『90と150』2台のプラドに乗って感じた進化と味
私の愛車は1996年に購入し、初めて、パリ・ダカールラリーに参戦した『ランドクルーザー70(HZJ73V)』と、2015年に購入した現行モデルの『ランドクルーザープラド(GDJ150W)』の2台。
『ランドクルーザー70』は幌仕様にして乗っていましたが、かねてより元のFRPトップに戻そうと考えていたところ、オークションサイトに程度のいいFRPトップが出品されていたので落札し、現在知人の修理工場で装着してもらいながら、思い切ってオールペイントもお願いしました。
そのとき代車に貸していただいたのが、『ランドクルーザープラド(RZJ95W)』。現在乗っているプラドの2世代前、20年以上前のモデルになります。ここ2カ月ほど2台のプラドに乗っていますが、やはり乗り比べてみると2世代で各部が変わり、より快適なプラドになっています。
今回はこの2台のプラドを比較しながら、もっといいクルマづくりが具体的にどのように進んでいるのか感じたことを報告します。
40系から生まれた70系からワゴンとして派生したプラド
ランドクルーザーを広く世に知らしめたのは40系。そこから1967年にワゴンとして55系が誕生。バンは1984年に70系として引き継がれました。ワゴンは55系から、60系、80系、100系そして現行の200系とモデルチェンジしていきました。
そして70系から1985年にさらにワゴンタイプが派生し、1990年にモデルチェンジとともに『ランドクルーザープラド』の名前がつきました。80年代中盤から、日産・サファリ、テラノ、イスズ・ビッグホーンそして三菱パジェロなど、バンやピックアップから派生したワゴンタイプの4WD車がラインナップされ、時代はバブル真っ只中で空前のRVブームが生まれました。
夏はキャンプ、冬はスキーとアウトドアには欠かせないクルマとして大人気となり、ヘビーデューティーではないライトデューティーな4WD車が、日本はもちろん、海外でも支持を得ます。
そして1996年にプラドは90系にモデルチェンジしました。70系とはまったく異なる曲線を基調としたスタイリング、上質なインテリア、そして何より今まで1本の車軸に左右輪が繋がる車軸懸架式だったものが、フロントはダブルウィッシュボーン式独立懸架式になったり、4WD方式がパートタイムからフルタイムに一新され、悪路走破性、信頼性を高めながら乗用車としての基本性能を高めたモデルになりました。
ネーミング的には70系からですが、個人的にはこの90系が現在のプラドの原点と思うほど、ランドクルーザーシリーズのなかでワゴンとして革新的に進化したと思っています。
取り回しは変わらず、サイズは少し大きくなった
スタイリングで最も変わっているのはヘッドランプとテールランプの位置が上がっていることです。フロントマスクについてはトヨタの統一デザインのキーンルックに準じていますが、ランドクルーザーはできるだけ高い位置にランプ類を装着したい理由があります。
それは、オフロードで泥跳ねしたときにできるだけ高い位置のほうが汚れにくいこと。また渡河でも水に浸かる確率を減らせます。岩などにフロントバンパーをぶつけてもランプまで壊れる確率が減ります。
リヤについてもオフロードで巻き上げる砂塵を考えれば、できるだけ高い位置にあったほうが後続車の視認性はよくなります。デザインはもちろんですが、ランドクルーザーは機能的に各部品が配置されています。
- 『90プラド』。この時代はオーバーフェンダーが多く採用された
- 『150プラド』。シンプルなスタイリング
- ヘッドランプの位置が上部になった
- 『150プラド』がワイド&ローになった
サイズ的には表の通り、『90プラド』と比較して『150プラド』は、大きくなっていますが、全高のみ30mm(室内高25mm)低くなっています。ただ運転席に乗ってみてもその差は一切感じず、逆に室内幅が105mmも広がっているので、このゆとりが空間をより広く感じさせてくれています。
全高が低くできれば重心も下げられ、前進時の空気抵抗も低くでき、横風の影響も軽減されます。
横から見て比較すると、ガラスが上下に対して短くなり、その分ドアが大きく見えます。オフロードでの不意の横転など横からの衝撃から乗員をしっかり守る安全性を高めています。
そして乗ろうとドアを開け、閉めるときのスムーズな動き、閉まるときの音が、とても上質。ランドクルーザーシリーズで、プラドが上質なワゴンであることを体感する瞬間です。
- 上/アナログ的な『90プラド』。 下/スイッチ類が使いやすくレイアウトされた『150プラド』。
同じフルタイム4WDでも走りの差は歴然
『90プラド』は直列4気筒2,693ccガソリンエンジン(3RZ-FE)、『150プラド』は直列4気筒2,754ccディーゼルターボエンジン(1GD-FTV)で、一概に比較できませんが、ドライビングで一番の違いを感じるのは、回頭性です。
『90プラド』はいわゆる四駆のフロントアンダーを常時感じます。またステアリングが重く感じられます。ただ90年代に乗ったときには、それがどのメーカーも当然だったので気になりませんでしたが。『150プラド』は前後のトルク配分をコントロールする、トルセンLSD付トランスファーを採用しています。
旋回初期のステアリング応答性がよく、クルマの向きをイメージした方向へスムーズに向けてくれます。またコーナリングで加速していくときは、リヤ寄りに配分してくれるので走りやすいです。
ATですが、『90プラド』が電子制御式4速オートマチック(ECT)に対し、『150プラド』はスーパーインテリジェント6速オートマチック(6Super ECT)と、スムーズな加速感、そして低燃費を両立させる大幅な進化をしています。
- 『90プラド』のリヤガラスはこのように開く
- 『150プラド』のバックドア上部ガラスはこのように開いて、荷物も取り出せる
- 『90プラド』。当時流行った、方位、傾斜、外気温、気圧、高度を表示する「フィールドモニター」
- 『150プラド』。快適温熱シート+シートベンチレーション機能が使うととても快適で、この夏も背中や股に汗かかず爽やか
全体的に静粛性、乗り心地のよさはもちろんすべてにおいて相対的によくなっているのはもちろんですが、歴代のランドクルーザーはどの型式にも、独特な味があり、どの型式に乗ってもそれぞれのよさがあります。
だから私は『150プラド』だけでなく、23年前に買った『ランドクルーザー70』に今も乗り続けています。機会があったら、ぜひみなさんにも68年の歴史を紡いでいる“歴代のランクル”に触れていただきたいです!
- 90系、120系、150系と進化しているプラド。どの型式もそれぞれ味がある
(写真/ テキスト:寺田昌弘)
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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