【マツダ CX-5 雪上試乗】「ドライバーの意志を読み取るAWD」が強さを発揮した…松下宏
マツダの雪上試乗会で新型『CX-5』に試乗した。試乗したのは完全な市販仕様のクルマではなく、試作車や量産前確認車だった。試作車は一部が販売する仕様と異なっている部分もあったが、量産前確認車にはナンバーも付けられていたので、事実上は市販車と同じと考えて良いようだ。
◆クルマ全体としてはキープコンセプトだが
旧型CX-5はマツダの新世代商品の第1弾として登場したクルマで、このクルマからSKYACTIV技術がフルに採用されていた。新型CX-5は新世代商品群が2巡目に入るわけで、その意味でも注目されるクルマである。
外観デザインはキープコンセプトだ。初代CX-5は魂動デザインの頭出しとなったクルマだが、今回のCX-5はそれをしっかり受け継いでいる。従来のCX-5の一段上を目指してデザインしたとされているが、見た目はほとんど同じにしか見えない。
過去にいろいろなメーカーのいろいろな車種が、大ヒットした後の次のモデルを作るとき、キープコンセプトのデザインを採用して結果的にうまくいかなかった例は枚挙にいとまがない。
マツダ車でも1980年に発売されて大ヒットした『ファミリア』の後、1985年に発売されたファミリアがキープコンセプトのデザインでうまくいかなかった例がある。その轍を踏まなければ良いと思う。
デザインだけでなく、ボディサイズも従来のモデルとほとんど同じでホイールベースは全く同じ。さらにパワートレーンもキャリーオーバーだから、クルマ全体としてもキープコンセプトで新鮮味に欠ける印象がある。
そればかりではない。装備の増加によって車両重量はやや重くなっていて、そのためか燃費もやや悪化傾向にある。実用燃費は向上しているとの説明だが、カタログを見る限りでは飛びつきにくいクルマという印象になるのは否めない。
◆雪道で強さを発揮するAWD
それはさておき今回は雪上試乗だ。新型CX-5の2WDとAWD(マツダでは4WDと呼ばず「i-ACTIV AWD」と呼んでいる)を同じコースで乗り比べたり、旧型『デミオ』の2WD(切り換え可能なe-4WD)とCX-5のAWDを乗り比べるコースなどが設定されていた。
新型CX-5は2WDでもけっこう雪道に強いという印象があった。これはGVC(Gベクタリング・コントロール)が標準装備されていて、アクセルワークやステアリングの操作に対応して荷重移動が行われるためだ。SUVの最低地上高と合わせ、雪道での走破性は高いレベルにある。
とはいえ、AWDになればそれ以上に良く走るのは当然のこと。マツダのi-ACTIV AWDは、クルマの微細な挙動変化をセンシングし、ドライバーがタイヤのスリップを感じるより先に駆動力配分を変化させ、走りを安定させるからだ。
試乗コースは冬季に閉鎖される一般道を使ったもので、圧雪路を中心にした雪道は一部がアイスバーン状になったり、逆に雪の深い部分があるなどして、いろいろなシーンが顔を見せたが、そうしたシーンのいずれにおいても安定した走りを示していた。
旧型デミオをFF状態で走らせたら手も足も出ず、e-4WDに切り替えてやっとというようなシーンでも、新型CX-5のAWDは安定した発進を確保していた。
一部で、AWDはセンターデフ式でないと本格的ではないとか、電子制御式のAWDは簡易型だなどとする声もあるが、乗用車系SUVの4WDは、日本で定評のある『エクストレイル』や『デリカD:5』も電子制御式のAWDである。
マツダのi-ACTIV AWDは電子制御式AWDの中でも最新のもので、より高度なセンシングと制御を取り入れている。結果として雪道で強さを発揮するAWDに仕上がっている。
◆2WDを超える燃費のAWDを目指す
またi-ACTIV AWDにはモードの設定がない。ぬかるみからの脱出を考えたらロックモードがあっても良いとの意見もあるが、マツダではアクセルワークやステアリングの操作からドライバーの意志を読み取るとともに、路面の変化などを早めにセンシングして駆動力配分を変化させるのでロックモードも不要という。
実際、今回の試乗コースの設定の中には、滑りやすいアイスバーン状の傾斜のある路面での発進や、ステアリングを切った状態からの発進、あるいは深い雪の脇道から幹線道路への左折での侵入などが設定されていて、CX-5はそれらをいずれもうまくこなしていた。
個人的には、これ以外にも難しい走行シーンはあると思われるので、ロックモードがないことに対して単純には同意しがたいものがあるが、今回の試乗の範囲では特に問題はなかった。
新型CX-5のAWDシステムが従来のモデルから進化したのは、低粘度オイルの採用(CX-3から)やボールベアリングの採用で抵抗を減らしたこと。これによってよりスムーズで燃費の良いシステムにしている。マツダではスリップロスの少ないAWDの利点を生かし、2WDを超える燃費のAWDを目指しているという。
AWDにはプロペラシャフトによる重量増や駆動部分が増えることによるメカニカルロスなどの燃費悪化要因があるが、それをカバーして余りあるAWDシステムを目指しているとのことだった。
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。
(レスポンス 松下宏)
◆クルマ全体としてはキープコンセプトだが
旧型CX-5はマツダの新世代商品の第1弾として登場したクルマで、このクルマからSKYACTIV技術がフルに採用されていた。新型CX-5は新世代商品群が2巡目に入るわけで、その意味でも注目されるクルマである。
外観デザインはキープコンセプトだ。初代CX-5は魂動デザインの頭出しとなったクルマだが、今回のCX-5はそれをしっかり受け継いでいる。従来のCX-5の一段上を目指してデザインしたとされているが、見た目はほとんど同じにしか見えない。
過去にいろいろなメーカーのいろいろな車種が、大ヒットした後の次のモデルを作るとき、キープコンセプトのデザインを採用して結果的にうまくいかなかった例は枚挙にいとまがない。
マツダ車でも1980年に発売されて大ヒットした『ファミリア』の後、1985年に発売されたファミリアがキープコンセプトのデザインでうまくいかなかった例がある。その轍を踏まなければ良いと思う。
デザインだけでなく、ボディサイズも従来のモデルとほとんど同じでホイールベースは全く同じ。さらにパワートレーンもキャリーオーバーだから、クルマ全体としてもキープコンセプトで新鮮味に欠ける印象がある。
そればかりではない。装備の増加によって車両重量はやや重くなっていて、そのためか燃費もやや悪化傾向にある。実用燃費は向上しているとの説明だが、カタログを見る限りでは飛びつきにくいクルマという印象になるのは否めない。
◆雪道で強さを発揮するAWD
それはさておき今回は雪上試乗だ。新型CX-5の2WDとAWD(マツダでは4WDと呼ばず「i-ACTIV AWD」と呼んでいる)を同じコースで乗り比べたり、旧型『デミオ』の2WD(切り換え可能なe-4WD)とCX-5のAWDを乗り比べるコースなどが設定されていた。
新型CX-5は2WDでもけっこう雪道に強いという印象があった。これはGVC(Gベクタリング・コントロール)が標準装備されていて、アクセルワークやステアリングの操作に対応して荷重移動が行われるためだ。SUVの最低地上高と合わせ、雪道での走破性は高いレベルにある。
とはいえ、AWDになればそれ以上に良く走るのは当然のこと。マツダのi-ACTIV AWDは、クルマの微細な挙動変化をセンシングし、ドライバーがタイヤのスリップを感じるより先に駆動力配分を変化させ、走りを安定させるからだ。
試乗コースは冬季に閉鎖される一般道を使ったもので、圧雪路を中心にした雪道は一部がアイスバーン状になったり、逆に雪の深い部分があるなどして、いろいろなシーンが顔を見せたが、そうしたシーンのいずれにおいても安定した走りを示していた。
旧型デミオをFF状態で走らせたら手も足も出ず、e-4WDに切り替えてやっとというようなシーンでも、新型CX-5のAWDは安定した発進を確保していた。
一部で、AWDはセンターデフ式でないと本格的ではないとか、電子制御式のAWDは簡易型だなどとする声もあるが、乗用車系SUVの4WDは、日本で定評のある『エクストレイル』や『デリカD:5』も電子制御式のAWDである。
マツダのi-ACTIV AWDは電子制御式AWDの中でも最新のもので、より高度なセンシングと制御を取り入れている。結果として雪道で強さを発揮するAWDに仕上がっている。
◆2WDを超える燃費のAWDを目指す
またi-ACTIV AWDにはモードの設定がない。ぬかるみからの脱出を考えたらロックモードがあっても良いとの意見もあるが、マツダではアクセルワークやステアリングの操作からドライバーの意志を読み取るとともに、路面の変化などを早めにセンシングして駆動力配分を変化させるのでロックモードも不要という。
実際、今回の試乗コースの設定の中には、滑りやすいアイスバーン状の傾斜のある路面での発進や、ステアリングを切った状態からの発進、あるいは深い雪の脇道から幹線道路への左折での侵入などが設定されていて、CX-5はそれらをいずれもうまくこなしていた。
個人的には、これ以外にも難しい走行シーンはあると思われるので、ロックモードがないことに対して単純には同意しがたいものがあるが、今回の試乗の範囲では特に問題はなかった。
新型CX-5のAWDシステムが従来のモデルから進化したのは、低粘度オイルの採用(CX-3から)やボールベアリングの採用で抵抗を減らしたこと。これによってよりスムーズで燃費の良いシステムにしている。マツダではスリップロスの少ないAWDの利点を生かし、2WDを超える燃費のAWDを目指しているという。
AWDにはプロペラシャフトによる重量増や駆動部分が増えることによるメカニカルロスなどの燃費悪化要因があるが、それをカバーして余りあるAWDシステムを目指しているとのことだった。
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1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。
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