スーパー耐久の水素エンジンカローラが液体水素にスイッチ。航続距離は気体の1.7倍に

  • 32号車ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept

    32号車ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept

2023年シーズンの開幕を前に、2月23日に富士スピードウェイで公式テストが行われたENEOS スーパー耐久シリーズ2023 Powered by Hankook。そこで、今年で3シーズン目を迎えるORC ROOKIE Racingの32号車ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptが、かねてより開発を進めていた「液体水素」を導入している。

2021年の富士スピードウェイで行われた24時間レースでデビューし見事に完走を果たした水素エンジンカローラ。2022年シーズンも引き続き参戦し、水素エンジンの効率化と給水素の時間短縮に取り組んできた。

2年間の参戦で気体の水素を利用した水素エンジンの手の打ち化はだいぶ進んだというが、航続距離や大型な設備と作業エリアが必要であることなど、今後の実用性への課題も同時に浮き彫りになってきた。
そこで、検討されてきたのが気体水素に対してエネルギー密度が約1.7倍高いという液体水素の使用だ。エネルギー密度が1.7倍ということは単純に言えば航続距離も1.7倍に伸びるということになるだろう。

  • 2023年のROOKIE Racingは3台体制で参戦

    今シーズンのORC ROOKIE Racingは3台体制。水素エンジンカローラにカーボンニュートラル燃料のGR86、そしてST-XクラスにAMG GT3で参戦

2022年シーズンに気体水素を使用して富士スピードウェイで行われていたレースでは、パドックの一番1コーナー側の駐車スペースを給水素エリアとして専有していた。だが液体水素となることで、今回の公式テストではそれほどの広大なエリアを必要としなくなった。
ピット前のパドックエリアに運搬用のトラックと給水素時にタンク内で気体となった水素を排出する設備を配置。そして、実際に給水素するシステムをピット内に設置することができるようになり、大幅に省スペース化をすることができている。

そして、ピット内に給水素のシステムが設置されているということで、通常のレーシングカー同様ピット前での給水素が可能になったのだ。これまでは、給水素エリアがピットと遠く離れていたサーキットもあり大きなタイムロスとなっていたが、航続距離とあわせ周回数が大きく伸びることになりそうだ。

また、液体水素を運ぶローリー1台で、鈴鹿サーキットでの5時間レースを想定すると、7台分がレースウィークを走るのに必要な量を賄うことができるという。
1月に開催された東京オートサロン2023で行われたROOKIE Racingのトークショーで、ROOKIE Racingのオーナーでもあるモリゾウ選手が、「水素エンジンクラスができるかもしれない」と語っていたが、それが実現可能であるということを実感することができた。

これまで多くのテスト走行を重ね、この公式テストでも車両側のトラブルも含めいくつかの課題が出てきているという。
しかし、それはより前進するための課題であり、この水素エンジンカローラ開発の陣頭指揮を執るGAZOO Racing Companyの車両開発部 高橋智也部長(3月1日よりGAZOO Racing Companyのプレジデントに就任)も「開発は順調に進んでいると思います。まだ何か不測の事態が起きる可能性はありますが、開幕戦の鈴鹿ではこの液体水素を使って参戦したいと思います」と意気込みを語ってくれた。

まだテスト段階とのことで、液体水素での具体的な数値やそれぞれの設備に対しての公の説明機会は設けられなかった。開幕戦となる鈴鹿サーキットで、液化水素を使用した際の数値や情報、また気体水素の時からどのような進化が訪れるのか取材のうえお届けしていきたい。

(文:GAZOO編集部 山崎 写真:堤晋一)

  • 万が一水素が漏れた際に使用されるタービンのついたハイラックス

    こちらは、万が一水素が漏れてしまった場合、外気で急激に温度が上がった水素は白い煙となって充満してしまう。その際、この巨大なタービンのついた車両を出動させ、水素を拡散させてドライバーの救助などを行うという。また水素が漏れたままの状態でも拡散させながら牽引することも可能だ。「ちょっとオーバースペックだったかもしれない」というその風力は、全開で作動させるとハイラックスが動いていくほどの風力があるという

  • 液体水素の給水素のイメージパネル

    2022年の富士スピードウェイでのレースの際に展示されていた、液体水素の給水素イメージ

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