新型ランドクルーザーの進化のポイントに寺田昌弘が迫る

優れたオフロード性能を誇る、トヨタの最上級SUV「ランドクルーザー」。最新型のボディーワークやシャシー構造、装備類にはどんな特徴があるのか? かつてダカールラリーを走破した寺田昌弘が解説する。

「陸の巡洋艦」とも言われるトヨタ・ランドクルーザー。1951年8月に「トヨタBJ型」として誕生してから70年がたち、累計の販売台数は1060万台。世界約170の国と地域の人々に愛され続け、「どんな道でも走り、生きて帰って来られるクルマ」を使命としてきた同モデルの新型が、2021年8月に登場しました。

1990年代、私がランドクルーザーに乗って、サハラ砂漠の奥地で人道支援活動をしていたとき、サハラの民は「日本人を初めて見たが、ランドクルーザーはよく目にする」と言っていました。70系に乗っていたのですが、これが日本の愛知県で生産されていることを伝えると「日本人は、とても丁寧で細かいところまで気配りができて、(クルマを)こつこつ励んで育てるんですね、私たちがラクダを育てるように」と言われました。

砂漠の奥地までの途中では「ランドローバー・ディフェンダー」や「日産パトロール(日本名:サファリ)」も見かけましたが、砂丘を越えてオアシスにあるこの村に到着したときにはランドクルーザーしかなかった。「ここではラクダとランドクルーザーだけが信頼できる乗り物です」。そう、村人が教えてくれました。

「信頼性・耐久性・悪路走破性」を鍛え続け、サハラ砂漠をはじめ、地球上の悪路を走破しているランドクルーザー。ただ、誕生当初は乗り越えられなかったことが2つありました。

ひとつ目は、“試験”。もともとこのクルマは、警察予備隊(現在の陸上自衛隊)の開発要請により開発されたのですが、日産や三菱も同様に未舗装路を走れる車両を試作し、採用されたのは三菱のもの。ただこの採用試験を乗り越えられなかったおかげで、警察予備隊の仕様に縛られることなく磨かれたといえます。後に北米・中米で人気を博し、「日本車は壊れにくい」という実績を積み上げ、オーストラリアやアフリカ、中東、ロシアなどの過酷な未舗装路でも活躍。“地球基準”で鍛え上げられるようになりました。

2つ目は“名前”です。当初の車名は「ジープBJ型」でしたが、「ジープ」が登録商標だったため、ジープやランドローバーといったライバルに負けない名前としてランドクルーザーというブランドネームが1954年に誕生しました。今では日本車で一番長い歴史を持つ車名となっています。

ランドクルーザーは現在、ステーションワゴン/ライトデューティー/ヘビーデューティーと3タイプをラインナップしていますが、今回試乗したモデルは14年ぶりにフルモデルチェンジしたステーションワゴンタイプで、しかもランドクルーザー初となる「GR SPORT」。世界中の過酷な道だけでなく、世界一過酷なラリーと称されるダカールラリーで鍛え上げられたモノがどれだけすごいか、皆さんと見ていきたいと思います。

(文:ジャーナリスト・寺田昌弘)

[ガズー編集部]

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