【マツダ CX-5 ディーゼル 試乗】コンセプトを曲げずにひたすら深化させた…中村孝仁

マツダ CX-5 XDプロアクティブ
およそ5年の時を経て、マツダ『CX-5』が第2世代へと生まれ変わった。ただし、エンジンを含むメカニカルコンポーネンツとプラットフォームはその基本を先代から継承している。

というわけで、本当の意味でフルチェンジといえるのかどうか、少々疑問もあるのだが、実際に試乗してみるとその確かな進化と同時に、コンセプトを曲げずにひたすら深化させた筋の通った開発姿勢に触れることができた。

メカニズムの話からしよう。今回の試乗車は「XDプロアクティブ」という、2.2リットルディーゼルターボを搭載したモデル。つまりエンジンの基本は先代と変化していないが、すでに他のマツダ各車に採用されている、ナチュラルサウンドスムーザーやナチュラルサウンド周波数コントロールなどが新たに追加された。だから、ここは進化である。

トランスミッションは従来同様6速ATのみ。しかしお得意の「G-ベクタリングコントロール」が採用されて、コーナーでのステアリング操作がいつの間にやら従来よりもスムーズになっていると感じさせる、気が付かないレベルながら確実に良くなっているとじわじわ思わせる機能が追加された。このあたりは深化である。

追加されたメカニズムとして大きいのは、全車速対応のACCがついに装備されたこと。それにモデルにもよるがアダプティブLEDヘッドライトが標準装備されたことも大きい。今回の試乗で体感することはできなかったが、『アテンザ』で体感したそれは、夜道での安全性を確実に向上させる。また、従来からあったヘッドアップディスプレイが、今回からはフロントウィンドーに投影するタイプに変更されている。従来以上に遠くに見えるディスプレイは、老眼鏡必須の年寄りでも、全く気にすることなく視認が出来る。

インテリアの質感はすこぶる高くなった。正直、あえて苦言を呈するとしたら、デザイン的な面白みに欠けるのだが、機能としては非常に優れ、人間工学的にも適切な配置がなされていると思う。その顕著な例が、今回からATのセレクター位置が従来よりも60mmほど高められていることだ。

進化はともかくとして、この種の深化は、乗り比べてみないと分からない…ということで、先ずは旧型に試乗した。勿論同じ4WDのXDだが、より上級のLパッケージだ。すでに何度か試乗したモデルだから、改めて乗っても相変わらず良くできているなぁ…という感想に終始した。

そしていざ新型に。走り出してすぐに気づくこと。それが静粛性能向上だ。エンジンの透過音、フロアからのロードノイズの侵入、さらにはリアタイヤハウジングから上がってくるノイズ等々、どれをとっても明らかに1段も2段もレベルアップした印象を受ける。

勿論エンジンに関していえば、ノックオン減少のデバイス追加や対策が施されているから、エンジン自体の音量も下がっているのかもしれないが、明らかに音振対策が機能していると感じられた。細かい部分での拘りとして、音源から直接届いて来る音だけでなく、室内に侵入し、内壁に反射して耳に届く反射音を減衰することにも注力しているというから、まさにそれは深化であった。と、この部分だけをとってもニューモデルが大幅に良くなっていることを実感できる。

もう一つとても良いと思ったのが、アクセルを踏み始めて精々40km/h程度以下のスピード領域でのアクセルレスポンスの良さだ。とにかく踏み方に対して極めて素直に反応してくれる。同時に非常に自然な印象も与えてくれるから、クルマの挙動がスムーズでパッセンジャーに対して優しい運転が出来るのも深化だと感じられた。

実に奥が深いクルマだけに、僅か1時間程度の試乗では断片的にしかわからない。 じっくりと乗ってみたい1台だと感じた。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

(レスポンス 中村 孝仁)

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