新型「DS 4」は、なぜ「世界で最も美しいクルマ」と評されるのか

今回ピックアップしたのは、フランス生まれのクロスオーバーモデル「DS 4」。母国のイベントで「世界で最も美しいクルマ」に選出されたデザインをはじめ、その特徴について解説する。

DSブランドのルーツといえる「DS 3」がフランスで発表されたのは2010年。このときのDSはシトロエンのプレミアムラインという位置づけだったが、好評を受けて、2015年にブランドとして独立した。

とはいえ、DSオートモビル設立当時は、ブランドとしてどこを目指すのかが見えにくかった。しかし、DS 4としては2代目となるこのモデルからは、明確なビジョンが感じられる。

そのエクステリアはエッジの効いた線や面を多用していて、やはり「アヴァンギャルド」という言葉が思い浮かぶ。それでいて、ひとつの美しい形にまとまっているのがさすがである。

ドライエやファセル・ヴェガなど、第2次世界大戦前後に存在したフレンチラグジュアリーカーの復権がDSブランドの使命だと聞いたことがある。でも単なる復刻版としてエレガンスを強調することなく、彼らが現役当時に掲げていた前衛精神をよみがえらせたところが素晴らしい。

多くの欧州プレミアムブランドとは違って、DSのインテリアは車種ごとに基本デザインが異なっている。それが、新しい芸術作品を次々に発表していくアーティストを思わせる。

それでも、先鋭的という方向性は共通だ。インストゥルメントパネル中央に並ぶシルバーの装飾でエアコンルーバーを隠したり、パワーウィンドウのスイッチをインストゥルメントパネルからドアトリムへと降りていくモールに配したりと、日本メーカーが思いつかなそうなディテールが端々に見てとれる。

SUV比率が高い最近のニューモデルのなかで、背が低めであるという点もDS 4の特徴といえる。それに合わせてか、フロントシートはDSブランドとしてはスポーティーな造形だが、優しく体を包み込むような着座感からは、フレンチラグジュアリーであることを実感させられる。

感心するのは、クーペ風のルーフラインを持ちつつも、リアゲートがさほど寝ていないため後席に身長170cmほどの人間が楽に座れること。荷室の容積も純内燃機関車であれば430リッターをマークする。

見た目のよさを追求しつつ、使いやすさも忘れない。その点ではフランス車らしいといえるし、デザインはアートとは違うことを理解していると思った。

(文:モータージャーナリスト・森口将之)

[GAZOO編集部]

他の試乗記情報はこちら

MORIZO on the Road