GAZOO写真教室 23限目 星の軌跡をバックに愛車を撮ろう

今回の写真教室は、“愛車と共に撮ってみたい星の軌跡の撮り方” について勉強をしましょう。以前撮影した写真を見せたところ、星の写真は見たことがあるけれど、愛車と一緒の写真は何か夢を与えてくれると言われましたので、題材として選んでみました。

星の軌跡の写真だけでもキレイではありますが、「愛車と一緒に」がクルマ好きのみなさんのポイントだと思います。

星の軌跡の写真とは、ご存じのように地球の自転により星が移動している様子を撮影するので、点である星を「線」にして表現することになります。今回は、カメラの設定の他に、画像編集ソフトのレタッチの様子もお届けします。

使用しているソフトは、Photoshop ですが、お持ちでない場合は、表現の仕方をお持ちのソフトやアプリで代用し、さらに好みの画像に仕上げていただき世界を広げていきしょう。

撮影できるシチュエーション

夜空の星が動いた軌跡を撮るので、ある程度の条件を満たさなければなりません。まず、沢山の星が見られるロケーションが必要です。例えば日本で一番星が綺麗と言われている長野県の阿智村は、撮影に向いているのは当たり前ですが、そこまでいかれる必要はもちろんなく、お近くに星空がきれいなスポットがあれば大丈夫。

次に、当然ですが晴天の日の撮影がマスト。しかも雲のない快晴の夜空が望ましいです。そして、クルマも被写体に入れたいので、真っ暗な駐車場が必要となります。街灯が多く撮影するクルマがはっきり見えてしまう環境ですと、明る過ぎます。また露光中に、車が通ってしまうとせっかくの撮影が台なしになってしまうので深夜がオススメです。今回使用している写真は、以前、山梨の清里近辺で撮影したものです。これから夏に向かいますが、本来は冬の方が空気が澄んでいて撮影には適しています。ただし、美しい真冬の山での2時間に渡る撮影は、かなり冷えますので寒さ対策など準備万端にして行ってください。

撮影機材

長時間露光で写真を撮ることになりますので、カメラの他に三脚やレリーズ(カメラに触らないでシャッターを切る道具)が必要になってきます。今回のカメラは、キヤノンの EOS-R を選択しました。理由は僕の持っているカメラの中で、一番画素数の多いカメラ(1DX-Mark3よりも多いんです)という点です。

また、画素数と同じくらい重要視したのが、RFレンズだということです。このレンズは集光性が高いのでノイズがのりにくく、夜間の撮影にも適していると判断しました。そして夜空をより広く撮影したかったので、手持ちで一番短い RF15mm-35mm のズームを選択しました。

今回使用したレリーズは、ブルートゥースでシャッターが切れるタイプです。この機材だと、5~6m離れて操作ができるので大変便利です。最近ではスマホでも操作できる機種もありますので、説明書を読んで参考にしてください。

撮影方法

まず通常の一眼レフを使用する場合、長時間露光での撮影ですのでミラーアップ撮影必須です。通常の撮影方法だと、ミラーが跳ね上がるショックで、画角がずれてしまう可能性があるからです。

カメラの準備が整ったところで、撮影にとりかかります。撮影方法ですが、以前、フィルム時代には3時間露光など長時間シャッターを開けっぱなしにして行っていました。その方法でも撮れますが、ノイズがのってきてしまい画像が綺麗に仕上がりません。そこでシャッタースピードは、30秒を上限として60枚前後撮影し後で合成をします。そうすることでノイズをおさえた美しい画像が完成します。今回の撮影では、ISOを 800 に設定し、シャッタースピードは 25sec 、絞りは F4,5 に設定しました。

ここでの注意点は、あまり絞らないことです。絞りすぎてしまうと、淡い光の星が写らなくなってしまいます。より多くの星を写すためには、f5,6 くらいまでにおさえておくべきです。

クルマを置く場所ですが、北極星の場所を意識してポジションを決めてください。北極星を支点として地球が自転しているので、北極星が画面の真ん中に来ると綺麗な円軌道になります。今回は環境が良かったので、北極星がクルマの真上に来ています。駐車場の状況によって、選べない場合もあると思いますが、知っておいて損はない簡単なテクニックです。

念のため書いておくと、肝心の北極星の見つけ方ですが、北斗七星の柄杓の5倍の距離が目安です。説明するまでもなくわかると思いますが、スマホをかざすだけで星座を教えてくれるアプリもありますので、ご参考まで。

撮影ポジションが決まったところで、次はピントの合わせ方です。真っ暗な場所での撮影なので、そのままではフォーカスが合いません。そこでスマホのライト機能が役に立ちます。ライトを点けてクルマを照らしてやることで、カメラが被写体を認識してピントが合います。(スマホ2台分くらいの明るさがあった方が良いです)スマホのこの機能は、ピントを合わせる以外にも撮影でも役に立ちます。その使い方は後ほど紹介します。

クルマのポジションを決め、ピントを合わせたらあとはシャッターを切るだけです。とは言え、直接カメラに触れてしまうとアングルがずれてしまいます。しっかり三脚にセットしたら、遠隔操作でシャッターを切りましょう。

ここでの注意点は、背の高い三脚だと、夜空のスペースが狭くなってしまうので低い三脚を使いましょう。僕は、より低いカメラポジションを得るために、カメラを地面に置きレンズの角度を合わせました。上のようにレンズケースを使い、より低い場所から煽って撮影することで夜空の面積を増やしました。若干不安定ですがミラーレスカメラはシャッターが切れる瞬間もショックが少ないので、撮影できると判断しました。

撮影をしていく際、1枚だけスマホのライトでクルマを照らした写真を撮っておきましょう。その1枚が合成した時に、クルマを綺麗にしてくれます。ライトを当てる時間は15秒くらい。クルマ周りを歩きながら、映る部分をまんべんなく照らしてください。この一枚が入ることで、結果は満足のいく出来になったと思います。

写真の合成について

撮影した写真の、合成方法を勉強していこうと思います。僕の場合キヤノンのデジタルフォトプロフェッショナルで、CR3 から jpg に現像して画像編集ソフトの Photoshop に転送します。転送した写真はフォルダを作り全て入れておきPhotoshopで展開します。

メニューバーの ファイル → スクリプト → 統計 と進み

参照から撮影した写真のフォルダを開き、撮影した写真を全て選びます。

ダイヤログの「開いているファイルを追加」を選択してください。

一つのレイヤーの中に、写真が表示されたら全ての写真を選択します。
レイヤーの描画モードを「通常」から「比較(明)」に変えると自動的に合成されます。

後はファイルから画像を統合して、色調整を加えれば出来上がりです。

今回は30秒露光で60枚。単純計算で30分の撮影です。準備なんかを含めると1時間くらいの撮影でしたが、もっと長く軌跡を残すにはその分長時間の撮影になります。

撮影している間も楽しく過ごすには、テーブルにコーヒーくらいは持って行きましょう。そしてファミリーや友人、撮影が好きなカメラ仲間と行くのもオススメですね。こんなことでもなければ、ゆっくり夜空を眺めることもないでしょうから。まだまだ油断できない世の中ですので、緊急事態宣言が明け落ち着いた頃にでもトライしてみてください。では、健康に気をつけ写真撮影を楽しみましょう。

(写真 / テキスト:折原弘之)

折原弘之

F1からさまざまなカテゴリーのモータースポーツ、その他にもあらゆるジャンルで活躍中のフォトグラファー。
作品は、こちらのウェブで公開中。
http://www.hiroyukiorihara.com/

[ガズー編集部]

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