日本国内限定70台「GRカローラRZ“モリゾウエディション”」ならではの特別なモディファイを解説

「レースに勝つために鍛えたクルマを市販化する」ことを念頭に、さまざまな道を徹底的に走り込んで開発された「GRカローラRZ“モリゾウエディション”」。そのハイライトを島下泰久が解説する。

GRカローラについて話される際に、常にフィーチャーされる言葉がある。「野性味」がそれだ。

「カローラ スポーツ」の5ドアボディーに、「GRヤリス」に積まれて登場した直列3気筒1.6リッターターボエンジン「G16E-GTS」ユニットと、前後駆動力配分可変式のスポーツ4WDシステム「GR-FOUR」を積み込んだのが、このGRカローラというクルマだ。実はGRヤリスは、「ヤリス」に使われるGA-Bプラットフォームには後輪をエンジンで駆動する4WDシステムが設定されないことから、シャシーの後ろ半分にカローラが使うGA-Cプラットフォームを使っている。よって開発は、それほど苦労もなく行われた……ということは、やはりなかった。

一番の課題となったのは、最高出力272PS、最大トルク360N・mというGRヤリスと同じスペックのまま、このエンジンを200kg近くも重い車体に組み合わせたことによる、動力性能のパンチのなさ。モリゾウ選手ことトヨタ自動車の豊田章男現会長は、最初に乗った時に「これは買い物グルマだね」と評したという。もちろん、それは「満足させられなかった」ということだ。

開発陣は奮起してエンジン改良に着手。ピストンの変更、排気側カムシャフト締結部の強化などを実施し、特徴的な3本出しマフラーを採用したうえでブーストアップを図り、結果として最高出力を304PSまで高めてみせた。

全域で力強い動力性能、そしてそれに見合った懐深いコントロール性を備えたシャシーの組み合わせにより、GRカローラはGRヤリスとはまた違った個性を備えたスポーツモデルに仕上げられた。4ドア・5シーターのパッケージングも含めて、間口の広いGRモデルといえる。

このGRカローラの標準モデル「RZ」をベースに、モリゾウ選手の求めた野性味の究極の姿を実現したのがGRカローラRZ“モリゾウエディション”である。内容はかなりのハードコア。よって限定台数は世界で500台、日本で70台という超レア車なのである。

(文:モータージャーナリスト・島下泰久)

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