「マルチ除雪」に「パワー除雪」って? 高速道路の雪氷対策について聞いてみた

北海道では10月に「高速道路雪氷対策出陣式」が行われ、冬本番に向けて、高速道路の除雪作業準備が万全に整えられています。でも、どういうタイミングで除雪に入るの? 具体的な作業の方法は? 謎の多い冬の高速道路について、東日本高速道路株式会社(NEXCO東日本)北海道支社 道路事業部 長濱誠さん、竹内泰士さん、吉田寿幸さん、広報課 安井希世彦さんにお話を伺いました。

■作業タイミングは徹底した情報管理を元に

――何㎝積もったら除雪作業に出動、といった基準はありますか?

よく同様の質問されるのですが、実は、そういう積雪量を見てという基準はありません。
道路管制センターをはじめ、道内に6か所ある管理事務所で、気象情報を確認し雪雲の動きを読み、各所の情報をもとにした集中管理を24時間365日行ない、出動を決定します。道路や周辺の天候の状況・情報はパトロールする巡回車、道路沿いに設置している気象状況監視カメラなどでリアルタイムに収集しています。

NEXCO東日本「白いハイウェイ2016」より抜粋
NEXCO東日本「白いハイウェイ2016」より抜粋

除雪の出動とひと口に言っても、段階があります。雪の降りはじめは温度低下によって路面が凍るのを防ぐために凍結防止剤を散布します。

NEXCO東日本「白いハイウェイ2016」より抜粋
NEXCO東日本「白いハイウェイ2016」より抜粋

本格的な降りになってきてからは路面上に降り積もった雪を、除雪車3台+標識車1台で除雪します。大抵、2つのインターチェンジを往復1~2時間ほどかけて作業していきます。

■全国でも札幌だけのマルチ除雪

――一般道路や家庭での除雪作業ではみられない、珍しい作業方法などありますか?

マルチ除雪という特殊な体制での除雪作業があります。ジャンクションや高架道路で構成されている札幌南インターチェンジから札幌西インターチェンジの間で行われます。

NEXCO東日本「白いハイウェイ2016」より抜粋
NEXCO東日本「白いハイウェイ2016」より抜粋

通常の除雪車3台+標識車1台にさらにプラス4台の除雪車が後追いしていきます。出口まで来ると1台ずつ下りて除雪をし、別の入口から上がりながら除雪する……と順番に繰り返します。この方法をとる前は、少ない台数で出入口を下りたり上がったりで、その度に体制を整え直さねばならず、一部区間の除雪が出来ない、時間がかかりすぎるといった事態になっていました。試行錯誤の上で、現在の手法にたどり着き、時間短縮になっています。おそらく、この除雪方法は全国でもここだけだと思います。

NEXCO東日本「白いハイウェイ2016」より抜粋
NEXCO東日本「白いハイウェイ2016」より抜粋

また、パワー除雪という除雪方法もあります。こちらは、長時間強く雪が降り続ける状況の時に行うものです。通常除雪の体制に、もう1台除雪車を先行させ、路肩に積もった雪を除雪して効率アップをはかる方法です。

■降雪量の違いが事故原因の違いにもつながる

――北海道と雪の少ない地方とで、雪への対策で大きな違いはありますか。

やはり他の地方と比べて圧倒的に降雪量が多いので、交通の確保のため除雪方法に、先ほど申し上げたような工夫を凝らしているところでしょうか。札幌から千歳恵庭ジャンクション間や、札幌から帯広を結ぶ道東道等、生活路線として重要な区間が多いので、できるだけ止めてしまわないように努力しています。

――北海道と雪の少ない地方では、雪道の事故でも違いはあるのでしょうか。

雪の少ない地域では冬タイヤ・チェーンの用意がなかったり、雪道自体に慣れていなかったりするため、事故が発生しやすくなります。逆に北海道では、皆さんスタッドレスタイヤを装着していますが、慣れでスピードを出す方も多い。そのためか、春~秋に比べて高速道路での事故発生件数が約1.8倍になります。道路の状況は日々違いますので、油断せず細心の注意を払って運転してほしいですね。

そして、いずれの地域でも気をつけていただきたいのは、車体に乗ったままの雪です。そのまま走行すると後ろ側に飛び散って後続車にぶつかるため、事故のもとになります。運転前に車体の雪は必ず取り除いてください。

■冬の高速道路を安全に走るために

――冬の高速道路、特に除雪時の注意点を教えてください。

除雪作業中のクルマを追い越ししてはいけないルールになっています。そのため一定時間ごとに除雪作業を中断し、待避所に除雪車両を寄せて後続車を優先させています。
ただ、除雪作業をするということは、その先の道路で視界が悪くなっていたり、雪で走りにくい状況になっているということです。高速道路全体のスムーズな走行のための作業をしているわけですので、ご理解とご協力をお願いします。
最新の交通規制の情報は、ハイウェイテレホン、ドライブトラフィック(ドラとら)などで確認できます。特に冬場はご確認の上、お出かけいただくことをおすすめします。

ドライブトラフィック(ドラとら)

ドライブトラフィック(ドラとら) ウェブサイトより
ドライブトラフィック(ドラとら) ウェブサイトより

事故が起きないよう、できるかぎり通行止めにしないよう。雪の多い北海道で、時として生活路線ともなる高速道路を安心・安全・快適に走れる状態に保つことは、ひとつの地域貢献と私たちは考えています。

――ありがとうございました。

■時間に余裕をもって冬のドライブを

除雪作業中でノロノロ運転……となると、心穏やかでないこともありますが、その作業があるからこそ、高速道路を安心・安全に走れるということ。時間に余裕をもって冬のドライブに出かけたいものです。

(取材・文:わたなべひろみ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]

<取材協力>
東日本高速道路株式会社(NEXCO東日本)北海道支社