レクサスNX 試乗 スポーツギア(Sports Gear)と呼ぶにふさわしい走りと装い  ― 後編 ―

SUVの皮をかむったセダンの走り

「スピンドルグリルを起点とするシャープなキャラクターラインは、キャビンの前後を大胆に絞り込んだボディと力強く張り出したホイールフレアの稜線を滑らかに融合させ、陰影の効いた深みのあるフォルムを創出。」(以上、車両カタログから引用)
「アグレッシブな躍動感を全身から放つ、NXの独創的なプロポーション。スピンドルグリルを起点とするシャープなキャラクターラインは、キャビンの前後を大胆に絞り込んだボディと力強く張り出したホイールフレアの稜線を滑らかに融合させ、陰影の効いた深みのあるフォルムを創出。」(以上、車両カタログから引用)
「フロントからしなやかに伸び上がるルーフラインと相まって、スペーシャスな空間の輪郭を立体的に描き出す。凝縮されたダイナミズムと高いアジリティが内側からみなぎる、美しい抑揚。視点を移すたびに新たな表情を見せ、強い印象を残します」(以上、車両カタログから引用)
「フロントからしなやかに伸び上がるルーフラインと相まって、スペーシャスな空間の輪郭を立体的に描き出しています。凝縮されたダイナミズムと高いアジリティが内側からみなぎる、美しい抑揚。それは視点を移すたびに新たな表情を見せ、強い印象を残します」(以上、車両カタログから引用)

​ 本来であれば、ここでエクステリアについても言及すべきところであろうが、NXがかっこいいのはいまさらご紹介するまでもなく、自動車評論家でもない筆者の乏しいボキャブラリーと拙い表現ではご紹介しきれないので、ここでは割愛させていただく。写真でお分かりいただけるようにどこを切り取ってもかっこいい、そして、細部にまでこだわり抜かれたデザインとなっていうのはいうまでもない。
 さて、ギアのレバーをD(ドライブ)に入れると、自動的にパーキングブレーキが解除された。いちいち感動するとこではないのかもしれないが、感動した。いよいよ発進である。いつもHV車に乗っているのでHV特有の音もなくスーッと滑り出していくような感じとは異なるが、それでも滑らかで上質な走り出しである。いつもより運転席の位置が高く、視界が違う。ちょっと上から見ている感じで気持ちいいし、何よりも運転しやすい。
 また、全長4630mm×全幅1845mmとプリウスPHVより全長で150mm、全幅で100mm大きいが、その大きさを全く感じさせない。むしろコンパクトな感じさえする。最近、仕事の関係でトヨタのポーナム35などプレジャーボート(クルーザー)に乗る機会が多いが、この運転席から見た視界や操作感、滑らかな走り出しなどはちょうどプレジャーボートのそれによく似ている。街をゆったりとクルージングするプレミアム・アーバン・クルーザーといった感じである。
 今回新しく開発された6速 Super ECTとエンジンの相性がとても良く(新開発だから当たり前か?)、じつに滑らかに加速していく。そして、郊外の広い道に出たところで、アクセルをぐいっと踏み込むと、ターボが効いて、グーンと伸びる。実に良く回るエンジンだ。乾いたエキゾーストノートも心地よい。
 クルマを運転している感覚はセダンそのもの。インタビューで加藤CEが「レクサスのセダン群がやってきた走りを継承している」との評価をもらったという話があったが、まさにそれを筆者も感じた。
 ただ、その後、カーブが細かく続き、ヘアピンカーブもある峠道に入ったところで、ちょっと評価が変わる。思ったほど、きびきび走らないのである。なんか、かったるい。
 以前のクラウン・ロイヤルHVの試乗では箱根の道で助手席の親父が嘔吐してしまったという筆者自慢の走りがここではできない。前日、同じコースをプリウスPHVで走っていただけに、その差に違和感を覚え、物足りなさを感じた。加えて、ターボが効くとグーンと走りが良くなるのであるが、そこまでの間がどうもゆったりしているような気がして正直、不満だった。すごく期待していた200t F-SPORTだけに「こんなはずじゃあ…」と、ちょっと残念な気がしていた。
 しかし、こうした不満は後に筆者の理解不足が原因であることが判明する。詳しくは後ほど。

「スピンドルグリルを起点とするシャープなキャラクターラインは、キャビンの前後を大胆に絞り込んだボディと力強く張り出したホイールフレアの稜線を滑らかに融合させ、陰影の効いた深みのあるフォルムを創出。」(以上、車両カタログから引用)
「アグレッシブな躍動感を全身から放つ、NXの独創的なプロポーション。スピンドルグリルを起点とするシャープなキャラクターラインは、キャビンの前後を大胆に絞り込んだボディと力強く張り出したホイールフレアの稜線を滑らかに融合させ、陰影の効いた深みのあるフォルムを創出。」(以上、車両カタログから引用)
「フロントからしなやかに伸び上がるルーフラインと相まって、スペーシャスな空間の輪郭を立体的に描き出す。凝縮されたダイナミズムと高いアジリティが内側からみなぎる、美しい抑揚。視点を移すたびに新たな表情を見せ、強い印象を残します」(以上、車両カタログから引用)
「フロントからしなやかに伸び上がるルーフラインと相まって、スペーシャスな空間の輪郭を立体的に描き出しています。凝縮されたダイナミズムと高いアジリティが内側からみなぎる、美しい抑揚。それは視点を移すたびに新たな表情を見せ、強い印象を残します」(以上、車両カタログから引用)

全域で豊かなトルクを生み出すHVのパワフルな走りに魅了される

ナビの下のちょっとした隙間にスマートフォンなどを収納可能なスペースがある。こうしたちょっとした、でもとってもうれしい配慮がこのクルマの随所にある。
​ナビの下のちょっとした隙間にスマートフォンなどを収納可能なスペースがある。こうしたちょっとした、でもとってもうれしい配慮がこのクルマの随所にある。
NX300h“F-SPORT”AWDに装備されていたパノラミックビューモニター(左右確認サポート付)。上から車両を見下ろしたような映像をナビ画面に表示。また、発進時、画面内に側方から現れる人や車両を検知すると黄色の枠と音で知らせてくれる。これはかなり便利!
NX300h “F-SPORT” AWDに装備されていたパノラミックビューモニター(左右確認サポート付)。車両の前後左右に搭載した4つのカメラから取り込んだ画像を継ぎ目なく合成し、上から車両を見下ろしたような映像をナビ画面に表示。また、発進時、画面内に側方から現れる人や車両などを検知すると黄色の枠と音で知らせてくれる。これはかなり便利!

 次に試乗したのは「NX300h “versionL”2WD(FF)」。ハイブリッドのモデルだ。いつもHV車に乗ってるからだろうか、やっぱりこの走りはしっくりくる。
 静かでスムーズ、それでいて力強い、陸上の短距離選手のようなスッと出て行く走り出し、そして、アクセルを踏み込んだときの加速感、そして何よりも峠道での軽快な走り。コーナーを抜けた出口で瞬時に加速し、スキーのパラレル滑降のようにつづら折りの坂道を駆け抜けていく気持ちよさ、登りの峠道でもぐいぐいと登りコーナーを回っていく力強さ。「ああ、やっぱりHVの走りがいいな」と改めて実感した。
 さらに3台目には「NX300h “F-SPORT” AWD」を試乗。もはやこの走りは「パーフェクト!」と感心させられるものだった。特に筆者が大好きな峠道でその差は歴然だった。F-SPORTならではの足回りの強さ、粘り、剛性をさらに高めた強靭なボディはアグレッシブな走りの要望にしっかりと応えてくれる。加えて、後述する「SPORTモード」を選択すると、ハイギアのままコーナーに入っても、シフトダウンすることなくアクセルを踏み込むだけでバーンと加速していく。つまり筆者のシフトチェンジの至らなさをしっかりカバーしてくれるのである。
 そして、4WDだからコーナリング時の安定感は抜群。この電気式AWDシステムではフロントモーターとは独立したリアモーターによって後輪を駆動させている。つまり、通常のFFハイブリッドパワートレーンに加えて、後ろのタイヤのそれぞれにモーターがついていて、雪道や氷路など滑りやすい路面での発進性、走行安定性をアシストするとともに、コーナリング時には車両の走行状態にあわせ、前後トルク配分を最適化し、操縦安定性を実現する。「運転がうまくなったのでは」と錯覚してしまうほどだった。
 この時点では「やっぱり自分の好みはNX300h“F-SPORT” AWDだな」と思っていた。

ナビの下のちょっとした隙間にスマートフォンなどを収納可能なスペースがある。こうしたちょっとした、でもとってもうれしい配慮がこのクルマの随所にある。
​ナビの下のちょっとした隙間にスマートフォンなどを収納可能なスペースがある。こうしたちょっとした、でもとってもうれしい配慮がこのクルマの随所にある。
NX300h“F-SPORT”AWDに装備されていたパノラミックビューモニター(左右確認サポート付)。上から車両を見下ろしたような映像をナビ画面に表示。また、発進時、画面内に側方から現れる人や車両を検知すると黄色の枠と音で知らせてくれる。これはかなり便利!
NX300h “F-SPORT” AWDに装備されていたパノラミックビューモニター(左右確認サポート付)。車両の前後左右に搭載した4つのカメラから取り込んだ画像を継ぎ目なく合成し、上から車両を見下ろしたような映像をナビ画面に表示。また、発進時、画面内に側方から現れる人や車両などを検知すると黄色の枠と音で知らせてくれる。これはかなり便利!

SPORTモードの愉しさに魅了された

200tにはアイドリングストップ機能が搭載されていて、燃費性能の向上に貢献。マルチインフォメーションディスプレイを切り替えるとストップ時間が表示される。
200tにはアイドリングストップ機能が搭載されていて、燃費性能の向上に貢献。マルチインフォメーションディスプレイを切り替えるとストップ時間が表示される。
ブラインドスポットモニター。走行中、ドアミラーでは確認しにくい後側方エリアに存在する車両を検知すると、ドアミラーの端のインジケーターが点灯。ウインカーを操作した状態で車両を検知するとインジケーターが点滅し、より注意を喚起する。
ブラインドスポットモニター。走行中、ドアミラーでは確認しにくい後側方エリアに存在する車両を検知すると、ドアミラーの端のインジケーターが点灯。ウイン カーを操作した状態で車両を検知するとインジケーターが点滅し、より注意を喚起する。さすがに運転しながら、その状態の撮影は無理でした(笑)
音声でナビの目的地設定や情報検索ができる音声対話サービス「エージェント」やルートを先読みして必要な情報を表示する「エージェント+」、アプリをナビにダウンロードできる「Apps(アップス)」など新サービスが追加され、バージョンアップしたG-LinkがNXから
音 声認識機能を活用しクルマ(ナビ)と会話ができ、音声でナビの目的地設定や情報検索ができる音声対話サービス「エージェント」や行き先やルートをクルマ (ナビ)が先読みして必要な情報を検索し表示する「エージェント+」、さらにはスマートフォンのように必要なアプリをナビにダウンロードして使える 「Apps(アップス)」など新しいサービスが追加され、バージョンアップしたG-LinkがNXから初めて採用されている。実際に使ってみたが、音声認 識も正確で応対も的確だった。

 しかし、最後4台目にNX200t 2WD(FF)を試乗して、その評価は大きく揺れることになる。実はNX300h“F-SPORT” AWDに乗る前に、エンジンの説明セッションがあり、その際に加藤CEにお会いしたので、NX200t“F-SPORT” AWDに試乗して感じた「エンジンはよく回るけど、ターボが効くまでが、かったるい」(実際はこんな失礼ないい方はしていない。)という率直な感想を伝えると「そうですか。ECOとかNOMALモードでは、燃費優先の設定になっているので、ギヤをどんどん早めに高くしていきます。だから、なかなかターボがかからないんです。今度試乗されるときはドライブモードセレクトをSPORTモードに切り替えてみてください。きっと感じが変わると思います。加えて、燃費は落ちちゃいますが、マニュアルにして、2速でぐーっと引っ張ってみてください。するとターボが効いてグンと加速します。」とのアドバイスをいただいた。なるほど、そういうことだったんだ。
 最初にNX200t “F-SPORT” AWDに乗ったとき、このドライブモードセレクトの丸いスイッチの存在にはもちろん気づいていたが、なにせ最初の一台だったので、チェックするところが多くて、1時間の試乗時間ではいっぱいいっぱいで、モードの切り替えを実際に試すとこまではできなかった。それで「よし、早速やってみよう」と、加藤CEの話を聞いた直後に乗ったNX300h“F-SPORT” AWDで試してみたら、前述したように抜群の走りを体感できたわけである。

さて、NX200t 2WD(FF)である。筆者はNX300h“F-SPORT” AWDの走りを存分に楽しんだ後、最後の試乗車に、あえて200tシリーズの中では一番シンプルで、値段的にもお求めやすいとは…、庶民の収入ではいい難いがほかのものに比べると一番安いこの一台を選択した。個人的にはかなり本気モードの試乗となった。もちろん、ドライブモードは最初からSPORTモード+マニュアルである。
 すると、どうだろう、つづら折りの峠道の登り坂、下り坂の両方で感じていた不満(かったるさ)は一気に解消された。コーナーの出口でぐっと踏み込むと的確にエンジンが呼応してくれて、気持ちよくコーナーを抜けていくことができる。とくに登り坂では筆者の下手なマニュアル操作よりもSPORTモードにして新開発の6速 Super ECTに任せた方がよっぽど速かった(笑)それだけ、この6速オートマチックトランスミッションは優秀だということである。
 ちなみにマニュアルといっても通常のマニュアルトランスミッションが採用されている訳ではない。マニュアル感覚のシフトチェンジを可能にするシーケンシャルシフトマチックやハドルシフト、コーナリングでの変速制御を最適化するG AI-SHIFT制御が採用され、このキビキビとした走りが実現される。ステアリングについているパドルの操作でギアチェンジをするが、途中でこの操作を放棄すると、自動的にオートマに切り替わる。筆者の場合は無理に高いギアでコーナーに入ってしまい、トルク不足になったとき、強制的にオートマに切り替わった。ちょっと悔しかったが、素直に「これはすごい」と感心した。

200tにはアイドリングストップ機能が搭載されていて、燃費性能の向上に貢献。マルチインフォメーションディスプレイを切り替えるとストップ時間が表示される。
200tにはアイドリングストップ機能が搭載されていて、燃費性能の向上に貢献。マルチインフォメーションディスプレイを切り替えるとストップ時間が表示される。
ブラインドスポットモニター。走行中、ドアミラーでは確認しにくい後側方エリアに存在する車両を検知すると、ドアミラーの端のインジケーターが点灯。ウインカーを操作した状態で車両を検知するとインジケーターが点滅し、より注意を喚起する。
ブラインドスポットモニター。走行中、ドアミラーでは確認しにくい後側方エリアに存在する車両を検知すると、ドアミラーの端のインジケーターが点灯。ウイン カーを操作した状態で車両を検知するとインジケーターが点滅し、より注意を喚起する。さすがに運転しながら、その状態の撮影は無理でした(笑)
音声でナビの目的地設定や情報検索ができる音声対話サービス「エージェント」やルートを先読みして必要な情報を表示する「エージェント+」、アプリをナビにダウンロードできる「Apps(アップス)」など新サービスが追加され、バージョンアップしたG-LinkがNXから
音 声認識機能を活用しクルマ(ナビ)と会話ができ、音声でナビの目的地設定や情報検索ができる音声対話サービス「エージェント」や行き先やルートをクルマ (ナビ)が先読みして必要な情報を検索し表示する「エージェント+」、さらにはスマートフォンのように必要なアプリをナビにダウンロードして使える 「Apps(アップス)」など新しいサービスが追加され、バージョンアップしたG-LinkがNXから初めて採用されている。実際に使ってみたが、音声認 識も正確で応対も的確だった。

 という訳で、NX200t 2WD(FF)で十分じゃん!というのが筆者の感想である。もちろん、F-SPORTでSPORTモードにしたら、きっともっとすごくエキサイティングでエモーショナルな走りになるのは違いない。それにあのかっこいいインテリアやF-SPORT専用のパーツや意匠が魅力的なのは言うまでもないが…。さらに、あのNX300h “F-SPORT” AWDのハイブリッドの特性を最大限に引き出した走りも魅力である。
 購入予算に余裕がある人はきっと、どのモデルにするか大いに悩むことだろう。さらに、内外装のカラーリングも多彩なので、悩みはつきない。「Premium Urban Sports Gear」は購入する人を愉しく悩ませてくれる、そして、それを自由自在に操る歓び、所有する歓びをもたらしてくれる名車であると実感した。

諸元表

寸法◎全長:4,630mm 全幅:1,845mm 全高:1,645mm
エンジン(NX300h)◎型式:2AR-FXE(直列4気筒DOHC)
総排気量:2,493cc 最高出力:112kw(152ps)/5,700r.p.m.
最大トルク:206N・m(21.0kgf・m)/4,400〜4,800r.p.m.
エンジン(NX200t)◎型式:8AR-FTS(直列4気筒DOHCインタークーラ付ターボ)
総排気量:1,998cc 最高出力:175kw(238ps)/4,800〜5,600r.p.m.
最大トルク:350N・m(37.5kgf・m)/1,650〜4,000r.p.m.
トランスミッション(NX300h)◎電気式無段変速機
トランスミッション(NX200t)◎6 Super ECT(スーパーインテリジェント6速オートマチック)
定員◎5名

[文・写真:宮崎秀敏(株式会社ネクスト・ワン)]

[ガズー編集部]