コネクテッドの始まりは1990年代だった? カーナビの歴史:その3

自動車業界は今、“CASE(Connected/Autonomous/Shared/Electricの略)”というキーワードで持ちきりです。自動車が誕生して100年が経ち、その情勢は大きく変化する状況にあります。その中で“つながるクルマ”としての役割を果たすのがConnected(コネクテッド)です。

1998年「MONET(モネ)」が登場

実は、1990年代後半あたりから、カーナビはネットワークとの接続を目指してきました。カーナビにも豊富なデータが収録されていますが、データは確実に古くなっていきますし、必要なデータはその状況によって変化します。ネットワークを介してサーバーにある情報を活用すれば、常に新鮮なデータに基づいて利用できるわけで、カーナビは20年以上も前から、そこを目指してトライし続けてきていたのです。

その先駆けとなったのが、トヨタが1998年4月に“ネットワークナビ”としてサービスの提供を開始した「MONET(モネ)」です。通信端末には、デジタル携帯電話(PDA)を使いました。

「MONET(モネ)」のサービスの一例(1998年、筆者撮影)
「MONET(モネ)」のサービスの一例(1998年、筆者撮影)

目的地を設定すると、進路上の交通情報や天気予報が案内され、レストランやお店などを探すときには、NTTの電話帳をベースとしたカテゴリー別のタウンページ情報が使えました。また、メールの送受信にも対応していました。

ホンダや日産もネットワークナビに参入

同じ年の7月、ホンダはインターネットとカーナビを融合させた「インターナビシステム」の情報サービスをスタートさせました。このサービスの最大のポイントは、手元にある携帯電話を使うのではなく、モデムを内蔵した通信キットを利用して実現したことにあります。

日産は1998年9月、有人オペレーターによるテレマティクスサービス「コンパスリンク」のサービスを開始。翌1999年からは、これを無人化した「オートコンパスリンク」を提供するに至ります。

「コンパスリンク」のサービスの一例(1998年、筆者撮影)
「コンパスリンク」のサービスの一例(1998年、筆者撮影)

このように、1998年は相次いでネットワーク型カーナビが、産声を上げた年だったのです。

通信端末を搭載したクルマも登場

その後も“ネットワークナビ”の挑戦は続きます。トヨタは2002年10月、新世代の通信サービス「G-BOOK」を立ち上げ、同時に通信モジュールを内蔵した端末を搭載した新型車「WiLLサイファ」を発売。当時としては高速の「CDMA2000 1x」を使い、最大144kbpsで情報提供を利用できることをウリとしました。

トヨタがWiLLブランドで発売した「WiLLサイファ」(トヨタ自動車)
トヨタがWiLLブランドで発売した「WiLLサイファ」(トヨタ自動車)

また、この年は市販ナビでも、画期的なカーナビが登場しました。パイオニアが世界初の通信機能内蔵型カーナビとして世に送り出した「Air Navi(エアーナビ)」です。

2002年に発売されたパイオニア カロッツェリア「Air Navi」(2002年、筆者撮影)
2002年に発売されたパイオニア カロッツェリア「Air Navi」(2002年、筆者撮影)

通信機能内蔵型カーナビとして誕生し、通信モジュールにはWiLLサイファと同じ「CDMA2000 1x」を採用。交通情報や天気予報といったドライブ情報を受信できるほか、地図データや店舗データまでも最新版に更新できました

“プローブ情報”で交通情報の精度が向上

一方で、ネットワークを介した交通情報サービスも始まりました。ホンダは2002年10月から、自社の純正カーナビ対応サービスとして「インターナビ・プレミアムクラブ」を開始します。

ホンダ「インターナビ・プレミアムクラブ」の画面(2002年、筆者撮影)
ホンダ「インターナビ・プレミアムクラブ」の画面(2002年、筆者撮影)

まず、VICS情報を通信で得るオンデマンド型VICSをスタートさせ、翌2003年には自動車メーカーとして世界で初めて「フローティングカーシステム」を実用化しました。

これは一般に“プローブ情報”と呼ばれる、ユーザーが走行した実績を元に交通情報として反映するもので、当時の広報資料によれば、対象道路はVICSが提供する約8倍にもなる33万km。これによって交通情報の提供範囲が飛躍的に広がったのです。

フローティングカーシステムの概念図(ホンダ技研工業)
フローティングカーシステムの概念図(ホンダ技研工業)

市販ナビがこれに対応するのは少し遅れて、パイオニアが「スマートループ」というサービスを開始する2006年まで待つことになります。しかし、これらの情報は単に交通情報を提供するだけでなく、災害時にも大きな役割を果たすことになります。この情報は、実際にクルマが走行した実績を反映することができるため、災害で通行止めになっている情報も地図上で判別できたのです。

インターネット上で公開しているトヨタの「通れた道マップ」(トヨタ自動車)
インターネット上で公開しているトヨタの「通れた道マップ」(トヨタ自動車)

それを最初に実践したのがホンダで、2007年に発生した新潟中越沖地震発生後に通行データを試験的にインターネット上に公開しました。2011年に発生した東日本大震災では、トヨタやGoogleなども自社で収集した情報をインターネット上に公開し、災害時にプローブ情報が大きな役割を果たすことが証明されたのです。

「5G」通信スタートでカーナビも次世代へ?

CASEが叫ばれる中、カーナビはインフォテイメントシステムの中に組み込まれ、様々な情報サービスの一つのコンテンツとして、その立場を活かすようになってきています。

その中でトヨタは、2018年に新たなサービス「T-Connect」を開始し、発売される新型車にDCM(Data Communication Module)を標準搭載することを決定。緊急時のヘルプネットへの接続も可能にしました。

また、スマートフォンとの連携も進んでいます。アンドロイド端末の場合は「Android Auto」、アップルiOS端末の場合は「Apple CarPlay」です。これによって、スマホのナビ機能や音楽、その他のアプリを車内で利用できるようになりました。

Android Autoに接続したヤリスのディスプレイオーディオ(トヨタ自動車)
Android Autoに接続したヤリスのディスプレイオーディオ(トヨタ自動車)

さらに音声アシスタントにも対応可能となり、スマートスピーカーのように、ドライバーが発する言葉をAIで理解するようにもなっています。

2020年は、次世代通信である「5G」がいよいよサービスインします。当初は提供エリアが一部に限られますが、5Gが持つ超高速、低遅延、大容量といった特徴は、将来の自動運転の実現にもつながるものです。カーナビは今後も、より安心安全なカーライフを楽しめるサービスを目指して、進化を遂げていくことでしょう。

(文:会田肇 写真:会田肇、トヨタ自動車、ホンダ技研 編集:木谷宗義+ノオト)

<関連リンク>
通れた道マップ
https://www.toyota.co.jp/jpn/auto/passable_route/map/

[ガズー編集部]

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