レクサスNX 試乗 スポーツギア(Sports Gear)と呼ぶにふさわしい走りと装い
2014年7月に発表されたレクサスNXのメディア試乗会に参加した。レクサス初の新開発ターボエンジンを搭載したこのコンパクト・クロスオーバーSUVの開発責任者である加藤武明チーフエンジニアの取材をしたときから、筆者はこのクルマに乗ることをすごく楽しみにしていた。なぜなら、加藤CEのクルマに対する考え方やこだわりにとても共感できたからである。もっと分かりやすくいえば、「(僭越ながら)趣味が合う。この人が開発したクルマならぜひ乗ってみたい」と思ったのである。トヨタMR2とマツダ・ロードスターが愛車という加藤CEとはロードスター・オーナーというつながりでも親近感があった。
筆者はいまロードスターとプリウスPHVの2台を所有している。ただ、近年はクルマに乗る機会が減ったので、ロードスターは友人宅に里子に出している状態であり、友人の娘さんの愛車になっている。友人とは「乗りたいときにはいつでも返してもらえる」という約束で貸し出しているのだが、すっかり彼女に気に入られたようで、いままで車検や点検以外の用事で帰ってきた試しがない(笑)。しかし、あのクイックなハンドリング、マニュアルならではのクルマを操っているという操縦感覚、そして1600ccの非力なエンジンながらよく回るエンジンと心地よいエキゾーストノートに魅了されて、乗る機会が少ないとはいえ、手放すことができずにいる。彼女とは目下、粘り強く交渉中である。
もう一台のプリウスPHVは主に仕事で使っている。やはり最大の魅力は圧倒的な低燃費である。筆者は初代からPHVまで4台のプリウスを乗り継いできたが、やはりPHVの燃費は歴代最高である。自宅に充電設備を設置せず、基本的に通常のHV車として乗っているがそれでもその燃費はすごい。また、ときどき、スーパーの駐車場で充電したり、軽井沢のような山道を走ると下り坂で勝手に充電してくれるので時々、EV走行も楽しんでいる。そしてHVならではの加速、とくに走り出しの滑らかさ、パワフルさは代え難い魅力である。タイヤを17インチに換えているので、高速走行も安定しているし、峠道もキビキビと上り、降りていける。だからこれも手放せないでいる。
そんな筆者の2台所有の悩みを「もしかしたら、このクルマが解消してくれるのではないか?」加藤CEの話を聞いていてNXにそんな期待を抱いた。ロードスターとプリウスPHVの双方の走りの魅力を兼ね備え、人や荷物を運ぶという点でも十分のスペースと快適性があり、そして何よりもレクサスならではのプレミアム感がある。「いっそのこと、ロードスターとプリウスPHVを手放して、NXに乗り換えてもいいかも?」「SUVは乗ったことないから、次のクルマはSUVでか?」そんな下心をもって、「Premium Urban Sports Gear」がコンセプトのNX試乗会に参加した。そのコンセプトは筆者のニーズにぴったり合致する。なので、極めて私的な「クルマ選び」の視点も交えながら、このインプレッションをお届けする。
試乗した車:
NX300h “version L” 2WD(FF) /NX300h “F-SPORT” AWD/NX200t “F-SPORT” AWD/NX200t 2WD(FF)
レクサスならではのおもてなしに感動
- 最初に試乗したNX200t “F-SPORT” AWD。ボディカラーはソニッククォーツ。薄さ15ミクロンのベース層のうち、わずか4ミクロンの層にきめ細かく並びを整えた光輝材を敷きつめるソニック技術により、ホワイトでありながら、これまでにない強い反射と陰影を表現。クォーツ(水晶)のような硬質な輝きを放ち、あらゆる光のもとでボディの抑揚を際立たせる。
まず最初に試乗したのは「NX200t “F-SPORT” AWD」。これはカタログ段階で筆者が一番欲しいと思っていたグレードである。今回の試乗では4台まで乗ることができる。しかし、乗りたいクルマには乗れるときに乗っておかねば…。そう考えて、迷わずこのクルマをチョイスした。
さて、いよいよ試乗である。クルマのカラーはソニッククォーツと名付けられた新色(白)。光の反射を巧みに操る、レクサス独自の先進塗装技術が生み出した透明感と陰影感を合わせもつホワイトである。光のあたる角度や陽射しの強さや光の種類によってさまざまな表情を生み出す。クォーツ(水晶)というだけあって、カチッとした硬質な感じもでていて、凛々しく精悍なNXのボディにはよく映える。これはなかなか良いホワイトである。
参考までに今回、実車をみて、個人的に気になった色はこのソニッククォーツに加え、ソニックチタニウム、レッドマイカクリスタルシャインの3色だった。しかし、その他の色もなかなか捨てがたく、いざ購入するとなれば、きっとおおいに悩むことになるだろう。
クルマに乗り込むにあたって、まずはカメラなどの機材を後部の収納スペースに入れようと、リアのバッグドアに手をかける。いつもの癖で、そのまま上に持ち上げようとすると、技術説明員の人から「そのままで大丈夫ですよ」と一言。「何のこと?」と思ったら、自動でそのままドアが持ち上がっていく。「すげー!」。ゴルフバッグが3つ横向きで余裕で入るという荷室の広さ以上に、この機構に驚いた。もちろん、閉めるときもボタン一つでOKである。
クルマに乗り込んだときもそうである。パワーボタンを押すと、自動的にシートポジションが設定した位置に移動し、ハンドルが手前に降りてくる。まるでサンダーバードの世界である。乗降時はシートが下がり、ハンドルがあがっているのですごく乗り降りが楽。かなりお腹が出ている筆者のような体型の人にはありがたい。
また、パワーボタンを押した瞬間に、一斉に計器類が点灯し、エンジンが始動。眠っていたクルマがパッと目覚めて、コックピットの中が「さあ、走るぞ!」という雰囲気に変わる。この辺の演出はかつてLFAを試乗したときと同じだ。この静から動への演出も含めて、クルマに乗り込んだときのおもてなし感はじつにすばらしい。いたく感動した。
- 最初に試乗したNX200t “F-SPORT” AWD。ボディカラーはソニッククォーツ。薄さ15ミクロンのベース層のうち、わずか4ミクロンの層にきめ細かく並びを整えた光輝材を敷きつめるソニック技術により、ホワイトでありながら、これまでにない強い反射と陰影を表現。クォーツ(水晶)のような硬質な輝きを放ち、あらゆる光のもとでボディの抑揚を際立たせる。
開発者のこだわりがぎっしり詰まったコックピット
そして「クルマのポテンシャルを最大限に引き出すスポーツギアとして、人との接点のありかたを考え抜いた」とインタビューで加藤CEが語っていたが、実際に運転席に座ってみるとその意味がすごく理解できた。ハンドルをはじめ、インパネやシフトレバーは革で覆われ、赤いステッチはさながらLFAのコックピットを彷彿させる。ニーパッド部分のLFAボルトを確認し、思わずニンマリしてしまった。「やってんなあ」。インタビュー時の加藤CEの悦に入って語る顔が思い出された。
人の手や肌が触れる部分にはやわらかくしなやかな素材・革調の質感を施し、インパネに力強くはまり込んだセンターフレームなど骨格が現れる部分は金属の質感で強調。この使い分けによるコントラストが実に見事。この辺の革と金属のコントラストと調和は高級腕時計に相通じる部分が伺える。まさしく「Gear」という名にふさわしい仕上がりとなっている。
とくにF-SPORTでは専用のディンプル本革ステアリング、本革シフトノブ、アルミ製スポーツペダル&フットレストが採用されており、さらにホワイトのリングをあしらった専用デザインのメーター、さらに中央のマルチインフォメーションディスプレイには油温計、油圧計、ブーストメーター、Gモニターなどが表示され、ターボチャージャーのブースト状況や加速時、コーナリング時のG<重力加速度>などを視覚化し、クルマとの一体感を生み出す。F-SPORTには加藤CEのこだわりが凝縮されていると感じた。やはり、購入するなら(価格のことはさておいて)F-SPORTをチョイスしたいと思った。
また、センターフレームとステアリング、そしてドアに配置されているボタン類もじつに整然とすっきり、そして美しく、それでいて分かりやすく使いやすい位置に配置されており、ここにも加藤CEの強いこだわりが伺えた。適切な運転姿勢のまま、目線を下に移すことなくナビやオーディオなどの操作が直感的にできるリモートタッチにタッチパッド式が採用されていて、これまた実に使いやすく、スマートである。さらに、敢えてダイヤル式になっていたドライブモードセレクトスイッチ(詳しくは後述)。これがセンターフレームのスイッチ類が配置されているエリアにあってデザイン的にじつにいいアクセントになっており、さらに(ボタン式でなく)ダイヤル式なので、運転しながら視線を移すことなく操作が可能である。シフトレバーのすぐ横というポジションも絶妙である。こんなところにも、いちいち「やってるなあ」と感心させられる。これらを全部紹介していては切りがない(笑)
後部座席も実に広く快適である。なんでもRXに比べて全長は短いにも関わらず、後部座席の足下のスペースは広くなっているそうだ。この後部座席は6:4分割で倒すことができ(F-SPORTでは運転席とラゲージルーム内のスイッチで操作可能)、荷物の数や大きさに合わせて荷室スペースを変えることができる。
NXはSUVにしては全高が低く、アグレッシブなフォルムが特徴であるが、それでいて、人と荷物を運ぶための広く快適な空間もしっかり確保されている。ただ、後部座席の真ん中に座るとさすがにちょっと頭がつかえたが、まあ、それくらいはここではよしとしよう。
[ガズー編集部]
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