坂道の強い味方! 温泉利用もある路面融雪の仕組み
雪道を走る上でも、最も気をつかうのが坂道でしょう。路面が滑りやすく、スピードをあまり出せない雪の坂道は、慣れないドライバーにとっては怖いもの。そんなドライバーを安心させてくれるのが、雪や氷を融かして、路面状況をよりよくしてくれるロードヒーティングが入っている道路です。
このロードヒーティングはどのような仕組みで融雪しているのでしょうか。札幌市建設局雪対策室計画課 課長 茂木秀則さんに伺いました。
市内548カ所で安全を守る
――そもそもロードヒーティングはどういう仕組みで雪を溶かしているのでしょうか?
「融雪の方法としては、ガス温水方式と電気発熱線方式、ある地域限定の方式と3種類あります。
ガス温水方式とは、ガス熱源機で不凍液を温め、循環ポンプで舗装の中にあるパイプ内に温めた不凍液を送り込んで融雪するシステムです。現在、札幌市内で稼働中の548カ所のうち、50カ所がこの方式になっています。
電気発熱線方式は、コントローラが気象条件と路面状況により必要な路面温度を計算し、きめ細かにON/OFF信号を出し、舗装内の電熱線ユニットを発熱させるシステムです。こちらは495カ所に設置されています」
――地域限定の方式とはどういうものですか?
「温泉水利用方式です。ポンプで温泉水をくみ上げ、その温泉水を直接パイプに流して融雪しているほか、一部では、くみ上げた温泉水の熱を利用し、熱交換で不凍液を温めて融雪している区間もあります」
- 温泉街の案内板にもロードヒーティングの情報が
「札幌市南区にある定山渓温泉の温泉街ロードヒーティングは、1973年に全国で初めて実施されたものなのですよ」
- ロードヒーティングのあるなしで雪の量の差が一目瞭然
「いずれのシステムも、降ってくる雪を融かす場合、濡れた路面を凍らせないようにする場合、舗装体をある程度温めて雪が降ってきた時に即対応するためと、3パターンの運転タイミングがあります。そして、それぞれ外気温度、路面状況、水分などの要素によって、いつ動かすか決めています」
状況を敏感に察知して運転開始
――それらの条件はどのように判断されるのですか?
「ロードヒーティング集中監視システムによりコントロールされています。
札幌市下水道河川局庁舎内にある中央監視制御装置に、車道上に設置される路面温度センサー・水分センサー、マルチセンサーなどの情報が集まり、運転の判断が下されて、歩道上の制御盤に伝わって運転が開始されるという流れになっています」
- 札幌市ウェブサイトより
「路面温度センサー・水分センサーは、ロードヒーティング運転中の雪の融け残りがないよう、日当たりや水勾配を考慮して路面条件の悪い位置に設置しています。場所によっては路面上に見えているところもありますよ。
マルチセンサーというのは市内および市外近郊に47カ所あります。気温、風向、風速、降雪強度、積雪深を観測していまして、気象状況を逐一、中央監視制御装置に送っています。
そして1)路面温度センサー、2)水分センサー、3)外気温度、4)降雪センサー、5)降雪予測情報、6)風速の6要素の情報の細かい組み合わせにより、運転の判断が下されているのです」
- 6要素の細かい組み合わせで運転の可否の判断が下される 札幌市ウェブサイトより
スタッドレスタイヤや凍結防止剤の性能向上などもあり、一部区間によっては、運転停止をしているところも増えているとのことですが、まだまだ坂道の強い味方であるロードヒーティング。ただし、気象条件によっては完全に融けきってはいない場所もあります。あせらず、ゆっくり冬道運転をしたいものです。
<取材協力>
札幌市建設局土木部雪対策室計画課
(取材・文・写真:わたなべひろみ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
[ガズー編集部]
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