クルマの色にも流行があった! 気になる地域別2019年のカラートレンドは?

今から10数年前の2006年、『プラダを着た悪魔』という映画が公開されました。ファッション雑誌の鬼のような編集長(メリル・ストリープ)の元で奮闘するアシスタント(アン・ハサウェイ)の姿を描いた映画です。筆者はそこで、とあるシーンが非常に印象に残りました。

それは色違いの2つのベルトを真剣に吟味する編集長に対して、ファッションに興味のないアシスタントは「どちらも同じに思える」と失笑してしまうシーンです。

編集長は、そのとき彼女が着ていた青いセーターを示し、「そのセーターはただの青ではなくてセルリアンという色。そのセルリアンはデザイナーのコレクションに登場してからブームになったの。そして、そのトレンドは、最後には安いカジュアル服にも反映され、あなたがバーゲンで買う」といった説明をします。つまり、トレンドが生まれ、世に広がるという現実があり、そのためにわずかな色の違いを真剣に吟味していることを教えるのです。

コンセプトカーの参考にも! 世界的化学メーカーBASFのカラー予測

そんなファッション業界と同じように、実はクルマのボディカラーにもトレンドがあります。新型モデルのプロモーションに利用されるコンセプトカーのボディカラーも、時代の雰囲気とは無関係ではいられないからです。

気になるクルマのトレンドカラーを予測・発表を行っているのが、ドイツを本拠地とする世界的な化学メーカーであるBASFです。BASFは、自動車用の塗料の開発・生産も行っており、その一環として、毎年のように自動車のカラートレンド予測を発表しています。

ここで発表されたカラートレンド予測は、BASFの世界各地のチームが3~5年後を見据えて、社会的な変化や技術的なトレンドなどを幅広く研究・分析したもの。この予測は、自動車メーカーの量産車のボディカラー選定や、モーターショーのコンセプトカーのキーカラー選定のヒントなどに使われています。

BASFジャパン株式会社 コーティングス事業部カラーデザインセンター アジア・パシフィック チーフデザイナー松原千春さん
BASFジャパン株式会社 コーティングス事業部カラーデザインセンター アジア・パシフィック チーフデザイナー松原千春さん

気になる最新のトレンド予測は……!? まずは全体の傾向をチェック!

BASFが発表した、2019-2020年のトレンド予測のテーマは「ACT/9(アクト・スラッシュ・ナイン)」です。

同社でチーフデザイナーを務める松原さんは、このテーマについて「まったく新しい世界を創造する力強い行動を“ACT(アクト)”、そして、そこまできている新時代の予感を“9”として表現しています」と、説明しています。デジタル技術の進化・発展を土台に、人中心の新しい時代が、もうすぐ到来する。それが“行動”であり、10の手前となる“9”という数字になった、というのです。

ちなみに2018−2019年は、「Keep It Real(現実にしよう)」をテーマに、デジタルで作られた非現実の世界と現実をつなぐカラーが予測されていました。
それを参考に考えられた、来る未来のトレンドカラーはいったいどのような色なのでしょうか?

カラー発表の様子
カラー発表の様子

「カラーは、人を中心として温かみのある色域や意匠、また、豊かな個性や生き生きとした新時代を象徴する自由な発想が求められると予測しています」(松原さん)

BASFが予測する2019-2020の最新カラートレンド
BASFが予測する2019-2020の最新カラートレンド

幅広いカラーチャートは、進化するデジタル化に対する積極的な柔軟な姿勢を表しているのだとか。大きな特徴としては、黄色味のオフトーンや複雑なゴールド味のメタルカラーといった、自動車の色としては珍しい色域が、トレンドに入ってくるのだそうです。

アジアのトレンドは「暖色系」を予測

BASFが導き出す予測は、世界全体の流れだけでなく、地域別のものもあります。

我々が暮らす「アジア太平洋」エリアは「アジア太平洋地域の控えめで親しみやすいカラーパレット」というのが全体的な予測です。

・穏やかで深いシェードを持つ暖色のバランスのとれたカラーパレットをもたらす
・新しい白みがかったメタリックシルバー
・シルキーな無彩色メタリックのように明るく浮遊しているようなカラー
・わずかな干渉効果を持つブルー
・粗い粒子のグレーメタリックや官能的なパープルなどダークで力強い生き生きとした表情豊かな色が現れる

BASFが予測する「アジア太平洋地域」の2019-2020の最新カラートレンド。シルバーが全面に推されている
BASFが予測する「アジア太平洋地域」の2019-2020の最新カラートレンド。シルバーが全面に推されている

筆者が興味深く感じたのは、シルバーが推されている点です。また、従来よりも塗装工程が少なくコストダウン可能なメタリックレッドの提案もありました。

数年後に登場する新型車やマイナーチェンジで使われるイメージカラーに、暖色系や白っぽいシルバーが採用されていれば、「ああ、BASFの予測がヒントになっているのだな」と考えていいでしょう。

ちなみに「欧州・中東・アフリカ地域」の予測は、今までにない、新しい色が人気になるというのです。

・バイオレットメタリックのような珍しいカラーが、より一般的になる可能性がある
・ベージュやゴールドの色域における複雑なメタリックカラー

BASFはこれらの地域を「社会的しきたりが変化しつつあるという非常に前向きな兆候がある」と分析し、人工的な外観が特徴になっていると発表しました。

BASFが予測する「欧州・中東・アフリカ地域」の2019-2020の最新カラートレンド
BASFが予測する「欧州・中東・アフリカ地域」の2019-2020の最新カラートレンド

そして「北米地域」は、色変化するようなカラーなど、性能と目新しさへの期待が大きいとか。

・メタリック効果の全体のテクスチャーが柔らかくなっていく
・機能性と美的感覚の融合が引き続き重視される

と、BASFはデジタル技術の進歩によるライフスタイルの変化に伴ったカラーを予測しました。

全体的な傾向としてメタリック・ソリッドカラーが多く見られ、柔軟性と創造性を重視する消費者の意識を反映していると分析しています。

BASFが予測する「北米地域」の2019-2020の最新カラートレンド
BASFが予測する「北米地域」の2019-2020の最新カラートレンド

過去の予測を振り返れば、思い当たるクルマが続々

BASFのカラートレンドの予測は3~5年後を見据えたものです。では、逆に言えば、3~5年前の予測を振り返ってみれば、予測をもとに現実の新型車に、どのような色が使われたのかがわかります。

たとえば、2014年のBASFのトレンド予測には「アジア太平洋地域は、ブラウンが定着し、温かみのあるカッパー(銅褐色)やグレー系などの情緒的なカラーが人気の傾向」とありました。また、2015年は「バランスのとれた青のバリエーションが出現」、2016年には「中間色のブルーグリーンがトレンド」という予測でした。つまりカッパーとブルー系の人気が予測されていたのです。

そして、つい最近の新型車の色をチェックしてみると、驚くべき事実がわかりました。

今年6月のハイラックスのマイナーチェンジ時のイメージカラーは、ブルー。今年4月にデビューしたRAV4のメインカラーは、薄いブルーグリーンとブルー。

4月にデビューしたばかりのRAV4
4月にデビューしたばかりのRAV4

レクサスNXのマイナーチェンジのイメージカラーはカッパー。昨年暮れにマイナーチェンジしたプリウスはブルーといった配色がなされています。秋のパッソのマイナーチェンジでのイメージカラーはカッパーでした。

昨年の秋にマイナーチェンジしたパッソ
昨年の秋にマイナーチェンジしたパッソ

このように、BASFのトレンド予測を反映するようなカラーの量産車が数多く存在していたのです。

ちなみに2017年に発表されたBASFの予測は「品質感の高いパールホワイトと、強い色調」。昨年、2018年は「表情豊かなグレーとブルー」と発表されています。これから発表されるトレンドカラーのクルマが欲しいなら、パールホワイト、そしてブルーとグレーに注目です。

(取材・文・写真:鈴木ケンイチ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

<関連リンク>
BASF、2019-2020年の自動車のカラートレンド予測を発表 ~積極的に未来を形作る姿勢 ACT/9
https://www.basf.com/jp/ja/media/news-releases/global/2019/06/color-trend-2019.html

[ガズー編集部]

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