【マツダ CX-5 雪上試乗】過酷なステージで、非凡な実力の一端を見せつけた…片岡英明

マツダCX-5雪上試乗
マツダの屋台骨を支える主力モデルに成長したクロスオーバーSUVの『CX-5』が初めてのモデルチェンジを断行した。初代が大ヒットしたこともあり、2代目は正常進化の方針をとっている。エクステリアは上質さが加わった精悍なデザインになり、躍動感も増した。ソウルレッドプレミアムメタリックを進化させた新色のソウルレッドクリスタルメタリックも美しい。

インテリアは手触り感などにもこだわり、心地よさ、居心地のよさを向上させている。大ぶりなフロントシートは座り心地がいい。また、リアシートの座り心地もよくなった。2段階のリクライニング機構を採用し、リアシートヒーターを設定したのも朗報だ。ウインドーガラス反射タイプになったアクティブ・ドライビング・ディスプレイも見やすい。運転のしやすさも向上している。先代より斜め方向と後方の視界がよくなり、Aピラーを後退させているから頭まわりの圧迫感も減った。

パワーユニットは、先代と同じだが、直噴ガソリンエンジン、2.2リットルのディーゼルターボともに大幅な改良を行っている。主役のディーゼルターボは、制御やギア比の変更によって低回転から気持ちよくパワーが盛り上がり、厚みのあるトルクを発生するようになった。応答レスポンスも鋭くなっている。6速ATのつながりも滑らかだ。アクセルを踏み込むとタイムラグなしに軽やかな加速を見せ、クルージング時の静粛性も大きく向上した。ナチュラルサウンドスムーザーなどの採用による静粛性向上の効果も分かりやすい。

ハンドリングも大幅に洗練度を高めている。北海道の士別剣淵にあるテストコースで雪道を走ってチェックしたが、シャシー性能を強化し、サスペンションを磨き上げた効果は絶大だった。「G-ベクタリングコントロール」の採用と相まって、クルマがドライバーの意思通りに軽やかに動く。同じ道を走っても、先代より運転がうまくなったように感じられるのだ。

接地フィールとコントロール性は大きく向上し、カントリーロードでは揺れの少ないスムースなコーナリングを披露した。ステアリングワークに正確にクルマが向きを変え、ミューの違う路面でもクルマが安定している。

さすがにミューの低い雪道では、湿式多板クラッチを用い、その締結力を電子制御化したi-ACTIV AWDのほうが走破性能は一歩上を行っていた。これはスタンバイ式の4WDシステムだが、滑りやすい路面でスリップを検知すると後輪にトルクを配分して安定方向に導く。各種のセンサーからの情報をもとに後輪のトルクを自動制御する4輪駆動システムだが、運転状況や路面状況を先読みして、瞬時に、最適に制御するのがセールスポイントだ。

舵を入れると軽やかにクルマが向きを変え、タイトコーナーでもアンダーステアに手を焼くことなく狙ったラインに乗せることができる。オーバースピードではらんだときの修正コントロールもラクだった。最低地上高がたっぷりと取られているから、荒れた路面や深い雪のある路面を駆け抜けても優れた走破性能を見せつける。

2WDモデルは、滑りやすい路面では無理が利かない。アイスバーン路面など、ミューの低い路面では路面からの影響を受けやすく、リアのグリップが甘く感じられる。路面からのインフォメーションは豊富だが、4WDと比べると神経を遣った。グリップを失って滑っても、アクセル操作でクルマの挙動をコントロールしやすいが、優秀性が光るのはi-ACTIV AWDだ。トレース性が優秀なだけでなく、きつい勾配の登坂路で大きな差をつけた。登坂路の再発進でも瞬時に空転は収まり、力強く駆け上がっていく。

ハンドリングに加え、新型CX-5で見違えるほどよくなったのが乗り心地である。4つの足がしなやかに動き、荒れた路面でもダイレクトな突き上げに悩まされることがない。とくにリアシートの乗り心地がよくなった。新型CX-5の素性のよさがよく分かるのが低ミューの雪道だ。この過酷なステージで、新型CX-5は非凡な実力の一端を見せつけた。


片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

(レスポンス 片岡英明)

[提供元:レスポンス]レスポンス

MORIZO on the Road