NSXが先導を務め、シビックタイプRが追走を行う! サーキットで働くクルマたち!<鈴鹿サーキット編>
開催されるレースやイベントを無事に終えるため、また、ドライバーには快適で安全に走行してもらうため、サーキットではさまざまなコースカーを配備しています。基本的な運用方法はどのサーキットでも同じですが、運営する組織の方針や環境によりコースカーの車種は異なります。
今回は、「F1日本グランプリ」が開催されることで有名な鈴鹿サーキットのコースカーを紹介します。運用中のコースカー事情や歴代のコースカーについて、株式会社モビリティランド鈴鹿サーキット事業推進部、広報・宣伝課の鈴木亮介さんにお話を伺いました。
※サーキットにより呼称は異なりますが、ここでは「コースカー」と総称します。
ホンダのフラッグシップスポーツカーが担うレースコントロールカーとセーフティーカー
サーキットへ訪れた観客がもっとも目にする花形コースカー、マーシャルカー(レースコントロールカーとセーフティーカー)。現在、鈴鹿サーキットでは6台のレースコントロールカーと2台のセーフティーカーを配備しています。計8台のマーシャルカーは、いずれも親会社にあたるホンダから貸与されており、ホンダのスポーツカーを象徴する車種が選ばれています。
レースコントロールカーとして3台、配備されている「シビックタイプR(FK8型・FK2型)」。レースのスタート時、最後尾から競技車両を追走する役割を担うため、ロールバーや4点式シートベルトを施した高速走行仕様となっています。
シビックの他にも「オデッセイ」と「フリード」、「フィットRS」がそれぞれ1台ずつ配備され、スタッフや関係者の移動、コースの確認などで運用されています。
悪天候時やアクシデントの発生により「SCボード」と「イエローフラッグ」が提示されると、安全確保のため、コースに入って競技車両を先導する役割を担うセーフティーカー。こちらにはホンダスポーツカーのフラッグシップである「NSX(NC型)」と「シビックタイプR」がそれぞれ1台ずつ配備されています。
役割上、セーフティーカーの走行速度は100km/h前後。そのため高速走行用の補強は施されておらず、無線やLED回転灯を除けば市販に近い状態だそうです。
レースコントロールカーとセーフティーカー、それぞれのシビックは同じモデルであってもラッピングで見分けがつきます。ちなみに、鈴鹿サーキット公式としてのラッピングやカラーリングの決まりはなく、担当者の裁量に一任されているそうです。
F1マシンの先導を務めたこともある歴代のマーシャルカーたち
鈴鹿サーキットでは、これまでに以下のマーシャルカーが配備されています(正式な資料が残っていないため、他の車種も配備されていた可能性があります)。当時の貴重な画像をご提供いただきました。
1990年以前:
レジェンド(KA型)
CR-X(EF型)
シビック(EF型)
- (1987年:F1日本グランプリ時)
- (1988年:F1日本グランプリ時)
- (1988年:F1日本グランプリ時)
- (1989年:F1日本グランプリ時)
1991~1993年:
CR-X(EF8型)/無限フルチューン仕様
シビック(EG6型)
NSX(NA型)/複数台
プレリュード(BA8型)
- (1991年:F1日本グランプリ時)
- (1991年:F1日本グランプリ時)
- (1993年:F1日本グランプリ時)
1994年以降:
プレリュード(BB4型)
インテグラ(DC2型)
シビックタイプR(FD2型・FN2型・FK2型)
レジェンド(KB1型・2型)
- (1994年:F1日本グランプリ時)
アクシデントに備えるメディカルカーとファイヤーテンダーカー
レースやイベント中に発生する様々なアクシデント。ケガ人や負傷者が出た場合はメディカルカーが、車両火災の発生、あるいは発生の恐れがある場合はファイヤーテンダーカーが駆けつけます。状況に合わせて迅速に対応するため、サーキット敷地内には複数台のメディカルカーとファイヤーテンダーカーが配備されています。
「フリード」のファイヤーテンダーカー。後部座席は取り払われ、「高圧噴霧消火装置」が装備されています。他にも自動車火災用の消火器を積載した「フィット」等が配備されています。
過去には「シビックシャトル」のファイヤーテンダーカーが配備されていました。画像の手前に写っているのは当時、ティレル・ヤマハに在籍していた片山右京さんです。
- (1993年:F1日本グランプリ時)
メディカルカーは、主に「CR-V」や「ジェイド」といったSUVやステーションワゴンが採用されています。事故の後処理も担うことから、車内には牽引用のロープや清掃用のほうき等も積載されています。
病院への搬送が必要な場合は、待機する救急車が出動します。救急車はナンバーを取得しており、複数台を配備。サーキットからそのまま公道に出て走行することができます。
動けなくなった競技車両の救出からレース再開のために働くメンテナンス用車両たち
コースアウトしグラベル(砂地)に飛び込んで動けなくなった競技車両。速やかに競技を再開すべく救出に向かうのは、カーゴクレーンとレッカー車です。カーゴクレーンはクレーン機能を持ったトラックで、クレーンで吊り上げた車両をそのまま積載して運べるようになっています。
救助対象がオートバイや「エコ マイレッジ チャレンジ」などに出場する小型の車両だった場合は、専用のキャリーに乗せて牽引し救出します。
コースカーの紹介でおなじみのスイーパー(清掃車)。競技車両から出るタイヤカスを清掃したり、
アクシデントでコース上に広がったオイルを洗い流し、オイルの混じった水を吸い上げて回収する機能を持っています。
サーキット敷地内であっても、コースの外は自然の多い環境。グラベル整地用のトラクターも、立派なコースカーの一員です。
広い敷地で複数の施設を有するサーキットでは、巡回バスは欠かせませんね。
コースカーを撮影するには?
平時のマーシャルカーはメンテナンスの都合上、(移動中を除いて)入場者の目にすることのできないエリアにあります。レースやイベントの開催時にはピットウォークエリアで展示することもあるそうです。必ず展示されているわけではありませんが、コースカーを撮影したい場合は、イベントやレース観戦に訪れる際にピットウォークへの参加を申し込んでは如何でしょうか?
<関連リンク>
鈴鹿サーキット
https://www.suzukacircuit.jp/
(文:糸井賢一 写真:鈴鹿サーキット 編集:奥村みよ+ノオト)
[ガズー編集部]
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