【トヨタ プリウスPHV 試乗】乗り心地&操縦安定性の向上に驚かされた…青山尚暉
4代目『プリウス』に加わった待望のPHVは、先代のウイークポイントを見事に解消した新型だ。
先代PHVユーザーの不満点のひとつが、標準型プリウスと変わらない内外装。しかし新型は専用の顔つき、フルLEDランプ、ダブルバブルウインドーなど、ひと目で標準型プリウスとは違うエクステリアを備えている。詳細に見れば、フロントフェンダーの見切り線まで違うのである。
インテリアもまたPHV専用だ。ベースグレードのS以外に標準装備される縦型11.6インチのT-Connect SDナビゲーションシステムは、輸入車にはめずらしくないものの、日本車としては新鮮かつ先進感溢れる装備・機能の持ち主だ。何しろタイマー充電、エアコン操作を手元のスマホやタブレットで行え、オペレーターサービスまであるのだ。
PHVとしての進化はEV走行可能距離の拡大だ。プラグインレンジは先代の26.4kmから68.2kmと倍以上に伸び、EV走行可能速度も100km/hから135km/hに上がっている。
もちろん、エンジンがかかっている時のHVモードでも先代の31.2km/リットルから37.2km/リットル(17インチタイヤ装着車は30・8km/リットル)と、標準型プリウスと同じ性能を維持している(以上、すべて15インチタイヤ装着車)。
そうしたPHV、HV性能の劇的な向上は、ラゲッジ床下に積まれるリチウムイオンバッテリーの容量UPによるもの。具体的には4.4KW/hから8.8KW/hへと倍増。実は、新型PHVの開発当初はそこまでの容量は求めていなかった。が、時代、回りのEV、PHVの動向から開発途中で急きょ、現在のスペックに変更。
そのため、後席が2座になり、ラゲッジフロアが開口部から約10cmかさ上げされたということだ。ちなみに4代目プリウスのエクステリアはこのPHVのデザインが基本。しかしLEDランプやカーボン製のリヤゲート、ダブルバブルウインドーなどコスト高となるため、標準型では見送られ、PHV専用となったのである。
そうそう、新型PHVは先代の不満点だった充電環境も劇的に向上。100V、急速充電に対応するため、家庭用電源で充電OK。高速道路のSAなどでも充電できるようになった便利さは計り知れない(EVと遭遇したら先に譲りましょう)。
16インチタイヤ仕様を走らせれば、標準型プリウスとは別物の上質感、安定感、しっとりとした快適感ある乗り心地、ステアリングを切ったときのよりリニアで気持ちいい回頭性、回頭感を示してくれる。それはリチウムイオンバッテリーの容量UPなどで約150kg(そのうちLEDヘッドランプなど装備分が50kg)重くなった車重増、低重心化によるメリットと言っていい。
もちろんバッテリー容量があれば出足からEV走行。エアコンなどを使っても実質50kmはモーターだけで静かに滑らかに走ってくれる。先代PHVでエンジンが始動してしまうようなアクセルの踏み方でも、EV走行をねばり強く行ってくれるのだからたいしたものである。
エンジンがかかり、HV走行になったとき、標準型プリウスよりエンジンノイズが気になりがちなのは、EV走行領域が広いことから、その差をことさら大きく感じてしまうからだ。ちなみにエンジンそのものは標準型プリウスと同じで、回したときのノイズレベルも実は同じなのである。
うれしいのはチャージモード。EV/HVモード切り替えスイッチを長押しするとチャージモードに入り、エンジン主体の走行になるのだが、アクセル操作などに一切影響されることなく、みるみるうちにバッテリーを回復してくれるのだ。具体的には試乗中、バッテリーが18%になったのを機にチャージモードをON。首都高速を20kmほど流すと、バッテリーは40%にまで回復したのである。
当然、チャージモードは燃費性能に影響を与えるが、高速走行ではそのロスが少ない。よって、深夜、静かな住宅街に帰宅するとき、高速、一般道を使う場合は、高速走行中にチャージモードでバッテリーをため、家の近くになったらEVモードに切り替え、静かに近所に迷惑をかけずに帰宅…というパターンがベストだろう。
では、新型プリウスPHVと標準型プリウスではどちらが速いのか? 正しい答えはケース・バイ・ケース。エンジン主体となる全開走行では車重が150kg軽い標準型プリウスが速く、出足、中間加速ではデュアルモータードライブが威力を発揮するPHVが速い。というか、豊潤でウルトラスムーズに発揮されるモータートルクによって、速く気持ち良く感じるのだ。
もっとも、山道では間違いなくPHVがリードするはず。基本的な操縦安定性に少なくない差があり、より安定して速く走りやすいのである。以前、袖ケ浦サーキットでプロトタイプのPHVと標準型プリウスを走らせたとき、どうにも同じペースで走れなかった経験がある。
最後にHVモード同士の動力性能について。標準型プリウスは燃費スペシャルなエコモードでも一般道、高速道路ともに過不足なく走ってくれるが、PHVのHVモードでは150kgの重量増をモロに感じやすく、エコモードだと加速はかなり緩慢。なのでPHVはノーマルモードで走るのが基本と考えたい。
ちなみにオススメ度★3つなのは、標準的な「A」グレードでT-Connect SDナビゲーションシステム込みとはいえ380万円越えの価格が理由。ペットフレンドリー度は静かで滑らかかつ、姿勢変化のない走行性能は犬に優しく、褒められるものの、後席が2座となり、後席を格納したときの段座が大きく、ラゲッジフロアのかさ上げでラゲッジの天井高が狭まった点で★3つとした。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★
ペットフレンドリー度:★★★
青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージングデータは膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がけ、犬との快適・安心自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーの活動、自動車用ペットアクセサリーの企画開発も行っている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ムック本「愛犬と乗るクルマ」(交通タイムス社刊)好評発売中。
(レスポンス 青山尚暉)
先代PHVユーザーの不満点のひとつが、標準型プリウスと変わらない内外装。しかし新型は専用の顔つき、フルLEDランプ、ダブルバブルウインドーなど、ひと目で標準型プリウスとは違うエクステリアを備えている。詳細に見れば、フロントフェンダーの見切り線まで違うのである。
インテリアもまたPHV専用だ。ベースグレードのS以外に標準装備される縦型11.6インチのT-Connect SDナビゲーションシステムは、輸入車にはめずらしくないものの、日本車としては新鮮かつ先進感溢れる装備・機能の持ち主だ。何しろタイマー充電、エアコン操作を手元のスマホやタブレットで行え、オペレーターサービスまであるのだ。
PHVとしての進化はEV走行可能距離の拡大だ。プラグインレンジは先代の26.4kmから68.2kmと倍以上に伸び、EV走行可能速度も100km/hから135km/hに上がっている。
もちろん、エンジンがかかっている時のHVモードでも先代の31.2km/リットルから37.2km/リットル(17インチタイヤ装着車は30・8km/リットル)と、標準型プリウスと同じ性能を維持している(以上、すべて15インチタイヤ装着車)。
そうしたPHV、HV性能の劇的な向上は、ラゲッジ床下に積まれるリチウムイオンバッテリーの容量UPによるもの。具体的には4.4KW/hから8.8KW/hへと倍増。実は、新型PHVの開発当初はそこまでの容量は求めていなかった。が、時代、回りのEV、PHVの動向から開発途中で急きょ、現在のスペックに変更。
そのため、後席が2座になり、ラゲッジフロアが開口部から約10cmかさ上げされたということだ。ちなみに4代目プリウスのエクステリアはこのPHVのデザインが基本。しかしLEDランプやカーボン製のリヤゲート、ダブルバブルウインドーなどコスト高となるため、標準型では見送られ、PHV専用となったのである。
そうそう、新型PHVは先代の不満点だった充電環境も劇的に向上。100V、急速充電に対応するため、家庭用電源で充電OK。高速道路のSAなどでも充電できるようになった便利さは計り知れない(EVと遭遇したら先に譲りましょう)。
16インチタイヤ仕様を走らせれば、標準型プリウスとは別物の上質感、安定感、しっとりとした快適感ある乗り心地、ステアリングを切ったときのよりリニアで気持ちいい回頭性、回頭感を示してくれる。それはリチウムイオンバッテリーの容量UPなどで約150kg(そのうちLEDヘッドランプなど装備分が50kg)重くなった車重増、低重心化によるメリットと言っていい。
もちろんバッテリー容量があれば出足からEV走行。エアコンなどを使っても実質50kmはモーターだけで静かに滑らかに走ってくれる。先代PHVでエンジンが始動してしまうようなアクセルの踏み方でも、EV走行をねばり強く行ってくれるのだからたいしたものである。
エンジンがかかり、HV走行になったとき、標準型プリウスよりエンジンノイズが気になりがちなのは、EV走行領域が広いことから、その差をことさら大きく感じてしまうからだ。ちなみにエンジンそのものは標準型プリウスと同じで、回したときのノイズレベルも実は同じなのである。
うれしいのはチャージモード。EV/HVモード切り替えスイッチを長押しするとチャージモードに入り、エンジン主体の走行になるのだが、アクセル操作などに一切影響されることなく、みるみるうちにバッテリーを回復してくれるのだ。具体的には試乗中、バッテリーが18%になったのを機にチャージモードをON。首都高速を20kmほど流すと、バッテリーは40%にまで回復したのである。
当然、チャージモードは燃費性能に影響を与えるが、高速走行ではそのロスが少ない。よって、深夜、静かな住宅街に帰宅するとき、高速、一般道を使う場合は、高速走行中にチャージモードでバッテリーをため、家の近くになったらEVモードに切り替え、静かに近所に迷惑をかけずに帰宅…というパターンがベストだろう。
では、新型プリウスPHVと標準型プリウスではどちらが速いのか? 正しい答えはケース・バイ・ケース。エンジン主体となる全開走行では車重が150kg軽い標準型プリウスが速く、出足、中間加速ではデュアルモータードライブが威力を発揮するPHVが速い。というか、豊潤でウルトラスムーズに発揮されるモータートルクによって、速く気持ち良く感じるのだ。
もっとも、山道では間違いなくPHVがリードするはず。基本的な操縦安定性に少なくない差があり、より安定して速く走りやすいのである。以前、袖ケ浦サーキットでプロトタイプのPHVと標準型プリウスを走らせたとき、どうにも同じペースで走れなかった経験がある。
最後にHVモード同士の動力性能について。標準型プリウスは燃費スペシャルなエコモードでも一般道、高速道路ともに過不足なく走ってくれるが、PHVのHVモードでは150kgの重量増をモロに感じやすく、エコモードだと加速はかなり緩慢。なのでPHVはノーマルモードで走るのが基本と考えたい。
ちなみにオススメ度★3つなのは、標準的な「A」グレードでT-Connect SDナビゲーションシステム込みとはいえ380万円越えの価格が理由。ペットフレンドリー度は静かで滑らかかつ、姿勢変化のない走行性能は犬に優しく、褒められるものの、後席が2座となり、後席を格納したときの段座が大きく、ラゲッジフロアのかさ上げでラゲッジの天井高が狭まった点で★3つとした。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★
ペットフレンドリー度:★★★
青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージングデータは膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がけ、犬との快適・安心自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーの活動、自動車用ペットアクセサリーの企画開発も行っている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ムック本「愛犬と乗るクルマ」(交通タイムス社刊)好評発売中。
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