【動画】モーガン・プラスシックス 試乗インプレッション 試乗編
クラシックカーのように見える「モーガン・プラスシックス」は、新型「トヨタ・スープラ」にも採用されたBMW製エンジンを搭載するスポーツカー。どんな走りが楽しめるのか、動画でリポートする。
30年前に初めてモーガンを走らせたときの印象は、少し複雑なものだった。車重が軽いから加速は爽快で気持ちよかったけれど、高速道路を飛ばすのもワインディングロードで狙ったラインにのせるのも、結構難しかったからだ。見た目だけじゃなく、フレームやサスペンションなどの構造が、アップデートされてきているとはいうものの、ほとんど誕生当初……つまり1930年代のままで、乗り味そのものもクラシックだったのだ。
その乗り味を持ったモデルはつい最近まで新車でオーダーできたからそれ以降も何度か試乗しているけれど、粗野で荒々しい硬派な乗り味こそが唯一無二の魅力であり、そこを御してきれいに走れることこそがモーガン乗りの誇りであると実感できるようになったのは、40歳を少し過ぎてから。手っ取り早く、速く走りたかった当時20代のコゾーには、理解できる範囲のはるか圏外にあるものだった。
モーガンとは元来そういう乗り物で、付き合うには真剣に自分自身と対峙(たいじ)する必要があった。他の一般的なスポーツカーとは、まったくといっていいほど様子の違うシロモノだったのだ。
ならば最新の「プラスシックス」はどうかといえば、驚くほど真っすぐ走るし、驚くほど素直に曲がるし、驚くほど乗り心地がいい。普通に走らせる分には何のコツもいらないし、エアコンだって効くのでその気になればデートにだって使える。かなり一般的なスポーツカーに近づいた、といっていいだろう。
けれど、そうした要素を仮に優劣で語るなら、基本的に同じパワートレインを積む「スープラ」や「Z4」の方が一段も二段も優れている。プラスシックスには、どこか荒々しさのようなものが残っていて、ときどきそれが薫るのだ。いや、あえて残してるのかもしれない。なぜなら、それこそがモーガンだから。ほとんど1930年代のままの乗り味をつい昨日までといえるほど最近まで、信念を持ってファンに提供し続けてきた“称賛すべき偏屈さ”。新型を設計・開発するからといって、そこをきれいさっぱり捨て去ることなんてしないだろう。
僕はずっと、モーガンは“新車で買えるクラシックカー”をつくり続けたいのかと思っていた。でも、それは少し違っていたようだ。モーガンはきっと、自分と対峙する乗り物を、心で駆るスポーツカーをつくり続けたいのだ。プラスシックスの洗練は間口を広げるための手段のようなもので、強烈な速さはどちらかといえばスペシャルボーナスみたいなもの。きっとそういうことなのだ。
プラスシックスと一日付き合って、何だかそんなふうに感じたのだった。
(文:自動車ライター・嶋田智之)
[ガズー編集部]
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