クルマも動物も守る! ロードキルを防ぐための設備

ドライブ中に道路で見かける設備の中に、動物たちのためのものが実は多くあります。野生動物との交通事故であるロードキルを防ぐために道路にはどのような対策が取られているでしょうか。ロードキルを防ぐための設備と心がけたいことなどを紹介します。

野生動物との事故、ロードキルとは?

現在、人間の移動や物資の輸送のための交通網が、日本を含む世界中の至るところに張り巡らされています。道路、鉄道、運河とそれぞれの手段は異なりますが、例えば、それまで野生動物が暮らしていた土地に高速道路を通すと、動物たちの生息地は分断されることとなります。動物たちはエサを探す、繁殖するなど生きるために常に活動しているので、その移動のためにクルマの走る道路を横断し、交通事故が起こるのです。このような野生動物による交通事故をロードキルといいます。

ロードキルは野生動物の生命を奪うばかりでなく、クルマの破損やドライバーのケガ、場合によってはドライバーが死に至る危険もあります。野生動物が道路に入りこむことによる事故を防ぐために行われているのがロードキル対策です。

ロードキル対策・設備はさまざま

ロードキルを防ぐためには、野生動物の特性などを研究したうえでさまざまな対策が取られています。

・オーバーパス
道路の上部に架かり横断することができる歩道橋です。オーバーパスは動物専用のものには砂利を敷き詰めたり、低木などの植物を植えたりと、動物が警戒せずに渡ることができるよう工夫がされています。オーバーパスのほか道路の下を横断するアンダーパスが設けられている場所もあります。

道路の上を渡るオーバーパス
道路の上を渡るオーバーパス

・アニマルパスウェイ
森の間に通る道路を横断して渡される吊り橋状のもので、ワイヤーやメッシュなどで構成されています。主にリスやヤマネ、ヒメネズミなどの樹の上で暮らす動物たちが利用しますが、地域によってはコウモリや昆虫類が通っていることもあるそうです

道路の上部に渡されたワイヤーなどで作られた吊り橋状のものがアニマルパスウェイ
道路の上部に渡されたワイヤーなどで作られた吊り橋状のものがアニマルパスウェイ

・動物侵入防止柵
動物が道路へと侵入するのを防ぐための柵ですが、生息する動物に合わせた形状となっています。跳躍力の高いシカの生息地では2.5メートル高のものを設置。柵を押し引きして揺さぶり破壊してしまうイノシシや、柵の下を掘ってくぐり抜けてしまうアナグマなどの対策には、補強材やネットの材質や形状を工夫しています。また、柵を越えて道路に侵入した動物を誘導して道路の外に出すためのワンウェイゲートが取り付けられているところもあります。

動物たちが飛び越えたりくぐったりできないように工夫されている
動物たちが飛び越えたりくぐったりできないように工夫されている

・動物検知システム(Wildlife Detection System)
奄美大島で研究のために実施されたシステムで、アマミノクロウサギをロードキルから守るために設置されました。アマミノクロウサギが道路に侵入しやすい場所に、赤外線センサーを配置します。

アマミノクロウサギが侵入しやすい場所に設置された赤外線センサーで動きを感知する
アマミノクロウサギが侵入しやすい場所に設置された赤外線センサーで動きを感知する

それとともにドライバーから見やすい位置に注意喚起を促す看板とパトランプ付きの受信機を設置し、動物が道路に入ろうとするとパトランプが作動して動物がいることをドライバーに知らせます。

看板上のパトランプが作動して動物が近づいていることを知らせる
看板上のパトランプが作動して動物が近づいていることを知らせる

奄美大島では動物観察も観光の目玉の一つとしているため、ドライバーの速度低下を促すことで、事故の発生防止とともに動物と出会うことにつなげていこうという試みでもあります。結果としてこのシステムによってクルマの速度を下げる効果はあったとのこと。まだ実用化には至っていませんが、このようなシステムも動物の生命を救う一助となりそうです。

自分も野生動物も守るために気をつけたいこと

繰り返しになりますが、ロードキルは野生動物の生命を奪うものであるとともに、クルマやドライバー自身も危険にさらされる場合があります。ロードキルを回避するために注意したいのは、法定速度を守るのはもちろんのことですが、郊外や山間部、森の中を通る道路では動物が飛び出してくるかもしれないと注意を払うこと。特に動物注意看板の設置されている場所や前述した設備が目につく場所では要注意です。

万が一、道路脇などに動物の姿を見つけた場合は、周囲のクルマに気をつけて速度を落としてください。動物が道路へ進入してきたら、クルマを停止して、道路わきや柵の外へ立ち去るまで待ちましょう。特にシカの蹄は舗装道路の上では滑りやすく、クルマの走行音やクラクションに驚くと立ち止まってしまうことがあるので、静かに通り過ぎるのを待ちます。

クルマや自分自身、野生動物を守るためにとる行動は、そのまま安全運転にもつながります。自然への配慮を忘れず、気持ちよくドライブしたいものです。

(取材・文:わたなべひろみ 編集:奥村みよ+ノオト)

<取材協力>
「野生生物と交通」研究発表会 事務局
http://www.wildlife-traffic.jp/

帯広畜産大学 環境農学研究部門 環境生態学分野
浅利 裕伸 博士

[ガズー編集部]

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