【動画】ホンダe 試乗インプレッション 試乗編
「ホンダe」の開発ストーリーとしてメディアに紹介されている内容のひとつに、前輪駆動として開発がスタートしたものの、途中で市販型と同じリアモーター&リアドライブ方式に転換したというものがある。
この後輪駆動方式に切り替えた理由はふたつある。ひとつはオーバーハングが短いフォルムの実現、もうひとつはシティーコミューターで重要になる小回り性を高めるためだった。
でもそれ以外にも駆動方式による魅力が多いことが試乗で確認できた。似たようなパッケージングを持つ、ガソリンエンジン搭載のRR車「スマート・フォーフォー」「ルノー・トゥインゴ」などにも通じることだが、スポーツドライビングでなくてもその長所を味わえることを教えられた。
市街地でのドライブは発進停止が多い。信号が青になってスタートするたびに、リアタイヤが路面を蹴って進む様子が伝わってくる。発進直後から最大トルクを発生できるモーターだからこそ、街なかを流すようなシーンでも力強いトラクションが堪能できる。
先の信号が赤なのでブレーキを踏む。前後輪にバランスよく荷重をかけながら減速していく。そして交差点。ステアリングを切るとすっとノーズが向きを変え、曲がり終わってアクセルを踏むと再びリアタイヤがアスファルトを蹴って加速していく。
山道に行かなくてもこのレイアウトのうまみを味わえるし、4.3mという最小回転半径を実感するような裏通りに踏み込まなくても満足できる。リアモーター&リアドライブはシティーコミューターにこそ向いているのではないかと思える瞬間だ。
目の前に広がるウルトラワイドなディスプレイも、試乗によって評価が上がった部分だ。一つひとつの表示が大きめなので、純粋に見やすく扱いやすいし、両端の“デジタルサイドミラー”の表示にもすぐに慣れる。逆に、なぜ後側方の視界は昔からこうじゃなかったのか、と思ってしまうほど自然に使えた。
そして信号待ちや充電待ちなどで止まっている時間が長いからこそ、リビングの延長線上のようなインテリアに納得する。歩行者や自転車などが縦横無尽に行き交う都市内でクルマを運転するという行為は、正直言って気が休まる暇がない。だからこそリラックスできる空間づくりが生きる。
親しみやすいスタイリングの内側は、すぐれたシティーコミューターという目標に向けて考え抜かれた、デザインとエンジニアリングの結晶だった。
(文=モータージャーナリスト・森口将之)
[ガズー編集部]
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