自動でハイビーム切り替えも。急激に進化しているヘッドライトの最新事情

「早めにヘッドライトを点灯しましょう」や「夜はハイビーム走行が基本です」など、近年は安全意識の高まりからヘッドライトの使い方に対する啓蒙活動が盛んですね。早めにヘッドライトを点けるのは薄暮時(はくぼ時=日中よりわずかに暗くなった状態)で周囲に自分の存在をアピールして接触事故を防ぐためですし、ハイビーム走行が基本というのは遠くまで明るくして前方が良く見えるようにするためです(ただし市街地や周囲にクルマがいる状況ではロービームで走りましょう)。

ところで、最近は点灯マナーだけでなくヘッドライト自体も大きく進化しているのをご存知でしょうか。

明るい光を求めてLEDへ。さらにその先も

電灯や懐中電灯など、ここ数年で身の回りの光源は急速にLED化されましたよね。実は自動車のライトも同じ、21世紀に入るまではほとんどのクルマは「ハロゲン」と呼ばれる、今となってはあまり明るくない電球を使っていました。しかし1990年代後半になってより明るい光を求めて「HID(キセノン)」と呼ばれるライトが登場。その後LEDライトが実用化され、今では幅広くLEDライトが使われています。

LEDライトの特徴は明るくて消費電力が少ないこと。またいくつもの発光部を組み合わせて使うので、後述するグレアフリーハイビームにも適しています。そんなLEDヘッドライトがはじめて市販車に採用されたのはレクサスLS600hで2007年のこと。当時は「部品として左右のヘッドライトを購入すると軽自動車の車体が半分買える」といわれるほど高価でしたが、今では軽自動車にも標準採用されるほどコストが安くなりました。

そして現在、市販車で最も先を行っているライトといえるのが「レーザーライト」。BMWやアウディの上級モデルに搭載されていて「LEDに対して2倍の照射距離、5倍の明るさ」というからすごいですね。

BMWの最新ライト。レーザーライト(右)の照射距離はなんとLEDの2倍に相当する600m! 高速走行時しか点灯しません。
BMWの最新ライト。レーザーライト(右)の照射距離はなんとLEDの2倍に相当する600m! 高速走行時しか点灯しません。

ハイビームを自動切換え。オートマチックハイビーム

夜間、郊外を走る際(前を走るクルマがいるときは除く)はハイビーム走行が基本です。「だけど対向車が来たらいちいちロービームに切り替えないといけないから面倒」とハイビームにせずロービームのまま走っている人も多いようです。そんな人にぜひ知ってほしいのが「オートマチックハイビーム」や「オートハイビーム」と呼ばれる仕掛け。なんとわずらわしいロービームとハイビームの切り替えを自動でやってくれるのです。

ポイントはカメラ(最近は自動ブレーキ用のカメラを利用していることが多い)の活用。カメラで常に前方をチェックし、「この状況はハイビーム」「今はロービームにしたほうがいい」とクルマ自身が判断して切り替えてくれるんですよ。

ちなみに切り替えは、「ハイビームにできる状況ではハイビームにする」というより「ハイビームを基本に周囲に応じてロービームにする」と考えるのが正解。つまりは警察などがPRしている「ハイビーム走行領域の拡大」につながる安全技術というわけです。

この機構も現在販売されている新車の多くに採用されているので、新車購入の際はチェックしてみましょう。

迷惑にならない部分は常にハイビーム? グレアフリーハイビームが凄い

安全面から考えると夜間の運転における理想は、常にハイビームで走ることです。しかしそれでは前を走るクルマや対向車に迷惑になってしまうから、周囲のクルマに眩しさを与えないように必要に応じてロービームと使い分けているのが現実と言えるでしょう。

しかし、最新のヘッドライトはその概念をも変えつつあります。「グレアフリーハイビーム」や「アダプティブヘッドライト」と呼ばれるアイテムで、「グレアフリー」とは「眩しさを防ぐ」という意味。つまり眩しくないハイビームです。

その原理は、ハイビームが照らす範囲をいくつかに分け、前を走るクルマや対向車を照らす部分だけは消灯するというもの。たとえば夜の高速道路を走ってみると、前を走るクルマの方向だけはロービームなのに、それ以外はハイビームと同じように広い範囲を明るくしてくれるからとにかく視界が広い! いままで体験したことのない、なんだか不思議な気分になります。これも視界を広げて夜の運転を安全にしようというアイデアなのです。上級車を中心に、市販車への採用もかなり増えています。

ヘッドライトは21世紀に入ってから急速に進化していて、特にここ10年ほどの進化は驚くほど。いずれも根底にあるのは、夜でも広い視界を得ることによる安全で快適なクルマ社会の実現です。

そしてヘッドライトは安全アイテム。周囲を明るくするだけではなく自分の存在を目立たせる役割もあるので、日没が迫ったら暗くなくても周りのクルマよりもはやく点灯することを心がけましょう。

ところで日本ではもうすぐ、クルマのヘッドライトに関して大きな変化が起きます。それは2020年からのオートライト義務化。世界をリードする意欲的な基準が決まっているのですが、それはまた今度紹介しましょう。

(文:工藤貴宏 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]

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