ヘイキ・コバライネンVS新井敏弘の対決も!? ハイラックスで戦われた「ジャパンラリークロス・JRXエキシビジョンマッチ」

11月21日(水)、福島県二本松市のエビスサーキットにて、「ジャパンラリークロス・JRXエキシビジョンマッチ」が開催されました。まだ日本では馴染みのないこの「ラリークロス」という競技、ラリーという名前がついていますし、海外で開催されている大会には世界のトップクラスのラリーストも数多く参戦していますが、WRC(世界ラリー選手権)を筆頭に世界各地で開催されている、いわゆる「ラリー」とはまったく別のものです。競技は、ダートと舗装路が混在するクローズドコースで行われ、1台1台がタイムアタックを行うラリーとは違い、サーキットレースのように混走で競われます。

各カテゴリーのトップドライバーが参戦した「Super Hiluxクラス」

今回、行われたジャパンラリークロス(JRX)は、すでに欧米では人気のあるこの競技の日本開催に向けて2017年より行われているもので、エキシビジョンマッチという形で開催されています。2回目となる今年のエキシビジョンマッチでは、駆動方式による従来のクラスに加え、トヨタテクノクラフト(TRD)が現在、開発しているオフロードレース向けハイラックス「TRD Hilux MSB(Motor Sports Basic)」による「Super Hiluxクラス」が設定されました。

エビスサーキットにずらりと揃ったのが、TRDが現在開発しているオフロードレース向けハイラックス「TRD Hilux MSB(Motor Sports Basic」
エビスサーキットにずらりと揃ったのが、TRDが現在開発しているオフロードレース向けハイラックス「TRD Hilux MSB(Motor Sports Basic」

このSuper Hiluxクラスには、日本を代表するラリースト、新井敏弘選手、ドリフト界からは熊久保信重選手、末永直登選手、今シーズンをもってD1グランプリの引退を表明した野村謙選手、全日本ダートトライアル選手権からは谷田川敏幸選手、宝田ケンシロー選手、そして元F1ドライバーにしてスーパーGT参戦中のヘイキ・コバライネン選手……と、多彩なカテゴリーのトップドライバーが参戦し、異種交流戦の様相を見せます。

ラリー、ダートトライアル、ドリフト、スーパーGT、さまざまなカテゴリーの選手がエビスサーキットに集まった
ラリー、ダートトライアル、ドリフト、スーパーGT、さまざまなカテゴリーの選手がエビスサーキットに集まった
背の高いピックアップトラックだが、選手の順応性の早さに驚く
背の高いピックアップトラックだが、選手の順応性の早さに驚く

各カテゴリーのトップドライバーとはいえ、乗り慣れていない背の高いピックアップトラックでの戦いにてこずるかと思いきや、どの選手も高い順応性を見せて、そのすごさを見せつけます。フリープラクティス、予選を経て、エキシビジョンマッチの決勝レースを制したのは、なんとヘイキ・コバライネン選手でした。ラリーの世界で2度の世界選手権制覇を成し遂げている新井選手を打ち破ってのトップフィニッシュ。期せずして起きた“レーシングカードライバーVSラリードライバー”のトップ争いに観戦者も大いに湧きました。

練習走行を行うとすぐさまマシン特性を掴みチームスタッフに伝えるヘイキ・コバライネン選手
練習走行を行うとすぐさまマシン特性を掴みチームスタッフに伝えるヘイキ・コバライネン選手

アジアクロスカントリーラリーのワークスマシンが走る「Super Hilux AXCRクラス」

トヨタ・ハイラックスによるもうひとつのカテゴリーが「Super Hilux AXCRクラス」です。こちらは毎年、タイ王国を起点に東南アジア諸国で開催されている「アジアクロスカントリーラリー(ACXR)」に実戦投入されているマシンによる対決です。

ちなみにTRDが開発しているTRD Hilux MSBは、2.4Lディーゼルターボを搭載する日本向けハイラックスがベースとなるのに対し、こちらのマシンは全車タイで発売されている2.8L ディーゼルターボ搭載車がベースで、ボディ形状も日本向けと同じダブルキャブや日本では未発売のスマートキャブと呼ばれる2ドアタイプなどさまざまです。

TRDは2017年AXCR参戦車と2018年AXCR参戦車をエビスに持ち込んだ
TRDは2017年AXCR参戦車と2018年AXCR参戦車をエビスに持ち込んだ
エンジンはタイ仕様の2.8Lディーゼルターボ
エンジンはタイ仕様の2.8Lディーゼルターボ

また、アメリカで開催されている「パイクスピークヒルクライム」への参戦でもおなじみの塙郁夫選手は、レクサス用V6ガソリンエンジンを搭載するAXCR仕様で参戦していました。

塙選手のハイラックスはスマートキャブと呼ばれる2ドアタイプのキャビン。荷台も短い。
塙選手のハイラックスはスマートキャブと呼ばれる2ドアタイプのキャビン。荷台も短い。
レクサス用V6ガソリンエンジンを搭載したハイラックスの甲高いエンジン音とトラックとは思えないスピードはスゴイ迫力
レクサス用V6ガソリンエンジンを搭載したハイラックスの甲高いエンジン音とトラックとは思えないスピードはスゴイ迫力

一方、パーツ開発車両としてベースモデルの素性を大切にした「TEAM JAOS」のAXCR参戦車両は極めてノーマルに近い仕様で、AXCRへの参戦経験も豊富なJAOSの社員ドライバー、能戸知徳選手がドライブします。AXCRで優勝経験を持つ唯一の日本人ドライバー、新堀忠光選手と日本を代表するラリードライバー奴田原文雄選手はTRDワークスマシンをドライブ。

改造の度合いによるポテンシャルも、AXCRの参戦クラスも違うマシンが集結し、東南アジアで戦った選手同士が日本の舞台で再び集結するという、こちらもエキジビジョンマッチらしい賑やかな顔ぶれでした。

TEAM JAOSはパーツ開発を担ったノーマルに近いAXCR参戦車で出場。ドライバーはJAOS社員の能戸知徳選手
TEAM JAOSはパーツ開発を担ったノーマルに近いAXCR参戦車で出場。ドライバーはJAOS社員の能戸知徳選手

結果は、圧倒的なパフォーマンスを誇る塙選手のV6マシンが甲高いエンジン音を響かせて勝利しますが、一方で新堀選手がドライブするTRDワークスマシンが、それに肉薄するようなラップを叩き出しながら追い回す姿も印象的でした。ちなみにこのTRDのマシンは、ディーゼルターボ+AT。ハイラックスのモータースポーツにおけるポテンシャルの高さを、新堀選手が意地で証明したレースでもありました。なお新堀選手は、今回のピックアップトラックによるレースのほか、ポラリスでのレースにも参戦するなど、日本人には馴染みのないダートレースの経験も豊富な選手です。

圧倒的早さを誇る塙選手のハイラックスを全力で追うTRDハイラックスの新堀選手
圧倒的早さを誇る塙選手のハイラックスを全力で追うTRDハイラックスの新堀選手
Super Hilux AXCRクラスの決勝レース。塙選手(一番右)を追うため荷台のスペアタイヤを降ろし軽い状態で臨む3台のハイラックス。マシンのバランスが崩れようがドライビングでカバーし追撃しようとする選手の意気込みが見える
Super Hilux AXCRクラスの決勝レース。塙選手(一番右)を追うため荷台のスペアタイヤを降ろし軽い状態で臨む3台のハイラックス。マシンのバランスが崩れようがドライビングでカバーし追撃しようとする選手の意気込みが見える

日本になかったモータースポーツの新しい魅力がある

日本ではまだまだ珍しいピックアップトラックでの競技ですが、レーシングカーと比べ背が高く、大柄なクルマが全力で吠えるようなエンジン音を響かせて高速で競い合う姿は、コースサイドで見ていても迫力満点です。コースにはダートと舗装路の併走区間があってドライバーが選択できるようになっていたり、「ジョーカーレーン」と呼ばれるラップタイムが落ちる迂回路があり、フィニッシュまでに任意の周回で1回通過しなければならないルールがあったりと、ラリークロスはゲーム性も高く見ていて楽しく、ピックアップが競い合う迫力と相まって、今まで日本では見ることのできなかった新しい魅力を備えていました。

コースの一部にダートと舗装路の併走区間が設けられ選手が任意に選択できる
コースの一部にダートと舗装路の併走区間が設けられ選手が任意に選択できる
外側の大きく迂回するダートコースがジョーカーレーン。レース中、一度はここを通過しなければならないが何周目に通るかの駆け引きもおもしろい
外側の大きく迂回するダートコースがジョーカーレーン。レース中、一度はここを通過しなければならないが何周目に通るかの駆け引きもおもしろい
JRXエキシビジョンマッチ「Super Hilux AXCRクラス」、優勝:塙郁夫選手、2位:新堀忠光選手、3位:奴田原文雄選手
JRXエキシビジョンマッチ「Super Hilux AXCRクラス」、優勝:塙郁夫選手、2位:新堀忠光選手、3位:奴田原文雄選手
JRXエキシビジョンマッチ「Super Hiluxクラス」、優勝:ヘイキ・コバライネン選手、2位:新井敏弘選手、3位:谷田川敏幸選手
JRXエキシビジョンマッチ「Super Hiluxクラス」、優勝:ヘイキ・コバライネン選手、2位:新井敏弘選手、3位:谷田川敏幸選手

もともとエンターテイメント性の高さも大きな魅力のラリークロスですが、ピックアップトラックが加わったことにより一層、おもしろさの幅が出たようです。第二回目の開催となったジャパンラリークロス・JRXエキシビジョンマッチは、今後シリーズ戦の開催も目指しているとのこと。ぜひ、今後も発展し続けて、新しいカテゴリーのレースとして日本でも定着してほしいものです。

(取材・文・写真:高橋学 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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