【スズキ スイフト ハイブリッドRS 試乗】まさに予想通りの仕上がり…中村孝仁
タイトルのように新しいスズキ『スイフト』の仕上がりは、ほぼ予想通りであった。これは何もネガな要素があるということではない。すでに察しがついていたということである。
この2年、スズキは立て続けといっても過言ではないくらい、数多くのモデルを世に送り出してきた。『アルト』に始まった新世代のプラットフォームはセグメントこそ異なれ、『イグニス』、『ソリオ』、『バレーノ』と継承され、それらはすべて、およそあり得ないといってよいほどの軽量化を達成してきた。
そもそも軽自動車でプラットフォームだけとはいえ60kgも軽量化するなど信じ難かったし、これがAセグメント、Bセグメントになると3桁のオーダーで軽量化を達成した。ただ単に軽量化をするというのなら、素材を吟味して剛性など無視すれば可能かもしれない。しかしそんなことをしたら、乗り味はいわゆるペランペランな状態になる。ところが、アルトにしてもソリオにしてもバレーノにしても、そんな印象は皆無。それどころかどっしり感すら漂わせるのだから、これはもう完全なスズキマジックであった。
スイフトは先代が出来た時からそのキビキビとした印象の走りや、好感の持てるボディスタイリングで人気の高かったモデル。新型となって、当然ながら過去アルト以来使われているハーテクトと名付けられたプラットフォームを採用して、当然のごとく軽量化してくるのだから、キビキビ感はもとよりどっしり感も失われず、かつ好感の持てるスタイリングでまとめてくるのだろうなぁ…と想像していたが、果たしてその通り。まさに予想通りの仕上がりだったので、冒頭のような表現となった次第である。
先代がデビューした際デザイン陣が心配していたのは、対人衝突を考慮した丸いノーズが受け入れられるかということだったらしく、しきりにフロントデザインについて僕に訪ねてきた。だから全く問題なし。それがルールである以上当然同じようなデザインが出てくるといって、確かトヨタ『マークX』を例に挙げて話をした記憶がある。
ただ、先代誕生から13年がたち、対人衝突を考慮してなお、ボンネットは大型グリルの採用が出来るようになったことから、そこを集中的に改めたのが新しいスイフトのデザイン。というわけでデザインに関しては、ほぼキープコンセプトを貫いた。それでもホイールベースを20mm延長する一方で、全長は逆に10mm短縮、全高も10mm引き下げたから、バランスはそれなりに変更され、結果としてタイヤはより一層四隅に追いやられる形になった。
今回の試乗は1.2リットルNAの、ソリオと同じK12Cと呼ばれるエンジンとマイルドハイブリッド機構を備えた組み合わせ。かつてはSエネチャージなどと呼ばれていたが、ハイブリッドで統一する方向になった模様だ。このマイルドハイブリッドシステム、モーターがジェネレーターとスターターの役目を兼ねるもので、モーター自体の出力は3.1psしかないから、それによるアシストでパフォーマンスを期待するのはやめた方が良い。しかし、これがあるおかげでアイドリングストップのエンジン停止と再始動は、他のどのシステムよりもスムーズだといっても過言ではない。
乗り味も予想通り。想像以上のどっしり感を保ちつつ、シャープでキレッキレのハンドリング性能を示す。ここまでやられると他の同セグメントのライバルたちは結構差を付けられた印象になる。今のところBセグメントでこれに対抗しうる勢力は、国産ではマツダ『デミオ』だけ。さすがに海外に目を移すと上を行くライバルがいるが、まあ国産車の中では秀逸である。
冒頭話した軽量化は120kgを達成し、試乗したFWDのハイブリッドモデルは車重910kgである。アンダーボディのみでの軽量化は30kgだった。これだけの軽量化をしてもなお、前述したようなどっしり感のある乗り心地と秀逸なハンドリングを与えているのだから、お見事としか言いようがない。
ハンドリングについてだが、中心がしっかりと分かる安定したもので、左右に切る時はそれなりの初期ハンドトルクを必要とするが、最近のトレンドはそのハンドトルクを必要としなくてもスムーズに切れ、かつ中心がしっかりしたもの(その典型はトヨタC-HR)に変わってきているようで、そうした意味ではスズキのハンドリング特性は少しアップデートが必要かもしれない。ただ、いずれにしてもこの出来の良さで170万円を切る価格設定は脱帽せざるを得ない。
■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
(レスポンス 中村 孝仁)
この2年、スズキは立て続けといっても過言ではないくらい、数多くのモデルを世に送り出してきた。『アルト』に始まった新世代のプラットフォームはセグメントこそ異なれ、『イグニス』、『ソリオ』、『バレーノ』と継承され、それらはすべて、およそあり得ないといってよいほどの軽量化を達成してきた。
そもそも軽自動車でプラットフォームだけとはいえ60kgも軽量化するなど信じ難かったし、これがAセグメント、Bセグメントになると3桁のオーダーで軽量化を達成した。ただ単に軽量化をするというのなら、素材を吟味して剛性など無視すれば可能かもしれない。しかしそんなことをしたら、乗り味はいわゆるペランペランな状態になる。ところが、アルトにしてもソリオにしてもバレーノにしても、そんな印象は皆無。それどころかどっしり感すら漂わせるのだから、これはもう完全なスズキマジックであった。
スイフトは先代が出来た時からそのキビキビとした印象の走りや、好感の持てるボディスタイリングで人気の高かったモデル。新型となって、当然ながら過去アルト以来使われているハーテクトと名付けられたプラットフォームを採用して、当然のごとく軽量化してくるのだから、キビキビ感はもとよりどっしり感も失われず、かつ好感の持てるスタイリングでまとめてくるのだろうなぁ…と想像していたが、果たしてその通り。まさに予想通りの仕上がりだったので、冒頭のような表現となった次第である。
先代がデビューした際デザイン陣が心配していたのは、対人衝突を考慮した丸いノーズが受け入れられるかということだったらしく、しきりにフロントデザインについて僕に訪ねてきた。だから全く問題なし。それがルールである以上当然同じようなデザインが出てくるといって、確かトヨタ『マークX』を例に挙げて話をした記憶がある。
ただ、先代誕生から13年がたち、対人衝突を考慮してなお、ボンネットは大型グリルの採用が出来るようになったことから、そこを集中的に改めたのが新しいスイフトのデザイン。というわけでデザインに関しては、ほぼキープコンセプトを貫いた。それでもホイールベースを20mm延長する一方で、全長は逆に10mm短縮、全高も10mm引き下げたから、バランスはそれなりに変更され、結果としてタイヤはより一層四隅に追いやられる形になった。
今回の試乗は1.2リットルNAの、ソリオと同じK12Cと呼ばれるエンジンとマイルドハイブリッド機構を備えた組み合わせ。かつてはSエネチャージなどと呼ばれていたが、ハイブリッドで統一する方向になった模様だ。このマイルドハイブリッドシステム、モーターがジェネレーターとスターターの役目を兼ねるもので、モーター自体の出力は3.1psしかないから、それによるアシストでパフォーマンスを期待するのはやめた方が良い。しかし、これがあるおかげでアイドリングストップのエンジン停止と再始動は、他のどのシステムよりもスムーズだといっても過言ではない。
乗り味も予想通り。想像以上のどっしり感を保ちつつ、シャープでキレッキレのハンドリング性能を示す。ここまでやられると他の同セグメントのライバルたちは結構差を付けられた印象になる。今のところBセグメントでこれに対抗しうる勢力は、国産ではマツダ『デミオ』だけ。さすがに海外に目を移すと上を行くライバルがいるが、まあ国産車の中では秀逸である。
冒頭話した軽量化は120kgを達成し、試乗したFWDのハイブリッドモデルは車重910kgである。アンダーボディのみでの軽量化は30kgだった。これだけの軽量化をしてもなお、前述したようなどっしり感のある乗り心地と秀逸なハンドリングを与えているのだから、お見事としか言いようがない。
ハンドリングについてだが、中心がしっかりと分かる安定したもので、左右に切る時はそれなりの初期ハンドトルクを必要とするが、最近のトレンドはそのハンドトルクを必要としなくてもスムーズに切れ、かつ中心がしっかりしたもの(その典型はトヨタC-HR)に変わってきているようで、そうした意味ではスズキのハンドリング特性は少しアップデートが必要かもしれない。ただ、いずれにしてもこの出来の良さで170万円を切る価格設定は脱帽せざるを得ない。
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