今年から始まった新たなフォーミュラ「FORMULA REGIONAL JAPANESE CHAMPIONSHIP」を観戦。マシンと若手ドライバーの速さに感動
処暑を迎えても暑さが続く8月下旬。鈴鹿ではSUPER GT ROUND3が開催され、3度もセーフティーカーが入る激しい展開のなか、熱い走りが繰り広げられ、海の向こうのアメリカでは世界3大カーレースのひとつ、INDY500で佐藤琢磨選手が2度目の優勝を果たす快挙などモータースポーツが盛り上がるなか、私はスポーツランドSUGOで開催されたチャンピオンカップレースシリーズに向かいました。今年から新設された「FORMULA REGIONAL JAPANESE CHAMPIONSHIP」(以降FRJ)を観るためです。
童夢が創るシングルシーターカーが美しく、速い
F1を頂点とするフォーミュラカテゴリーは、F2、F3、F4となっています。F2は現在、松下信治選手(26歳)、角田裕毅選手(20歳)、佐藤万璃音選手(21歳)がレギュラードライバーとして将来のF1ドライバーを目指し、世界に挑んでいます。
現在これらのカテゴリーはFIAによって再編が続き、世界各地域の事情を鑑みながら、F3とF4の間に新たにFORMULA REGIONALが誕生しました。FRJは童夢が開発する「F111/3」のワンメイク。シャシーは、従来の F3 に代わるカテゴリーとしてFIAが導入を進めている世界規格(FORMULA REGIONAL certified by FIA)に合わせ開発され、HALO(頭部保護装置)が設置され、コックピットが広くドライビングしやすい印象です。
エンジンはアルファ ロメオ製をアウトテクニカ・モトーリがチューニングした1,750cc直列4気筒インタークーラー付ターボで、公称最大出力は270hp。ギアボックスはSADEV製6 速パドルシフト+機械式 LSDを装備しています。ブレーキはADVICS製4POT対向キャリパーとフローティングタイプのベンチレーテッドディスク。重量は670kg(ドライバー及びバラスト含む最低重量)。
FRJは、このシャシー、エンジンそしてタイヤはダンロップのワンメイクとし、アライメント調整やウイングなど角度調整ぐらいで、ドライバーはイコールコンディションで競えるので白熱したバトルが選手も観客も楽しめます。
- エンジン
- リヤサスペンション
- フロントサスペンション
- コックピット
高橋、古谷、根本。3名の若手ドライバーの走りが熱い
ROUND2となる今回は、8月22日(土)に公式予選と1レース、23日(日)に2レースと合計3レースが行われました。SUPER GTとスケジュールが重なったため参戦チームが減りましたが、注目すべき若手3選手を紹介しましょう。
高橋知己選手(22歳) Super License
いち早くFORMULA REGIONALをアジアで参戦しているSuper Licenseから参戦。8歳からカートレースデビューし、イタリアでも活躍。18歳でFIA-F4デビューし20歳でF3 Asian Championship Certified by FIAを走りシリーズ5位。
今回はすべての予選でトップを獲り、レース4ではポールトゥーウィンで優勝。レース5ではスタートで根本選手に抜かれ2位に。最終レース6で再び優勝と速さをみせました。高橋選手は「気づいたら4輪に転向して初優勝でした。やはり何よりうれしいです。これからどこまで行けるかわかりませんが、まだまだやるべきことがたくさんあるので、ひとつずつチャンスをつかんでいきたいです」と自身初となる4輪初優勝を喜んでいました。
古谷悠河選手(20歳)TOM'S YOUTH
SUPER GTや全日本スーパーフォーミュラ選手権などで活躍するTOM'Sが、さらなる若手選手の発掘、育成を目指しユースチームを発足し、FIA-F4とこのFRJに古谷選手を抜擢。
古谷選手は10歳のとき、父と一緒に行ったカナダでカートと出会い、以来カートレースに参戦しJAFジュニアカート選手権、JAF地方カート選手権、全日本カート選手権と着実にステップアップし優秀な成績をおさめ、今シーズンからフォーミュラに挑戦。スーパー耐久(ST-5クラス)にも参戦予定です。
古谷選手は「今シーズンから4輪に転向し、普通自動車免許も去年取ったばかりで(笑)まだ4輪の感覚を掴んでいる最中です。これからもフォーミュラで上を目指していきます。なので1戦ずつ大切に経験を積んでいきたいです」レース4で2位、レース5では3選手のなかでベストラップを出すなど、レースごとに速くなっているのが観ていてわかる期待のルーキーです。
根本悠生選手(23歳)ZAP SPEED
5歳からカートに乗り、各シーリーズチャンピオンを獲り、16歳でフォーミュラトヨタ・レーシングスクール(FTRS)主席認定。2013年からフォーミュラデビュー。2016年にはイタリアのFIA-F4に挑戦するために渡欧し、チームで欠員が出たイタリアGT選手権で初のGTマシンに乗り、2戦目で優勝する快挙。以来、ランボルギーニに乗り、海外で挑戦する日本人ドライバーとして活躍しています。
根本選手は「FRJのマシンは、コックピットも広く、とてもドライビングしやすいですね。F4と比較すればサイズが大きくジェントルなレスポンスですが、これはF2も大型化してきているので、フォーミュラで上のカテゴリーを目指すドライバーにとってとてもいいマシンだと思います。私はランボルギーニの世界で世界一のドライバーを目指しています。そのためにはどんなマシンにも乗り、もっと強くなりたいです」今回は久しぶりのフォーミュラということもありレース4で3位でしたが、レース5ではスタートダッシュを決め優勝と、速いだけでなく強いドライバーであることを証明。これからも楽しみなドライバーです。
これからの彼らの挑戦に期待
テレビやネットでのレース観戦は、今までF1やSUPER GTが中心で、正直フォーミュラはあまり観ていませんでしたが、こうして生でFRJを観戦したら、これがとてもおもしろかったです。童夢が創るFRJのマシンは、きっと彼ら童(若手)の夢を叶えてくれる、そんなFIAの未来予想図をいち早く取り入れたスーパーマシン。FRJとともに彼らのこれからの活躍が楽しみです。
文・写真:寺田 昌弘
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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