クラウンが24時間レース参戦!? ~2020 富士SUPER TEC 24時間レース 直前レポート~

今年で3回目の開催となる「富士SUPER TEC 24時間レース」。今年は、コロナ禍で開催が心配されましたが、お客様を動員しての無事に行われる事が発表され、久しぶりに富士に行ってみようという方も多いのではないでしょうか?

写真も撮りたいし、夜中サーキットで非日常を過ごしたい!それは私だけでしょうかね…。そんな中で、もう気になってしょうがないクルマがあります。ヤリスにスープラは想定内でしたが、“いつかはクラウン”のキャッチが懐かしい、あのクラウンがレースに参戦するというのです。

我が家は、現在、主人のクルマがレクサスからクラウンへと乗り換えをしたのですが、我が家はいいんです、隠居世代だからね(失礼)。そうそう我が家、以前ゼロクラウンに乗っていました。かっこよかったですよ、クラウンアスリート。ちょっとだけ車高落としてね、下品にならないように。好きでした。とにかくクラウンがレース参戦とは驚きです。

メンテナンスガレージは、スーパーGT開幕戦でGT300クラス、GRスープラで紹介を飾った埼玉トヨペットさんです。これは思いつかなかったな。

まずは、7月に行われた公式テストまでの様子をライターの奥野大志さんにお願いしてレポートしていただきました。それでは、どうぞ!

写真:埼玉トヨペット
写真:埼玉トヨペット

いよいよ開幕間近となったピレリスーパー耐久シリーズ2020第1戦、富士SUPER TEC24時間レース(9月4日~6日、富士スピードウェイ)。公式テストに参加した面々を見るだけでワクワクせずにいられませんが、その中に「えっ?」と思わず叫んでしまう変わり種マシンを見つけました。そのクルマはなんとクラウン。そう、長きにわたりセダンの代名詞的存在であり続けるあのクラウンが24時間レースに出るんです!

クラウンを投入するのは埼玉トヨペットが運営するレーシングチーム、Green Brave(GB)。スーパーGT開幕戦のGT300クラスで初優勝を飾ったチームとして知られていますよね。スーパーGTはGRスープラベースのJAF-GTマシンという正統派レーシングカーですが、S耐は親父セダンの代表格であるクラウン(失礼)。この極端なチームの選択に心惹かれてしまうのは私だけでないはずです。

埼玉トヨペットGBは2013年からスーパー耐久(S耐)に参戦。最初に投入したのは前年に発売された86で、S2000やインテグラタイプRなどと争うST-4クラスに参戦しました。2015年に86でチャンピオンを獲得すると、その翌年に投入したのはなんとマークX。クラスはフェアレデイZやレクサスRC350などと争うST-3クラスで、昨年まで現役でした。

参考までにマークXのベストリザルトは優勝1回、ベストランキングは1位と同点の2位(2019年)で、惜しくもチャンピオンを獲れませんでした。これにはさまざまな理由がありますが、長いホイールベースと狭いトレッドを持つマークXならではの特性もリザルトに影響を与えたはずです。

で、今度のクラウンが出場するのも同じST-3クラス。つまり、埼玉トヨペットGBはマークXでさんざん苦労をしてきたのに、レースにより適した車両にスイッチすることなく、またしても4ドアセダンを選んだというわけ。疑問に思いますよね。

その答えはずばり、埼玉トヨペットGBは自社で販売している車種でのレースに「超」がつくほどこだわっているから。販売終了になったマークXはやっぱり引退、レクサスを走らせるのも違う話なのです。

埼玉トヨペットGBは2016年にマークXを導入した際、マークⅡがデビューした1968年にちなんで「68」のカーナンバーを付けたほど。取り扱い車種への愛着は半端ではなく、単純にレースに向いているかどうかだけでレーシングカーに選ばれることはないのです。

写真:埼玉トヨペット
写真:埼玉トヨペット

ですから、マークXが販売終了になるという噂が聞こえるようになった頃から、「来年のクルマは何になるのか?」というのが関係者の間で話題に上っていました。もちろんベールに包まれていたので確定的な情報はなかったのですが、フタを開けてみたらまさかのクラウン。

クラウンは今年の4月までトヨタ店の専売車種(一部地域をのぞく)でしたので、いち早く全車種併売のメリットを活用したとも言えます。トヨペット店のイメージカラーであるグリーンのラッピングをまとったクラウンはなかなか新鮮。

ちなみに埼玉トヨペットは7月25日に「Green Blazeクラウン」を発表。埼玉トヨペットGBのノウハウを活かしたオリジナルカーで、会社をあげてクラウンの盛り上げに取り組んでいます。

写真:埼玉トヨペット
写真:埼玉トヨペット

クラウンは7月20日に富士スピードウェイでシェイクダウンされ、はじめの一歩を踏み出しました。ベースとなったグレードは2.0リッター直4ターボのRS。市販車のミッションはATのみなので、レース用のミッションに変更されています。

直4ターボの低音が効いたサウンドは非常に新鮮で、かっこいい!の一言。大地に根差すように低く構えたスタイリングも関係者の間で好評でした。

写真:埼玉トヨペット
写真:埼玉トヨペット

まだタイム云々というレベルではありませんが、これから本番に向けてクルマを少しずつ仕上げていくそう。もちろん、クラウンがベースだからと言って参加することに意義があるのではなく、目標はあくまでも優勝とチャンピオン獲得。クラス唯一のマシンを手探りで熟成していく埼玉トヨペットGBのエンジニアたちの苦労を考えると、本当に頭が下がります。

写真:埼玉トヨペット
写真:埼玉トヨペット

マークXがデビューした当初、トップグループと比べて1周で2秒から3秒ほどのタイム差がついていました。それから4シーズンをかけて、トップと互角の戦いができるまでに成長しました。

レースに不利なマシンでも、技術力でカバーし、エンジニアの成長につなげるというのも埼玉トヨペットGBの狙いのひとつ。ニュルブルクリンクで鍛えたTNGA FRプラットフォームを採用しているだけに、潜在的なポテンシャルは高いはずですよね。

「いつかはクラウン」という言葉が再びブームになる日も近い?

今後、埼玉トヨペットGBのクラウンがどんな成長のストーリーをたどっていくのか、本当に見ものです。

写真:折原弘之、埼玉トヨペット テキスト:奥野大志、大谷幸子

[ガズー編集部]

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