誰でも始められる! 初心者向けモータースポーツ入門
クルマの魅力のひとつに“スピード”があります。初めてクルマを運転したとき、アクセルを踏んでみると自分の思った以上のスピードが出たことでビックリしつつも、これまでにない体験にドキドキしたという記憶は、誰にでもあるはず。
また、意のままにクルマを操ることも楽しさのひとつです。まるでクルマと自分が一心同体になったように走る瞬間の楽しさは、クルマの大きな魅力となります。
そんなクルマを走らせる楽しみをピュアな形で実現できるのがモータースポーツです。モータースポーツと聞けば、F1やWRC(世界ラリー選手権)、スーパーGTを思い出し、「モータースポーツ=観戦するもの」と考えるかもしれません。しかし、モータースポーツは誰もが行えるスポーツです。もちろん、お金という意味ではハードルが高いスポーツではあります。しかし、体力という点では、男性も女性も大人も子どもも平等。四肢が不自由なクルマ椅子を使う方でも楽しむことができます。
それに実際に自らハンドルを握ってモータースポーツを体験してみないとわからないこともたくさんあります。自分でボールを投げたりバットを振ったりしたことのない人よりも、野球経験者の方がプロ野球選手のプレーのすごさを、より理解できるでしょう。同じように自身がモータースポーツを体験していた方が、よりモータースポーツ観戦が楽しくなります。
- ▲最も手軽かつ、本格的にモータースポーツを楽しめるのがレーシングカートだ。
モータースポーツ入門にぴったりなのがレーシングカート
では、初心者ができるモータースポーツには何があるのでしょうか。スポーツ走行可能な愛車があればジムカーナやサーキット練習走行会に参加するという方法があります。初心者向けのラリーも存在します。日本のモータースポーツを統括しているのはJAFなので、JAFモータースポーツというサイトをチェックすると、ライセンスやさまざまな公式戦の案内を見ることができます。
また、“愛車がない”といった場合や“より本格的にやってみたい”という場合は、レーシングカートがおすすめです。遊園地にあるゴーカートをより本格的にしたものといえばイメージしやすいことでしょう。ただし、レーシングカートはモータースポーツとしては、相当に本格的です。たとえばF1のドライバーのほとんどはレーシングカート出身者。フォーミュラーと呼ばれるカテゴリーのプロドライバーは、若いころからレーシングカートで鍛えた人が大多数を占めています。
そんな本格的なモータースポーツであるレーシングカートですが、間口は意外に広く用意されています。全国各地にレーシングカート用のコースが存在しており、そこに行けば、レンタルでレーシングカートが楽しめるのです。
また、自分でレーシングカートを買うことも可能です。100万円の予算があれば悠々、エントリーカテゴリーのレーシングカートのオーナーになれます。量産車を使うレースやラリーと比べると、エントリーの費用の少なさがレーシングカートの大きな魅力です。また、個人での所有ではなく、仲間数名とチームを組んでマシンを共同保有すれば、より費用負担は小さくなります。複数のドライバーで走る耐久レースであれば、共同保有のチームでも参加しやすいことでしょう。
- ▲車両は新車で購入しても100万円以内から可能。チームで所有すればより身近になる。
レーシングカートに必要な装備とは
それでは、レーシングカートを楽しもうというときに用意したい装備は何かを紹介しましょう。
まず、第一段階として「レーシングカートはどんなものだろう?」と体験しようというのであれば、何も購入する必要はありません。長袖、長ズボンで運動靴をはいていけばOK。他はレンタルで済ますことができます。
何度も通うというのであれば、ヘルメットとグローブを購入しましょう。ヘルメットはオートバイ用と4輪用とありますが、レーシングカートであればどちらでもかまいません。ただし、ヘルメットには安全の規格があり、レースにも使ってもいいというJAFの公認を得たものとそうでないものがあります。JAF公認、もしくはスネルSAという競技用のものを選んでください。もしも、レーシングカートではない4輪のレースにも参加しようというのであれば、4輪用のヘルメットを選ばないといけません。4輪のレースでは通称ハンスと呼ばれる首を守る器具を使うため、それに対応したヘルメットが必要となるからです。ちなみに汗が目に入らないようにフェイスマスクも忘れずに。
グローブとシューズは、カート用とされるものを選んでください。4輪のレース用は、耐火素材でできているので高額になりますが、カート用は耐火素材でないということもあり、もう少し割安で販売されています。専用のグローブとシューズを使うことで、運転操作は格段とやりやすくなります。次のステップはレーシングスーツです。これもグローブとシューズ同様にレーシングカート用を選んでください。JAF公認やFIA公認とあるものが安心です。
レギュレーションで必ず装着しなければならないわけではありませんが、プロテクターはぜひとも使いましょう。レーシングカートは、身体をさらして走るため、意外とケガが多いのです。そのため、あばら骨などをカバーするプロテクターや、ムチウチを予防するネックガードなどで弱い部分をカバーするのです。
ヘルメット、グローブ、シューズ、レーシングスーツ、それにプロテクターまで用意できれば、ドライバー側は準備OKです。どこかのチームに合流して、いつでもレーシングカートのレースに参加可能です。ヘルメットは5万円~。シューズとグローブは、それぞれ1万円~。レーシングスーツは3万円~というのが相場観です。全部揃えると10万円以上してしまいますが、安全のためには必須となります。モータースポーツのエントリーフィーと考えてください。
- ▲ヘルメット、グローブ、レーシングスーツだけでなくプロテクターとネックガードを装着したところ。
とはいえ、最初からすぐに揃える必要はありません。カートの特別なライセンスも、最初は必要ありません。何度か試して、気に入って続けられるようであれば、少しずつ購入していけばいいもの。少しずつカート場に通ったり、友人を誘ってやっているうちに、気の合う仲間ができたり、どこかのチームと知り合いになれるものです。時間をかけて、ゆっくりと楽しんでみると良いと思います。
(文:鈴木ケンイチ 写真:大島 康広/澤田 和久 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
[ガズー編集部]
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