未来はもっとドライブが楽しくなる「自動運転・モビリティサービスで変わる未来懇談会」で見た2030年のクルマ社会

2019年6月19日、「自動運転・モビリティサービスで変わる未来懇談会」のプレス報告会が東京都内にて開催されました。

座長はテレビでも有名な岸博幸さん! ユーザー目線でクルマの未来を考える

座長は、テレビ出演も多い慶応義塾大学大学院の教授でもある岸博幸さん。他のメンバーは三菱総研の杉浦孝明さん、元ホンダで自動車技術会フェローの今井武さん、弁護士の緒方延泰さん、東京大学大学院教授の加藤浩徳さん、カーライフ・エッセイストの吉田由美さんという面々です。

「自動運転・モビリティサービスに関して、現状の政府の取り組みの問題点が、明確に二つあると思っています。一つめは冷静な視点から「自動運転が将来どうなるのか?」という像が政府から提出されていないこと。二つめの問題は、自動車産業的な供給目線についての議論ばかりが進んでしまっているということ。この懇談会は、そういった問題点を補完するという観点から、地に足の着いた議論をしたいと思います」と岸さんは設立の理由を説明します。

メディア報告会には多くの業界関係者が集まっていた
メディア報告会には多くの業界関係者が集まっていた

最近の自動運転の話題といえば、確かに自動車メーカーや政府など、自動運転を供給・普及させたい側からの目線ばかりとなっています。そのため、バラ色の未来が語られがちで、自動運転を実際に使うユーザー目線での課題や問題点が洗い出されていないというのです。そこで、交通事情には詳しいものの、自動車メーカーや政府の人間ではないメンバーで、リアルな未来のユーザーの生活の変化を考えてみようというのが、この懇談会なのです。

2030年に実用化される自動運転は、どこまでのものか?

この懇談会がターゲットとした未来は、約10年後となる2030年。そこで実現されるであろう自動運転技術の予測は、下記のようなものでした。

・高速道路などの自動車専用道路は、全自動に近い高度な自動運転が実現
・一般道の自動運転化は、それほどのものではなく、人間の運転が前提

・交通事故を予防する安全機能が充実
・低速で運行される自動運転バスが普及

・小型モビリティや乗用車のシェアリングが充実

高速道路はより快適に!? 事故防止機能もアップした10年後は遠方ドライブが今以上に楽しくなるかも!
高速道路はより快適に!? 事故防止機能もアップした10年後は遠方ドライブが今以上に楽しくなるかも!

10年後では、自宅の前まで無人の自動運転のクルマが迎えに来て、そのまま目的地まで行くというのは、まだ難しいだろうという見立てです。

そのかわり、自動運転のバスや小型モビリティやシェアリングが普及しているため、誰もが移動しやすい環境に。また、高速道路では高度な自動化が可能なうえ、事故防止機能も充実しているため、遠距離へ出かけることの心理的ハードルも低くなっているだろうとも言います。

自動運転技術の普及で、社会はどのように変化するのか?

運転免許のない人や、普段あまり運転をしないドライバーにとっても、今よりもクルマでの移動がしやすくなるというのが2030年の交通事情の予想です。その結果、社会はどのように変化するのでしょうか? この部分が、この懇談会の議論のメインテーマとなります。

ポイント① 地方再生が自動運転技術で実現!?  「ニューエコノミックエリアの形成」
そこで予測されたのが「ニューエコノミックエリアの形成」です。自動運転技術により乗用車が利用しやすくなり、その結果、乗用車の利用が増大。それを受けた結果、乗用車を利用しやすい地域で、職住近接型都市の増大が可能となるのだそうです。

自動車利用の拡大で、地方都市がより発達するかも!?
自動車利用の拡大で、地方都市がより発達するかも!?

そうした都市を「ニューエコノミックエリア」と呼びます。説明では、東京近郊の八王子や立川などの都市が例として挙げられていました。これにより、日本の地方都市が、大都市のベッドタウンではなく、衣食住を賄える自立した都市になる可能性が見えてきました。いわゆる地方再生の実現です。

ポイント② 観光地もより活性化! 「メガ観光都市の増大」
次の予想としては「メガ観光都市の増大」です。高速道路での高度な自動化が実現すれば、クルマでの遠出が、より楽にスムーズになります。その結果、観光地に訪れる人が増えることになります。そして年間1000万人規模の人が訪れるメガ観光都市が、現在よりも増えるというのです。これも地方の経済には大きなメリットになります。

京都のように人が多く集まる観光地が増える可能性も。
京都のように人が多く集まる観光地が増える可能性も。

ポイント③ これら予測を実現させるためには、準備が必要!
とはいえ、こうした予測は、あくまでも準備が必要です。ニューエコノミックエリアを実現させるための産業や企業の積極的な誘致の努力が地方自治体には求められます。同じようにメガ観光地になるためには、それを受け入れるための環境を整備する必要があります。高速道路は通行量が増えるので、それに応じた道路環境の見直しもしなければなりません。増大するシェアリングに対応する環境の整備も求められます。

一方で、これまでの地方の都市のありかたは、少子高齢化に備えたコンパクトシティなどが提案されていました。しかし、そうしたこれまでの議論には、自動運転・モビリティサービスの進化・充実が加味されていませんでした。

秋に議論をまとめ政策として提案

「自動運転・モビリティサービスで変わる未来懇談会」は、さらに数回の懇談を行い、さらなる予測を煮詰め、最終的には政府への政策提言としてまとめたいと考えているそうです。日程的には、今年の秋に懇談のまとめを発表。その後に、政府へアプローチしたいと言います。政府次第では、懇談会が継続・発展の可能性もあるでしょう。

自動運転技術の進化と普及、新たなモビリティサービスの誕生と利用拡大は、私たちの生活に大きな影響を及ぼすことでしょう。それを肯定的に、上手に利用するためには、今から準備が必要というのはもっともな話です。どのような提言がまとまるのかが楽しみと言えるでしょう。

(取材・文:鈴木ケンイチ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

<関連リンク>
「自動運転・モビリティサービスで変わる未来懇談会」
https://www.autonomous-car-council.jp/

[ガズー編集部]

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