トヨタ プリウスα G(7人乗り) VS スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight 比較レポート

成り立ちは異なるが両者ともに個性あふれる

​スバル エクシーガは3列シート7人乗りのミニバンとしては、独自性の強い車種だ。レガシィやインプレッサと同じように水平対向4気筒エンジンを縦置きに搭載し、駆動方式は4WDのみ。実用性とコストが重視される傾向にあるミニバンとしては異例の成り立ちだ。つまりパワートレーンの方式に関してはミニバンといえどもレガシィ譲りで、走りに定評のあるスバル・スピリットを貫いた、スバリストも満足のミニバンである。

デビューは2008年で、当初のエンジンは2リットルの自然吸気とターボの2本立て。トランスミッションはいずれもATで、自然吸気が4速、ターボが5速だったが、翌年自然吸気がCVTに変更。2010年には2.5リットルが追加され、間もなく自然吸気はこれに一本化された。

プリウスαが発表されたのは翌年のこと。現行プリウスをベースにホイールベースを伸ばし、ルーフを高めてリヤまで水平に伸ばしたワゴンで、5人乗りと7人乗りがある。プリウスの名前を冠するだけあってもちろんハイブリッド専用車で、1.8リットルエンジンとモーターのコンビで前輪を駆動する。バッテリーは、5人乗りでは荷室床下にニッケル水素電池を積むのに対し、7人乗りは1列目の左右席間にリチウムイオン電池を搭載する。

試乗したプリウスαは、2014年11月にマイナーチェンジしたモデルで、プリウスとの差別化を明確にした個性的なフロントマスク、ピアノブラック塗装や合成皮革を用いて上質感を高めたインテリア、レーンディパーチャーアラートやオートマチックハイビームなどの先進安全装備の設定を特徴としている。対するエクシーガも2010年以降、1年ごとに改良を実施している。

試乗車のグレードはプリウスαが「G」、エクシーガは2013年に特別仕様車からレギュラーモデルに昇格した「2.5i spec.B EyeSight」だ。

デザインの方向性は明確に違う

現在販売されているミニバンのなかで、この2台はかなり個性的なスタイリングの持ち主といえる。プリウスαはボンネットからウインドスクリーンにかけてを一直線につなげ、サイドウインドゥの上辺が弧を描くことで、プリウス一族であることを巧妙に表現。一方のエクシーガは明確なフロントノーズ、サイドからリヤへと連続して見えるウインドゥグラフィックなど2世代前のレガシィに似ており、ワゴン的だ。

ボディサイズはプリウスが全長4630mm、全幅1775mm、全高1575mmで、エクシーガのスリーサイズはそれぞれ4740mm、1775mm、1650mmと、エクシーガのほうがやや長く、背も高い。ところがホイールベースはプリウスαが2780mm、エクシーガが2750mmで、プリウスのほうが30mm長い。このあたりにも、ハッチバックから派生したプリウスαとワゴン風に仕立てたエクシーガの違いが表れているような気がした。

  • トヨタ プリウスα G
    プリウスらしさの象徴であるワンモーションフォルムを継承。サイドウインドゥのラインはおなじみプリウスと共通のイメージだ。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    ルーフやショルダーラインは水平に近づけた直線で、シャープな雰囲気を醸す。ステーションワゴン的なスタイルはプリウスαと大きく指向が異なる。
  • トヨタ プリウスα G
    エクシーガと比べると実寸以上にコンパクトで軽快な印象を受ける。ホイールベースはエクシーガより長い。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    プリウスαと比較すると、全幅は同サイズだが長さと高さでひとまわり大きな車体だ。窓の大きさが印象的。
  • トヨタ プリウスα G
    Cd値(空気抵抗係数)は0.29。後方が低いように見えるルーフだが、実はウインドゥグラフィックによる錯覚で実際には後部までほぼ水平だ。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    大きなリヤクォーターウインドゥを備えるなど、3列目の広さを視覚的にも感じさせるデザインとしている。全高はプリウスαより75mm高い。

先進性か、それとも個性か?

インテリアもまた対照的だ。デジタル式メーターをセンターに据えたプリウスαのインパネは先進性、アナログメーターをドライバーの正面に置いたエクシーガのそれはスポーティさをアピールする。セレクターレバーの位置も、プリウスαはインパネ、エクシーガはセンターコンソールとこれまた対照的なのもキャラクターの違いをよく表している。プリウスαの7人乗りは、そのセンターコンソールにバッテリーが収まるので高めになるが、気にはならなかった。

エクシーガのインパネは、2007年に登場した3代目インプレッサとよく似たデザインであり、今の目で見るとやや古さを感じるのも事実。内装色は、プリウスαはブラックとグレージュ(グレーとベージュの中間)が選べるのに対し、エクシーガはブラックのみ。ここにも性格が表れている。特にスポーツグレードの「spec.B」では、赤いステッチを入れたステアリングやシート、カーボン調のセンターコンソールなどスポーティな演出が施され、ミニバンであることを忘れてしまうほどにインテリア作りも挑発的だ。

  • トヨタ プリウスα G
    フルデジタルのセンターメーターにインパネ配置の電子式シフトレバーを組み合わせ、先進的な印象が強い。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    国産3列シート車としては極めて珍しくフロアシフトを採用。コックピットレイアウトは基本に忠実でスポーティ。
  • トヨタ プリウスα G
    メーターはフルデジタル。中央の4.2インチTFTカラーディスプレイには、燃費からエネルギーの流れまで各種情報を表示する。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    赤を差し色に添えたアナログ式のメーターは、“走りの3列シート車”であることをドライバーに鮮烈にアピールしてくる。
  • トヨタ プリウスα G
    ステアリングの近くに置いたシフトレバーは電子式で、軽く指先を動かすだけで操作可能。パーキングのポジションには専用ボタンで入れる。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    コンベンショナルなフロア式シフトレバーの採用は、先進性を強調するプリウスαと対照的だ。パドルシフトも備わる。

サードシートの広さではエクシーガに軍配

エクシーガでは約100km、プリウスαではそれ以上を1日で乗ったが、前席の座り心地はどちらも不満なかった。身長170cmの筆者がドライビングポジションを決めて2列目に座った場合、スライドを最後方にセットすれば両者ともに楽に足が組めるほど広くて居住性は互角と感じた。6:4分割でスライドとリクライニングが行えるベンチシートである点も共通だ。

ただし3列目はエクシーガのほうが広い。プリウスαでは、2列目を前にスライドさせないと足を入れる空間が確保できないのに対して、エクシーガは最後方にセットしたままでも座れる。ボディサイズの違いがこの部分に表れているようだ。

後方の荷室は、定員乗車時はどちらも奥行きが限られる。床はエクシーガのほうが広いが、フロア下の収納スペースはプリウスαのほうが深くて実用的。シートの格納方法は2台とも同じで、2列目、3列目とも背もたれを前倒しするという、一般的な手法だ。どちらも操作は簡単で手軽だった。

  • トヨタ プリウスα G
    一般的なセダンよりも高く設定された着座位置(プリウス比+30mm)となっているため、開放的で見晴らしが良好。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    プリウスαとは対照的に、ミニバンらしからぬ低いドライビングポジションが特徴。スポーティな走りには適している。
  • トヨタ プリウスα G
    3人掛けも可能だが、ゆったりと座るなら左右2人掛けがベスト。「S“L セレクション”」を除き可動式のセンターアームレストを組み込む。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    左右6:4分割式のベンチタイプで左右別々にスライドやリクライニングができるなど、要素はプリウスαと同様。前方視界や開放感はプリウスαに勝る。
  • トヨタ プリウスα G
    シートスライドも左右独立。それぞれ、リクライニング機構も備わる。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    セカンドシートのスライド量は180mmで、プリウスαと同じである。肩部分にあるレバーはウォークイン機構用だ。
  • トヨタ プリウスα G
    7人乗りに備わる3列目シートは、大人でも長時間でなければ無理なく座れる。左右独立のリクライニング調整機能付きだ。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    全車に3列目シートがあり、プリウスα同様に左右独立リクライニングを採用。プリウスαに比べると広さに若干の余裕がある。
  • トヨタ プリウスα G
    床面が高いのは、サードシート格納時のフロアをフラットにするため。この下には大容量の床下収納が備わる。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    サードシート使用時の荷室空間は、プリウスαよりもひとまわり広い。床面が高めなのはプリウスα同様だ。
  • トヨタ プリウスα G
    深さ345mm、容量60リットルを誇るデッキアンダートレイは、実用性がとても高い。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    床下収納スペースは備わるものの、やや浅めの空間となっている。

走りはキャラクターの違いが浮き彫りに

プリウスαの1.8リットル直列4気筒エンジンの最高出力と最大トルクは99PS/14.5kgf・m。モーターは82PS/21.1kgf・mだ。システム最高出力は136PSと発表されている。エクシーガの2.5リットルはスバル伝統の水平対向4気筒で、173PS/24.0kgf・mを発生する。プリウスαにトランスミッションはなく、遊星ギアを用いてエンジンの力を駆動軸と発電軸に振り分け、前者をモーターとの協調で回す。エクシーガは6速マニュアルモード付きCVTだ。

車両重量はエクシーガがプリウスαを120kgも上回り、1600kgちょうどとなる。ハイブリッドカーというとバッテリーの重さが気になるところだが、実際はそうでもないようだ。しかし加速に余裕を感じるのは、出力で大きく上回るエクシーガのほうだった。エンジン音が抑えられていることがその印象をさらに強くさせる。

それ以上に異なるのが加速の質。プリウスαのエンジンは、多くのシーンで速度変化とは関係なく特定の回転数で回り、残りのパワーはモーターで賄う。エクシーガも、運転モードを切り替えるSI-DRIVEが「I(インテリジェント)」モードではアクセル操作に対するエンジンの反応がおとなしいものの、「S(スポーツ)」モードに切り替えれば、MTで各ギアを引っ張ってつないでいくように走りの気分が高揚する加速感が手に入る。ここでもキャラクターの違いが浮き彫りになった。

  • トヨタ プリウスα G
    1.8リットルエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドシステム「THS-II」を搭載。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    ボクサーとも呼ばれる水平対向エンジンを縦置きに積む。トランスミッションはCVTだが、鋭い走りも堪能できる。

ミニバンとは思えないエクシーガの走り

プリウスαの乗り心地は、路面の悪い場所ではゴツゴツ感が気になることもあるけれど、ロングドライブでも不満は覚えなかった。205/60R16というおとなしいタイヤのおかげもあるだろう。この面ではエクシーガのほうが上で、「spec.B」は車高が10mmローダウンし215/45R18と快適性には不利なタイヤを履くのに、サスペンションがしなやかに動くおかげで快適な移動を味わわせてくれる。

デビュー当初のプリウスαは、バッテリーを前席間に積む7人乗りだと5人乗りより前が重く感じられたものだ。しかしマイナーチェンジを経て、その傾向は薄れ、峠道でも素直に曲がっていけるようになった。もっともスポーティさではエクシーガに軍配が上がる。重心の低いパワートレーン、安定したグリップを誇る4WD、「spec.B」専用のサスペンションによる魅惑的な走りの世界は、ミニバンの枠を超えている。

驚愕のレベルに達するプリウスαの燃費

​この2台を燃費で比較する人はいないと思うが、参考までにプリウスαの車載燃費計の数字を紹介すると、高速道路中心で約20km/L、空いた一般道では30km/L程度 だった。他のトヨタ製ハイブリッドカーと同じように、スピードを出さないほうが燃費は伸びる。一般的なガソリン車のエクシーガはこれと逆の傾向になるだろうが、高速道路でも15km/Lあたりが上限だろう。

プリウスαは、3列シート7人乗りのクルマでは世界でもっとも燃費の良い一台だと断言できる。一方のエクシーガは、同じ7人乗りとしてはハンドリングと乗り心地のバランスがトップレベルにある。いずれも極めて優れた面があるが、その方向は大きく異なっているのだ。どちらもミニバン王国ニッポンだからこそ存在し得るバリエーションであることを痛感した。

(text:森口将之/photo:田村 弥、峰 昌宏)

  • トヨタ プリウスα G
    先進安全システムとして、最大60km/h減速するプリクラッシュブレーキアシストと最大30km/h減速するプリクラッシュブレーキ(自動ブレーキ)などを持つプリクラッシュセーフティシステム(ミリ波レーダー方式)をオプションで設定している。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    ステレオカメラを使って対象物との距離を計測する「アイサイト(Ver.2)」を全車に搭載する。対象物との速度差が30km/h以下の状況では、自動ブレーキによって衝突を回避。対象物との速度差が30km/hを超える状況では、自動ブレーキによって減速し衝突被害の軽減を図る。
  • トヨタ プリウスα G
    サンバイザーのカードホルダーは、比較的コンパクトなサイズのカードを挟むのに特化した形状。見た目もスマート。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    駐車場のチケットはもちろん、CD程度のサイズのものまで挟んでおけるベルト式。
  • トヨタ プリウスα G
    樹脂パノラマルーフ装着車を除き、運転用のメガネやサングラスを入れておくのに最適なオーバーヘッドコンソールを装備。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    アイサイトの大きなカメラユニットが天井に組み込まれる影響で、天井部分に収納スペースはない。
  • トヨタ プリウスα G
    インストルメントパネルの助手席側には、大容量のリッド付きスペースが上下に備わる。収納量は豊富だ。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    グローブボックスは内部が2段式になっている。インストルメントパネルにもオープンタイプのトレイを装備。
  • トヨタ プリウスα G
    インストルメントパネルにも助手席カップホルダーを装備。エアコンの風を当てて保冷・保温が行える。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    助手席の前に小物入れを盛り込んでいるが、エアコン吹き出し口周辺にカップホルダーは用意されていない
  • トヨタ プリウスα G
    ガソリンスタンドの割引カードなど、クレジットカードサイズのアイテムも収まる収納を、運転席の右前方に装備。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    リッド開閉式のポケットを組み込むが、仕様によっては純正オプションのETCユニットがその場所に収まる。
  • トヨタ プリウスα G
    7人乗り(写真)と5人乗りで形状が異なるが、いずれもセンターコンソールの前方にトレイが用意されている。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    プリウスαに比べるとトレイのサイズが小さいが、大きめのスマートフォンも置くことができる。
  • トヨタ プリウスα G
    手の届きやすい位置に前席のカップホルダーを配置。7人乗りと5人乗りでは別デザインとなる。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    センターコンソールに大きなトレイがあり、そこに脱着式のカップホルダーを設置可能だ。
  • トヨタ プリウスα G
    センターコンソールボックスはリッド付き。7人乗り(写真)は底が浅いが、5人乗りはかなり深い形状だ。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    前後に長いオープントレイがあり、ボックスティッシュを置くことができる。
  • トヨタ プリウスα G
    ドアハンドルのくぼみは、小物を置くスペースとしても使える。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    プリウスα同様に物が置けるが、容量はやや小さめ。
  • トヨタ プリウスα G
    フロントドアの内側には、ドリンクを複数置けるスペースが確保される。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    フロントドアポケットは、ペットボトルを横並びにできる大容量。
  • トヨタ プリウスα G
    ペットボトルを2本置けるスペースがリヤドアポケットに用意されている。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    リヤドアポケットも、フロントと同じかそれ以上の特大サイズ。冊子類も置ける。
  • トヨタ プリウスα G
    「S“Lセレクション”」を除き運転席と助手席の後ろにシートバックポケットを組み込む。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    プリウスαに負けないくらい大きなシートバックポケットを助手席の後ろに装備。
  • トヨタ プリウスα G
    2列目用のカップホルダーは、写真の7人乗りは固定式で1本分。5人乗りはやや低い位置となるが引き出し式で2本分を用意する。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    セカンドシートのセンターアームレストにカップホルダーを装備。姿勢を変えずに飲み物に手が届くのが便利だ。
  • トヨタ プリウスα G
    3列目に座る人の快適性に配慮し、7人乗りにはサードシートの両脇にもボトルホルダーを設置。
  • スバル エクシーガ2.5i spec.B EyeSight
    位置はプリウスαと同様だが、A4の冊子が挟める収納スペースも確保される。