる、青い楕円(だえん)の中にFordの筆記体が描かれているエンブレムが有名なフォードだが、20世紀の初頭は、黒地に白抜き文字の“FORD MOTOR CO.”のエンブレムからスタートした。
その後「Ford」の文字だけの切り抜き型を経て、1907年に楕円マークが導入されたが、車両に初めて装着されたのは、1928年のA型からだった。
「Ford」の文字は同社の最初の設計士C.ハロルド・ウィリスが描いたものとされており、外周の楕円は、幅と高さが8対3の完全な楕円形となっている。
ちなみに、フォード創業100周年にあたる2003年からは、センティニアル・オーバルに変更されている。
- Ford Model T
- フォードT型(1908年・アメリカ)
一説によれば、1908年の販売開始から1927年までほとんどカタチを変えることなく、約1500万台が生産されたというフォードのT型。日本では「T型フォード」の愛称で親しまれている。
黎明期に、高価だった自動車の大衆化を図り、誰もが手に入れることのできる価格で販売したT型の功績は大きい。自動車としてのT型のみならず、流れ作業式の生産方法や、部品の均一化など、現代では当たり前となっている大量生産の礎を作り上げたと言っても過言ではないだろう。
写真はT型の生みの親である、ヘンリー・フォード。2013年には彼の生誕150周年を祝うイベントが、本国アメリカで開催された。
(写真:フォード)
- BUICK
- ビュイック(1910年・アメリカ)
1903年にアメリカ・ミシガン州に設立された、現存する自動車メーカーでは最も歴史あるブランドのひとつとして数えられている。
社名は同社を設立したイギリス系アメリカ人、デイヴィッド・ダンバー・ビュイックから取られたが、わずか1年後にジェームズ・ホワイティングによって買収され、ビュイックの経営は後のゼネラルモーターズの創設者、ウィリアム・C・デュラントが行うこととなった。
設立当時のエンブレムは、地球をモチーフにしたものだったが、筆記体のロゴや写真の切り抜き文字、青字に白文字のデザインなどを経て、1937年に盾をモチーフにしたデザインを採用。
1970年代にはワシをモチーフにしたエンブレムになった時期もあったが、現在は1959年の3つの盾が斜めに並ぶデザインをベースにした立体的なエンブレムを採用している。
- Buick Wildcat II
- ビュイック・ワイルドキャットII(1954年・アメリカ)
アメリカでは、GMにおいてキャデラックに次ぐ高級車ブランドとして長い歴史を持つ。
日本にも正規導入されていたが、現在は中国をメインマーケットとして独自のラインナップを展開している。クラシカルなデザインイメージを持つビュイックだが、過去には先進的なデザインを行うブランドという一面もあった。
1950年代には未来志向の表れとして、いくつかのコンセプトカーも発表。Y-Job(1938年)や、グラスファイバーで軽量化とデザインの自由度を図ったワイルドキャットII(1954年)などが有名である。
(写真:ゼネラルモーターズ)
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- JOWETT
- ジョウェット(1906年・イギリス)
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- VELIE
- ヴェリエ(1909年・アメリカ)
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- LIBERTY
- リバティー(1916年・アメリカ)
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- ROYAL STAR
- ロイヤル・スター(1904年・ベルギー)
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- PICCARD-PICTET
- ピカール・ピクテ(1906年・スイス)
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- PANARD
- パナール(年代不詳・フランス)
【資料提供】
トヨタ博物館 (http://www.toyota.co.jp/Museum/)
2019年4月17日(水)、トヨタ博物館に「クルマ文化資料室」がオープン。
今回ご紹介した、車のエンブレム(カーバッジ)の現物(一部展示していない場合もございます)が展示されています。
クルマ文化資料室 (https://www.toyota.co.jp/Museum/exhibitions/data/showroom/index.html)
[ガズー編集部]
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