「アジアクロスカントリーラリー2018」参戦に向けテスト走行を重ねる「TEAM JAOS」のトヨタ ハイラックス

新興国市場をターゲットとしたトヨタの世界戦略車プロジェクト「IMV(Innovative International Multipurpose Vehicle)プロジェクト」の一翼を担う現行ハイラックス。かつては日本でも人気を博したものの2004年をもって我が国での販売を終了してまったモデルですが、2017年に再び国内販売が開始されたことは記憶に新しいところです。

さて、そんなハイラックスが生産されているのは東南アジアのタイ王国。彼の地では、ピックアップトラックは荷物を運ぶ仕事用のクルマとしてはもちろん、スポーティーなクルマとして若者にも大変人気のあるカテゴリーで、モータースポーツ車両としても用いられています。

日本のパーツメーカーJAOSは2016年より現行のハイラックスをAXCRに投入している(写真はAXCR2016)
日本のパーツメーカーJAOSは2016年より現行のハイラックスをAXCRに投入している(写真はAXCR2016)

毎年8月、タイを起点に東南アジアの周辺諸国で開催されている「アジアクロスカントリーラリー(以下 AXCR)」も、ハイラックスが活躍するモータースポーツのひとつ。2015年に発売された現行ハイラックスは、翌2016年より現地タイの「TRD」チームや日本のパーツメーカー「JAOS」から参戦を果たしています。

ここ数年、このラリーではタイで生産されている、いすゞのD-MAXというピックアップトラックの速さが際立ち、2016、2017年と参戦し続けている現行ハイラックスはその牙城を崩せず、昨年現地のTRDチームが獲得した2位が最高位です。

マシンの熟成も進んだ今年は3年目の挑戦となり、「今年こそは頂点へ!」と多くのハイラックスの参戦が予定されています。日本の「TEAM JAOS」もハイラックスを投入して今年で3年目。7月中旬の船積みに向けて、日本国内でのテストを重ね熟成を重ねています。

ライバルは同じ日本メーカーによるタイ生産のピックアップトラック「いすゞD-MAX」
ライバルは同じ日本メーカーによるタイ生産のピックアップトラック「いすゞD-MAX」

パーツメーカーも参加してのTEAM JAOSの開発テスト

今回は、6月に長野県で行われたTEAM JAOSの開発テストにおじゃましました。テスト会場には、マシンの製作を行った「群馬トヨタ」やシートを供給する「トヨタ紡織」、サスペンションの「KYB」など、参戦マシンに関わる多くのパーツメーカーのスタッフが現地入りしていました。

テストコースに持ち込まれたKYBのサポートトラック
テストコースに持ち込まれたKYBのサポートトラック

ちなみに群馬トヨタはレーシングファクトリーではなく、我々にも身近なトヨタのディーラーです。ハイラックスもここ「トヨタ店」の扱いですね。戦いの地、タイに赴くメカニックも日ごろはお店で整備や車検を行うディーラーメカニックで、過酷なラリーのサービスは初めてという方も今回参戦します。

通常の使用ではどんなに荒い運転をしようとも起こりえないトラブルがラリーでは起こりますし、現代のクルマのサスペンション形式を考えれば、ハイラックスのリアサスペンションに採用されているリーフスプリングの交換も、めったに行わない作業でしょう。おそらく現地では、日常の業務では考えられないような過酷な作業を強いられることが、今から想像できてしまいます。

リーフスプリングの交換など若いディーラーメカニックにとっては経験の少ない作業も多い
リーフスプリングの交換など若いディーラーメカニックにとっては経験の少ない作業も多い

「ニュルブルクリンク24時間レース」をはじめ、TOYOTA GAZOO Racingのさまざまなレースシーンでシートが採用されているトヨタ紡織からもテストコースに3名のスタッフが赴き、シート位置やクッション材の調整を行なっていました。ドライバーの細かな注文にも応じ、現地でクッション材の加工まで手作業で行うその様子に、モータースポーツにおけるシートの重要性を改めて感じます。

テスト中にもドライバーのリクエストに応えシートの調整を行うトヨタ紡織のスタッフ
テスト中にもドライバーのリクエストに応えシートの調整を行うトヨタ紡織のスタッフ

ちなみにTEAM JAOSのドライバーを務める能戸智徳選手は、株式会社ジャオスの開発部に籍を置くいわゆる社員ドライバーです。能戸選手は入社のはるか前、10代のころからさまざまなオフロードレースを経験し、AXCRへの参戦経験も豊富です。

AXCR参戦2年目となるコ・ドライバーの田中一弘選手は、株式会社KYBの技術統括部に在籍する社員です。入社以来、さまざまなショックアブソーバーの開発を担ってきた技術畑の田中選手は、昨年より東南アジアのラフロードの洗礼を自らの体で感じながら参戦車両のショックアブソーバー開発に取り組むこととなるわけですが、テスト会場にはKYBのトラックを持ち込み、そこで自ら即座に調整に取り組むこともあるという徹底ぶりに、開発者の意気込みを感じます。

TEAM JAOSのドライバー 能戸智徳選手(右)とコ・ドライバー 田中一弘選手(左)
TEAM JAOSのドライバー 能戸智徳選手(右)とコ・ドライバー 田中一弘選手(左)
田中選手自らサポートトラックでショックアブソーバーのセッティング変更を行うこともある
田中選手自らサポートトラックでショックアブソーバーのセッティング変更を行うこともある

そのほか、テスト会場ではクラッチメーカー、アルミホイールメーカーのスタッフなど、多くの関係者が見守る中、走行テストが粛々と重ねられていました。昔は、モータースポーツは「走る実験室」と言われ、その過酷な環境が製品の性能アップにとって重要な役割を担っていたものです。今回のテストを見る限り、その役割は今でも何ら変わらないように感じました。

今は量産車に求められる高い性能要件を満たす技術が、モータースポーツ車両にフィードバックされることも多いとのことですが、いずれにしても自動車やアフターパーツの進化、そしてその開発や整備に携わる人にとっても、ラリーという過酷な非日常への挑戦はとても有意義なものとなるでしょう。

アジアクロスカントリー2018は8月12日からスタート

今年のアジアクロスカントリーラリーは、タイのビーチリゾート・パタヤをスタートし、国境を超えて隣国カンボジアの首都プノンペンでゴールする、約2200kmのコースが予定されています。ハイラックスは、王者いすゞD-MAXから王座を奪えるのか? 「TEAM JAOS」はどんな走りを見せるのか? 8月12日のスタートが今から待ち遠しいものです。

(取材・文・写真:高橋学 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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