目指すは南極点!クロカン4駆EVの可能性にかける自動車環境問題NGOがEVジムニーを開発

「オフロードを走れるクロカン4駆EV」をテーマに、1997年から活動をしている自動車環境問題NGO「ZEVEX」。スズキジムニーをベースにしたEVを開発し、南極点への到達を目指しているとのこと。クロカン4駆EVに着手したきっかけや南極点を目指す理由を代表の鈴木一史さんに伺いました。

きっかけは参加したラリージャングル競技会での一コマ

鈴木さんがボルネオサファリに参加した時の写真(写真:ZEVEX)
鈴木さんがボルネオサファリに参加した時の写真(写真:ZEVEX)

1997年に鈴木さん自身が参加したボルネオサファリで見たある光景が、クロカン4駆EVを作らなければと奮い立たせたそうです。

「このジャングル競技会は、10年単位で放置された作業道や森の隙間が舞台となっています。そんな場所で、川を渡る渡河走行の後に排気ガスのすすや油が水面に浮かぶ光景が鮮明に心に刺さりましたね」(鈴木さん)

しかし、当時日本のクロカン4駆はNOxやPM問題への対応に追われており、通常の乗用車よりも環境への配慮が遅れていると鈴木さんは感じていたそうです。

「私は自然が好きだからこそ、自然の中を分け入るクロカン走行をやっている人間なんです。だからなおさら、自然を走るクロカン4駆が自然を壊してはいけない!そう思いましたね。いつまでも自然を走れるためにクロカン4駆こそEV化が急務だと思い活動をスタートしました」(鈴木さん)

より深くEVを知るところから始めた活動

(写真:ZEVEX)
(写真:ZEVEX)

こうして始まった活動ですが、クロカン4駆のEVは日本には例がなかったため、暗中模索、すべてが手探りの状態だったそうです。

「元々ウインチの専門家であったのでモーターやバッテリー関係の知見は深い方だったのですが、まずは『EVを造って運用する』という目的の下、EVを知るところから始めました。アメリカではエンジン車をEVへコンバートする改造が普及していたので、アメリカの文献を探したりしましたね。また、1994年から活動を開始していた日本EVクラブにもお願いして、知恵を貸していただきました。このように少しずつ知識と人脈を増やしていき、今に至ります」(鈴木さん)

そして2000年に2代目ジムニーをベースにしたEVを完成させ、最終的に車検を取得し、公道走行可能なEVジムニーが誕生しました。しかし、それ以降もZEVEXはクロカン4駆EVの進化を止めませんでした。

「電気で走るクロカン4駆を造ったのはあくまで通過点でしかありません。我々が目指しているのはデモンストレーションとしてのクロカン4駆EVでの南極点到達ですが、その核心はCO2削減問題の次に表面化する自動車の環境問題に対する解決方法の提案です。そのために冬の北海道や極寒のロシアでテストを行い、太陽光発電と風力発電でバッテリーに充電するシステムを装備した2号機や、人力発電システムを追加した3号機を開発してきました。今回も2000年に完成した1号機に急速充電システムを装備しました。これによって実用的なクロカン4駆EVにアップデートしましたが、我々の活動はこれからも続きます」(鈴木さん)

南極を目指すのは地球上で唯一「道路の無い大陸」であるから

2005年厳冬期ロシア・間宮海峡アタックにて自然エネルギーで充電をするEVジムニー2号機「ARK-1」(写真:ZEVEX)
2005年厳冬期ロシア・間宮海峡アタックにて自然エネルギーで充電をするEVジムニー2号機「ARK-1」(写真:ZEVEX)

EVで南極点到達を目指しているZEVEXですが、その目標は独自の考えに基づいて誕生したそうです。

「南極を目指すのは『到達できたら世界初!』だけではなく、地球上で唯一道路がない大陸だからです。自動車は普通、自然を切り開いた道路を走行します。しかしそれは山肌に穴を開けたり、草原を重機で埋めたりと環境負荷が発生します。道路が生む環境負荷の問題までは、まだ多くの人が気づいていないようです。『道路の無い南極大陸をゼロエミッション車で走破し、道路整備から発生する環境負荷の存在を世に示す』、これこそ私たちが未来のためにやらなければいけないことです。だから南極×クロカン4駆EV×ゼロエミッションなんです」(鈴木さん)

EVジムニー3号機に搭載された人力充電システム(写真:ZEVEX)
EVジムニー3号機に搭載された人力充電システム(写真:ZEVEX)

南極大陸で「ノーマルルート」と呼ばれる、ヘラクレスインレットから南極点まではおよそ1200kmあるため、満充電であっても当然到達できません。そのため、南極アタック用の3号機には、3種類のゼロエミッション発電システムが搭載されているとのこと。正に真のゼロエミッションEV車で南極点を目指しているのです。

数百年後を見据えた活動

最後に、そんなZEVEXの今後の目標についてお聞きしました。

「南極点を目指すのはもちろんですが、重機で自然環境を踏み散らかすことに制限が加えられ、「ありのままの地球の表面」により近い環境下で移動することを求められる時代は必ず来ます。そのときに、ZEVEXの考えや取り組みが認められ、300年後とかに我々が銅像になって称賛されているとうれしいですね(笑)自然を走れるゼロエミッション車は、自動車の持続に必要な存在だと信じて活動しています。この考えが将来世間に広く認められて遠い未来でも語られる歴史の人になりたいです。現実的なところでいえば若手メンバーが入ってくれるとうれしいですね。我々と一緒に冒険できるタフな若者に、この活動を後世につなげていってほしいです」(鈴木さん)

EVと聞くと都市部での新たな移動手段というイメージが強かったのですが、今回の取材を通して自然の中を走るクロカン車やSUVにこそ必要な技術だと感じました。活動の内容は随時ホームページやYouTubeを通じて報告しているとのこと。未来の自動車の可能性をチェックしてみてはいかがでしょうか。

<関連リンク>
ZEVEX
http://www.ironbarcup.com/zevex/
ZEVEX EVジムニーYouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCSdelrex54f3k4KNaCeJB8Q

(取材・文・写真:西川昇吾 写真:ZEVEX 編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

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