【クルマとお金】車検が「高い」のはなぜ? ―車検制度の仕組みと料金の内訳―

車検が高い……。クルマを所有したことのある人なら、一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか? そしてクルマを持ったことのない人も、そんなことを耳にしたことがあるかもしれません。

では、「車検」とはそもそも何をする制度なのでしょうか? その料金の内訳は? そこで今回は、知っているようで知らない「車検」にフォーカスしてみます。

「道路を走ることを満たしていること」を確認する検査

クルマが一般公道を走るには、整備不良や極端な部品の消耗、違法改造などがなく「道路を走ることを満たしている」という証明を受けなければいけません。そこで2年ごと(新車登録後、最初だけは3年後)に、道路の走行を許可する認定機関である国土交通省(もしくはそこから認可を受けた整備工場など)が、車両の確認を行います。その仕組みを「自動車検査登録制度」、略して「車検」というわけ。

車検を受けると2年の有効期間が与えられ、その期間内はクルマを走らせることができますが、有効期限が切れる前に次の車検を受けなければならない決まりです(受けなかった場合は、受けるまで公道を走れません)。もし、車検を受けていないクルマを公道で走らせると「交通違反点数6点」「6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」という厳しい罰則を受けるので、くれぐれも車検切れにならないように注意してください。

車検を受けるだけなら1800円の手数料だけ?

さて、そんな車検にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか? 車検の費用は車両のサイズや重さにもよりますが「最低でも10万円弱」というのがひとつの目安です。しかし意外なことに、車検を受けること自体は、2,000円にも満たない車検手数料(軽自動車1,400円/小型車1,700円/普通車1,800円)しかかかりません。

でも実際には、車検時には多くのお金がかかります。なぜなら、車検と同時に更新が必要となる自動車損害賠償責任保険(自賠責)の保険料(24カ月分、普通車で2万5,830円)や、次の車検までの2年分の重量税(自家用乗用車は「0.5tごとに1万2,300円」。1tから1.5tまでの乗用車、エコカー減税外なら2万4,600円)なども含めて車検費用として計算するから。

多くの場合、車検費用には車検業者(自動車ディーラーなど)へ払う車検代行手数料や、車検と同じタイミングで必要となる「24カ月点検」と呼ぶ法令定期点検の整備料金なども含めます。これらの総額が、一般的に「車検の費用」だと思われていて、「高い」イメージを持たれているわけです。実際に、合計すると最低でも10万円前後となります。

また、長く乗られているクルマや走行距離が伸びているクルマは、消耗品の交換といったメンテナンスが必要となりますが、多くの人はそれを車検と同時に行います。その際の修理費やメンテナンス費が車検時に追加されることも、さらに「車検は高い」と印象付ける一因でしょう。場合によっては、整備代だけで何十万円にもなることもあります。

つまり「車検が高い」の正体は、車検の検査そのものの費用が高いのではなく、車検と同じタイミングで徴収される保険料や税金、車検代行料、整備費用が必要となるから。車検の検査手数料自体は、高くても1,800円ですから、実は「車検そのものよりもそのほかの費用のほうがずっと高い」なのです。

ちなみに、「アメリカでは車検(に相当する手続き)が安い」という話を聞いたことがあるかもしれません。それは日本と違って「税金」や「保険」と車検が切り離されているから。さらにアメリカでは、そもそも自動車の税金が安いので自動車の所有にあまり負担を感じないのです。

自分に合った「車検の受け方」を選ぼう

多くの人は、新車なら新車ディーラー、中古車なら中古車店と、クルマを買ったお店に車検を任せているでしょう。しかし車検は、買ったお店以外でも受けることができます。もちろん、それぞれにメリット・デメリットがあるものです。

新車ディーラーで行う車検「ディーラー車検」は、車検の通し方とすればもっとも安心できる方法。そのクルマを知り尽くしたプロフェッショナルが作業し、メンテナンスや消耗品の交換も“最低限”ではなく“この先も安心して乗れるように”と、予防措置も含めて提案してくれるのが一般的です。安心感は高いですが、整備代や作業工賃が高くなりがちで、結果として車検費用も上がってしまいます。

一方、新車ディーラー以外の整備工場やカー用品店、ガソリンスタンドなどで車検を行うと、税金や重量税などの諸費用は同じながらも車検代行手数料が新車ディーラーに比べると安めで、全体の費用を抑えられる傾向があります。

もっとも安くできるのは「ユーザー車検」と呼ばれる、自分で国土交通省の施設へクルマを持ち込んで車検を受ける方法。すべて自分の責任で行うことになり手間もかかりますが、車検に関しては代行手数料が不要なので、最低限の出費で車検を受けることが可能です。

その場合、車検とは別に義務となる24カ月点検は別途プロに行ってもらう、もしくは整備を自分で行うことが必要となるので、よほど整備に詳しくない人以外にはオススメできません。

なお、購入した店舗以外で車検を受けると、メーカー保証や販売店保証が受けられなくなる可能性がありますので、ご自身のクルマの保証について確認しておくといいでしょう。

車検費用の内訳を覚えておこう

車検は高い。それはたしかに事実です。クルマを所有している2年に一度のタイミングで最低でも10万円弱、長く乗り続けていればメンテナンス費も追加されて十数万円以上にもなる出費を求められてしまうのですから。

しかし、実際に車検自体にかかる費用はわずかで、それ以外の自賠責保険料、重量税、そして車検代行手数料や12カ月点検代、修理代などが含まれて「車検時の出費」となることは知っておきたいところです。

(取材・文:工藤貴宏 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

シリーズ「クルマとお金」

  • 第1弾【クルマとお金】車検が「高い」のはなぜ? ―車検制度の仕組みと料金の内訳―
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