【海外サーキット現地レポ】MotoGP最終戦の地!かつてはWTCCも開催されていた「バレンシアサーキット」
モータースポーツの本場と言えば、ヨーロッパ。多くのレースカテゴリーが生み出され、現在でも高い人気を誇っています。そんな、モータースポーツが文化ともなっているヨーロッパのサーキットは、いったいどのようなものなのでしょうか? TVやインターネットのレース中継では見ることができない、サーキットの姿をご紹介します。今回行ってきたのは、「バレンシアサーキット」。スペイン、バレンシア州のチェステにあるサーキットです。
バレンシアサーキットの正式名称は、「Circuit de la Comunitat Valenciana Ricardo Tormo」。スペイン語なので読み方が分かりにくいと思いますが、「シルクイート・デ・ラ・コムニタート・バレンシアーナ・リカルド・トルモ」と読むそうです。ちなみにスペインの人はサーキットの事を、「シルクイート」と言うのですが、私は「サーキット」が世界の共通語だと思っていたので、何のことを言っているのか理解するのに少し時間がかかってしまいました。また、サーキット名の最後に付く「リカルド・トルモ」と言うのは、1998年に白血病で亡くなった地元出身のライダー、リカルド・トルモ氏の栄誉を称えて名付けられたそうです。
世界中でも数少ないスタジアム型サーキット
バレンシアサーキットの最大の特徴は、観客席がぐるりとコースを囲むスタジアム型になっていること。そのため、どのスタンド席からもコース全体が見渡せるのでレース展開が把握でき、観戦には最高のロケーションです。そのため、シリーズ戦で行われるカテゴリーでは、特に人気の1戦となることがほとんどで、2002年以降はMotoGPの最終戦の地として定着し、大きな人気を博しています。
コーナー数がやたらと多い左回りの難解コース
前述の通り、現地観戦にしてレースの全貌が把握できるという、レース観戦には最適なバレンシアサーキットですが、スタジアム型になっているということは観戦スタンドに囲まれた面積の中にコースが収められているということです。そのため、左9右5の合計14コーナーがある、切り返しの多いレイアウトとなっています。
- バレンシアサーキット コース図
また、ホームストレート以外にはストレートと呼べるほどの長い直線はなく、ハードブレーキングポイントが少ない比較的平均速度の低い、テクニカルで難しいコースとなっています。ちなみにバレンシアサーキットの外周は、日本を代表するサーキットのひとつ、「ツインリンクもてぎ」のスーパースピードウェイとほぼ同じで、もてぎのオーバルの中にコースが収められていると考えるとイメージしやすいかもしれません。
実際に歩いてみると、かなり忙しいコース
バレンシアサーキットの全長は4.051km。路面のカントなどが少なく比較的フラットなコースで、かつてはWTCC(世界ツーリングカー選手権)なども行われていました。
- ピットロード
- ヒットロードから1コーナーへの合流
もっともスピードが乗るホームストレートから続く1コーナーは、直角に近い急な角度となっている難しいレイアウトで、コースアウトするマシンが多々見られる難関ポイントです。
- 1コーナーから2コーナー
- 2コーナーから3コーナー
1コーナーから3コーナーまでは左コーナーが続きますが、次の4コーナー5コーナーは右コーナー。急な切り返しで、温まり切っていないタイヤに苦戦するポイントです。
- 4コーナーから5コーナー
- 5コーナーイン側の激しいタイヤ痕
- 5コーナーから6コーナー
そんな数少ない右コーナーを乗り越えたあとは、緩いのぼり勾配の急な左カーブ。ただ歩いているだけでも、切り返しばかりしている気持ちになるほど忙しいレイアウトとなっています。
- 6コーナーから7コーナー
- 7コーナー
- 8コーナー
そして6コーナーから7コーナーにかけての短いストレートを抜けると、下りながら回り込む8コーナーが出現! この一連のコーナーはスピードが乗せやすく、パッシングポイントのひとつとなっています。
- 8コーナーから9・10コーナーからなるS字
- 10コーナーイン側の激しいタイヤ痕
- 10コーナーから11コーナー
6コーナーから8コーナーまでは比較的軽快にテンポよく走れるレイアウトが続きますが、問題はこのサーキット唯一のS字となる9コーナーから10コーナー。S字の急な切り返しと、バレンシアサーキットでは数少ない右コーナーで、冷えたタイヤに苦戦するポイントです。
- 11コーナーから12コーナー
11コーナーのヘアピンを超えると短めのストレートとなりますが、そのストレートエンドとなる12コーナーのハードブレーキングがその後のテンポにはかなり重要で、後半区間のタイムに直結するポイントとなります。
- 12コーナーから13コーナー
- 14コーナー
- 14コーナーからホームストレート
- ホームストレート
そして、のぼり区間と下り区間からなる13コーナー、14コーナーを越えるとホームストレートが見えてきます。この最終コーナーとなる14コーナーは、先の見えないブラインドコーナーとなっているので、ブレーキングポイントが難しく、ホームストレートで車速を乗せるための最後の難関とも言えるポイントです。
ゴルフ場のようなサーキット
ここまでサーキットの特長についてご紹介してきましたが、私は現地でさらに驚いたことがありました。それは、私たちメディアやチーム関係者、コースオフィシャルなどがいるサービスロードの美しい風景です。基本的にどこのサーキットでも、サービスロードはキチンと舗装されていて、クルマや人が通るのにまったく問題はありません。しかし、コースサイドのガードレール脇や、あまり人が通らない部分は草が生い茂り、無法地帯になっているところがほとんどで、美しさとは無縁の印象です。
しかし、バレンシアサーキットのサービスロードは、人やクルマが通る道が整備されているだけでなく通路以外の細部まで、芝生エリアなどもきちんと整えられていました。
- サービスロードの芝生に設置されたスプリンクラー
- サービスロードの芝生に自動で散水するスプリンクラー
単に芝がキレイに手入れされているだけでなく、芝エリアにはスプリンクラーが設置されていて、定期的に自動で散水をはじめるなど、その光景はまるでゴルフ場のようです。
バレンシアサーキット産レモン?
コースサイドで写真の撮影ポイントを探していると、さらに驚くべき発見がありました。それはところどころに植えられた植物で、花が散りかけて実がなっているな~と思ってよく見ると、実はレモンの木でした。
- コースサイドに植えられたレモンの木
- コースサイドになっていたレモンの実
しかも、それは偶然どこかから種が飛んできて成長したわけではなく、規則的に配置されていて、明らかに人の手で育てられています。
- コースサイドに植えられたレモンの苗木
さらには、11コーナーの中央部分に農園のようなものまで作られていて、かなりの量のレモンの収穫が期待できるレベルです。
- 11コーナー中央に作られた農園
いったいどのような目的でレモンが植えられているのかは分かりませんでしたが、激しいレースが展開するコースの内側で、まさかレモンの栽培が行われているなんて、誰も想像しなかったと思います。
- サービスロードをたびたび通るトラクター
観客席からすべてが見わたせるバレンシアサーキットは、テクニカルで難しいコースレイアウトによる激しいレースと農園のようなのどかな風景が同時に楽しめる、なんだか不思議なサーキットでした。バレンシアサーキット産のレモンは、いったいどこに行くのか気になるところですが、かなりの排気ガスを吸っているはずなので、食べてみたいような食べたくないような複雑な気持ちになります。もし、バレンシアサーキットでのレースをライブ観戦する際は、ぜひ周りの風景にも注目してみると、おもしろいかもしれません。
(取材・文・写真:先川知香 編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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