【動画】ロールス・ロイス・カリナン 試乗インプレッション 試乗編
ロールス・ロイス初のSUV「カリナン」に、モータージャーナリスト島下泰久が試乗。ほかの高級車やSUVとは一線を画すという、その乗り味を動画でリポートする。
今回試乗したカリナンは「ブラックバッジ」。その名の通り、もともとの「シルバー地にブラック文字」を逆転させた「ブラック地にシルバー文字」の“RRバッジ”が与えられたこのモデルは、ほかにもハイグロスブラック仕上げのスピリット・オブ・エクスタシーのマスコットをはじめ、もともとクロームだった部分がすべてダーク仕上げとされ、専用の22インチアルミホイールを履くなど、全身“黒”で見せる仕様である。もともと迫力のある外観が、さらにすごみを増している。
思い出すのは2016年、ラスベガスで行われた「レイス ブラックバッジ」の国際試乗会に、日本からただ1人参加した時のこと。開発陣から聞いた、その世界観についての話はとても興味深いものだった。
彼らが言うには、ロールス・ロイスのユーザー層は成熟国から新興国へと広がっただけでなく、より若い年齢層にも拡大していて、しかも彼らは自らの個性をアピールするために、「ファントム」のようなクルマですらカスタムを施していたという。しかし、その中にはブランドのイメージにそぐわないものも多く、それなら自ら手本を見せてやろうと始まったのが、ブラックバッジのコンセプトだったというのだ。
面白いのはセレクターレバーに備わる「LOW」スイッチ。これは本来は読んで字のごとしのローギア選択用なのだが、ブラックバッジではこれを押すと、低音が強調された排気音を奏でるようになる。
ファントムやゴーストといった車名が、幽霊のように音もなく近づいてくることに由来する話からすれば、低音が強調されるというのは伝統に反する感もあるが、ロールス・ロイス言うところの、V12のエンジン音を誇り高く増幅する「バッソ・プロフンド」(男声の最低音部)は、確かに爆音を鳴り響かせるようなものとは一線を画する威厳に満ちた音色となっている。チャンスがあればこれは必聴と言っておきたい。
SUVを出すことも、ブラックバッジを設定することも、従来のロールス・ロイスの文法にはなかったことだろう。けれど彼らがやりたいのは、その時代のカスタマーに最上級の体験をもたらすことであり、歴史に拘泥することではない。だからこそロールス・ロイスは、現在進行形で「誰もが知る“超高級車”」の筆頭的な存在であり続けることができているわけだ。
(文:モータージャーナリスト・島下泰久)
[ガズー編集部]
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