ボルボで一番小さな電気自動車EX30
かつてないボルボのコンパクトカーとして、2007年に日本でも発売された「C30」。私は、そのデザインが大好きでした。1920年代にボルボを創設した2人の青年は、時に温かく、時に厳しい大自然と共生するスウェーデン人のためのクルマを夢に描き、「ボルボはエンジニアのためのクルマではない。ユーザーのためのクルマである」という強い信念を持っていたといいます。だから多くのボルボ車のデザインは、見るからに頑丈そうでありながら温和なところがあったものです。
でもそんななかでC30のデザインは異彩を放っていて、1950~1970年代に“刺激”という新たなボルボの魅力をもたらした「P1900」「P1800」シリーズというスポーツモデルに通ずるものがありました。
チーフデザイナーを務めたラマーレ氏によれば、スウェーデンにはコントラストという財産があって、独創的な外観でも使うと人に優しかったり、古典的な外観でも内側に遊び心が隠されていたり……そんな表現を突き詰めた一台だったそうです。
EX30のデザインを見ていると、ふと、そんなところが似ているように感じました。フロントマスクは、エンジンを冷やす必要のない電気自動車らしいシールドデザインを採用しつつ、ボルボ伝統の“トールハンマー”ライトが新たな解釈とともに採用されていたり、ライトから下へと続く黒いグラフィックは、SUVっぽくタフな雰囲気を醸しつつも空力性能に貢献するエアカーテンとなっていて、ホイールアーチまで効率よく空気を流すことができたり。リサイクル性をアップするためにあえて塗装をしない樹脂パーツや、製造過程の負荷を減らすフレームレスのサイドミラーなどもこだわりを感じるところです。
インテリアはもっとコントラストが効いていて、見た目はぬくもりがあって洗練されているのに、多くの部分にペットボトルのリサイクル素材や自然由来の素材、製造過程で発生する端材や廃棄物から作られた素材を使っているというから驚き。言われなければ絶対にわからない質感だと思います。
EX30は、ボルボで一番小さな電気自動車。そのデザインに込められた思いをたどりながら眺めると、また新たな魅力が伝わってくるのではないでしょうか。
(文:カーライフ・ジャーナリスト・まるも亜希子)
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まるも亜希子さんが解説するボルボEX30の注目ポイント
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